第十七章 696幻想ダンジョン 後編
ガチャ562回目:第四層攻略開始
スキル清算を終えた俺達は、そのままホテルの施設でマッサージを受けたり、着ぐるみを使ってトランスフォームしたり、皆でモル君を可愛がったりとゆっくりとした時間を過ごした。
そしてその日の内に第三層での新種モンスター及び新エリア、更にはドロップする宝箱からは待望の『テイム』の存在が公表された。それはアメリカだけでなく日本でも大々的に取り上げられ、一大ニュースになったようだ。
どうやらベンおじさんがあの後即座に動き、アメリカにある協会のトップや、貿易関連の官僚に連絡し首を縦に振らせたらしい。そのおかげもあって、日本でもこの情報を取り扱う事が可能となり、ニュースという形になって発信されたようだ。
その影響か、翌日はダンジョン第三層には冒険者達が異常に賑わうこととなり、協会には俺にインタビューする為か大勢の記者が訪れたらしいが、支部長やシルヴィを筆頭に職員達が断固としてホテルへの立ち入りを拒否してくれたらしい。
まあ、せっかくの休暇なのにそんなの相手にしてたら休めないもんな。その判断は正直助かった。その上、シルヴィがその場で思い切った言葉を口にしてくれていた。
「彼の休暇を邪魔し、あまつさえ行動を阻害する事の意味をお考え下さい。彼の協力があってこそ『696ダンジョン』は順調に攻略が進んでいますが、平定前に彼が去れば全てが無意味になります。あの人達は我々の大事な客人であり、私達は何よりも優先して彼らをもてなすべきです。違いますか!?」
その言葉を受けて記者たちはすごすごと帰って行ったそうだ。
ちなみにその時俺はと言うと、下でそんな騒ぎがあった事など知らずに、暢気に彼女達に囲まれて王様気分を味わってたわけだが。
次の日。
結局、俺の休暇は1日で終わらず、その翌日は外に出てぶらりと散歩に出かけた。勿論皆と一緒にだ。
シルヴィ案内の下、俺達は街で買い物したり景色を楽しんだり食事を堪能したりして羽を伸ばしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『キュキュー!』
「おー、モル君は今日も元気いっぱいだな」
『キュキュ!』
俺達は今、2日ぶりに第四層を訪れていた。勿論、第一層の人気のない場所で『三種の紋章【Ⅲ】』を使っての移動だ。
今日は、いつものメンバーに加えて先日仲間になったモル君も連れて来ていた。シルヴィに預けてお留守番させても良かったんだが、ちょっと気になってることがあったんだよな。
彼は今、アヤネの装備のおへそ部分に急遽取り付けられたポケットに入り込み、そこから顔を出している状態だった。あの状態で『金剛外装』や『超防壁』を使っても、しっかりとモル君もまとめて有効シールド内に入る事は確認済みだから、安全面もバッチリだ。
だが、モンスターといえど彼のレベルは95。強敵相手だと多少危険は伴うが、チーム内で一番安全なポジションにいるアヤネと行動を共にするんだ。そこがシールドを飛び越えて被弾する状況って事は、俺らも結構ヤバイ状況だろう。だからまあ、安全面を考えるのはこれくらいで十分だと思う。
「それで旦那様、今日はどうなさいますの?」
「春夏秋冬、緑青赤白。カラフルな階層よね~」
「いつでもどの季節の体験もできる面白い階層ではありますよね」
「モンスターがいなければ、観光名所にも使えそうですね」
「ん。春島は好き。ポカポカして気持ち良い。夏島は嫌い。暑すぎて布団にくるまれない。秋島は好き。涼しくて過ごしやすい。でも冬島は嫌い。寒いから」
ミスティが居眠り基準で評価しているのを聞いて、皆が苦笑している。
「ミスティの希望だからって訳ではないが、四季があるフィールドというなら、順番で考えれば春から行くべきだろ。だからエスが向かったあの緑の大地から攻めよう」
「ん。賛成」
「かしこまですわ!」
『キュー!』
そうして俺達は中央の島から石橋を渡り、緑の島へと向かった。
島に上陸した俺達は、春の陽気な空気を全身で感じた。外は夏真っ盛りだから、ここは過ごしやすそうではあるが、本当に島に入った瞬間春の環境になるんだな。まるで『ハートダンジョン』の第二層みたいだなぁと考えながら、周辺を見渡す。
植生は見た感じ、『810ダンジョン』でいうところの第一層に近い感じだろうか。花畑というほどではないがまばらに花が咲いているので、普通にピクニックに最適な環境な気がする。
モンスターさえいなければ、だが。
「……あれがそうか?」
マップにも赤点があるから間違いないのだが、初めて見る形状のモンスターに俺の口からは真っ先に疑問が出た。モンスターってもっとこう、
「ん、そう。ショウタは初めて見る?」
「ああ。あんなのもいるのか……」
*****
名前:ウィンドエレメンタル
レベル:80
腕力:0
器用:0
頑丈:1500
俊敏:200
魔力:30000
知力:1500
運:なし
【
【
装備:なし
ドロップ:風の精霊のコア
魔石:中
*****
そこにいたのは、淡く輝くコアを中心に、緑色のエネルギーが集約したモンスターだった。まるで、エンリルを半透明にして、姿もあやふやにしたような感じだな。
明らかに宙に浮かんでいるのに、羽ばたいている様子もホバリングする様子もない。こいつらはデフォルトで浮く存在なんだろうな。
まさに超常現象というか、そんなところがモンスターって感じだ。
「エンリルを作ってる最中も、確かあんな感じだったっけ」
『ポポ~』
完全魔法型のモンスターか。これが4属性分いるってことは、つまり青色の夏島なら『炎魔法』や炎属性の操作スキルが取れるって事だよな!?
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