ガチャ556回目:宝箱開封作業①

 そうして、ベンおじさんは覚悟を決めた表情で一礼し、部屋を出て行った。まあミスティ達の出国というどデカいカードがある以上、邪魔をされることはないだろう。たぶん。

 義母さん達も今回の報告は満足のいくものだったらしく、通話を切る際には満面の笑みで応援してくれた。

 義母さん達に褒めてもらえるようもっと頑張らないとな。……あれ? ちょっとサクヤお義母さんの術中にハマってるか?

 俺は頭を振り、改めて覚悟を決めた。現実逃避しても、アイテムは減りはしないのだ。


「ではご主人様。報酬のお時間です」

「……おう」

「獲得スキルの確認と整理、そしてアレの開封作業と、やる事は山積みですが、開封作業は元気があるうちに済ませておくのが吉でしょう。面倒事は最初にしておくものです」

「そうだな……。結局、いくつにまで増えたんだ?」

「はい。この場に出すのを躊躇うほどですが、減っている実感が無ければ長引くほど辛いだけですので、最初から全部出してしまいましょうか」


 アイラが躊躇うって、よっぽどの事ではあると思うんだが、そんなにあるのか……。

 そうしてすっと立ち上がったアイラが部屋の隅っこに移動して、ドバドバと宝箱を取り出して行く。その量と圧迫感は本当に凄まじく、銀色の宝箱の山がスイートルームの高い天井にまで悠々と積み重なり、ここがなんの部屋なのか分からないくらい、部屋の雰囲気を塗り替えてしまった。

 シルヴィは報酬の立ち合いがこれで3度目ということもあり、宇宙猫にはならなかったが遠い目をしている。俺もそうしていたいが、これは俺にしか処理できない案件なので、頑張らねば。


「アイラ、数は?」

「はい。全部で756個ありましたが、2個消費して754個です」

「……そうか」


 2個の消費程度、もはや誤差だな。


「良かったわね、ショウタ君。4桁に行かなくて」

「本当にな。……配分はどうしよっか」

「そうですね。腐葉土についてですが、日本に持ち帰っての検証には、それなりの量が欲しいところです。ですのでひとまず、100個は土にして、他は『テイム』にしましょうか」

「りょーかい」


 そうしてアイラがリビングの中央に、会食なんかに使われそうな長方形のテーブルを取り出し、その4辺のフチに宝箱を並べ始めた。


「では私は、このように宝箱をテーブルに並べる役目をしますので、ご主人様は順番に中身を選択して行ってください。お嬢様は宝箱の開封を。アキ様とマキ様は土入り宝箱の回収及び、テイムの回収をお願いします」

「はいですわ!」

「おっけー!」

「頑張りますっ」

「ん。私は?」

「特にありませんね」

「では、ミスティは途中でわたくしと交代しませんこと?」

「ん。わかった」


 そうして、宝箱の開封作業が始まるのだった。

 


◇◇◇◇◇◇◇◇



 数十分後、ようやく全ての『銀の宝箱』の処理が終わった。


「トレントの腐葉土500グラムが101箱。そして『テイム』が654個となりました」

「おー……」


 皆の協力のおかげでなんとか片付けられたが、やりたくない事の疲労の溜まり方は半端じゃないな……。もうしばらくは、低レベルの宝箱は見たくない。


「お疲れのご主人様には申し訳ありませんが、次に確認して頂くのは、レアモンスター達の宝箱とドロップ素材です」

「……まあ、そっちは数がそう多くは無いから、そこまで疲れないかな。何が落としたっけ」

「はい。各種素材は専用の工房に送る用途がありますので除外するとして、まず装備からですね。『リザードマンヒーロー・アドロン』からは『リザードマンの英霊剣』。ガヴァナー3兄弟からは『支配者の赤槍』『支配者の黄槍』『支配者の緑槍』」

「ふむ」

「そして宝箱ですが、『ビッグランスモール』からは『金の宝箱』6個。ガヴァナー3兄弟からは『エメラルドの宝箱』3個。『グランドグリフォン』からは『アメジストの宝箱』1個。『コラプショングリフォン』からは『アダマンタイトの宝箱』1個です」

「……ふむ」


 やっぱ、多いわ。


「んじゃ、まずは英霊剣からだな」


 名称:リザードマンの英霊剣

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:剣

 武器レベル:36

 説明:リザードマンの英霊たちの言葉が刻まれた歴史的価値の高い剣。その言葉は切れ味を鋭くし、耐久力を大幅に向上させている。これを持って戦うと、周囲にいる味方のリザードマン達の戦闘能力が大幅に向上する。

 ★ステータス上昇値:全ステータス20%


「うん、まあ……。リザードマンの味方がいないとただの頑丈な剣だな」

「ん。残念武器。でも『固有ユニーク』武器なら切れ味は相当ある。上級冒険者になるなら持っておきたいレベルではある」

「だな。まあメイン武器にするとなると俺には今更だけど、サブ武器という選択肢なら『剣の砥石(『固有ユニーク』)』があるから、今の『ハイ・ミスリルソード+5』は卒業できるかな」

「問題があるとすれば、アドロンの武器ってところかしら?」

「……そうだな」


 アキがニヨニヨしている。アキの言う通り、あいつの武器ってのはなんかやだけど、使えるものは使わないと勿体無いんだよな。それに、砥石で研げばほぼ別物になるようなもんだし、原型は留めないはず。つまりなんの問題もない。

 そう思うことにしよう。


「んじゃ早速磨いて……」


 俺は彼女達が見守る中、英霊剣を繰り返し研いでみた。


 名称:リザードマンの英霊剣+5

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:剣

 武器レベル:41

 説明:リザードマンの英霊たちの言葉が刻まれた歴史的価値の高い剣。その言葉は切れ味を鋭くし、耐久力を大幅に向上させている。これを持って戦うと、周囲にいる味方のリザードマン達の戦闘能力が大幅に向上する。

 ★ステータス上昇値:全ステータス20%


 MAXの5回も研げば、立派な武器へと早変わりしていた。


「これでよし。んじゃ、次は槍だなー」


 名称:支配者の赤槍

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:槍

 武器レベル:39

 説明:モール達の支配者だけが持つことを許された赤槍。これを持って戦うと、周囲にいる味方のモール達の戦闘能力が大幅に向上する。

 ★ステータス上昇値:全ステータス30%


「英霊剣と同系統か。でも、ステータス上昇値はこっちの方が高いな」


 念のため黄色と緑を見てみると、黄色は25%で緑は20%の上昇だった。

 やっぱこのダンジョンでは、赤色はモンスターも装備も強いという認識みたいだな。


「槍は基本的にマキだけど、マキにはもう『夜の魔槍』があるもんなぁ」

「はい。あまりこれの武技スキルを活用したりはできてませんけど……」

「まあそれはおいおいな。……ところで、槍の信号機を3人が持てば、アヤネのペットのモールの戦闘能力、75%上昇したりするんだろうか?」

「どうなんでしょう?」

「今は戦闘中じゃないですから、変化ないですわね?」

『キュ?』

「あったら面白いんだが……。まあ、今は保管だな」


 とりあえず3つとも俺の武器庫に収納して、と。

 さて、次は宝箱だな。それが終われば……スキルの整理が待ってるんだよなぁ。

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