ガチャ554回目:帰還と報告
ダンジョンを脱出した俺達は、日が経つほどに賑やかさを増して行く市街地を通り抜け、様々な感謝の言葉を浴びながらようやく協会へと到着した。
そして覚悟していた通り、そこでも絶大な歓待を受けることになった。受付嬢達からは熱い視線と言葉が無数に送られ、更には支部長からは土下座までされてしまった。まだ第四層と第五層が残ってるのに、それ終わったら支部長どうなるんだ……?
支部長を立ち上がらせ、なんとか話を聞いてみると、まずドロップ関係の上昇は第一層や第二層で、この短時間でも並々ならぬ成果を上げているらしい。一般的な『運』しかない者でもグリーンバナナが結構な確率でドロップするようになったとか、2本が房に繋がってドロップする確率も急上昇したとか。
第二層のドロップに関してはまだ調査中の段階だそうだが、この調子なら期待できそうだな。
まあ問題があるとすれば、今回の成果がそれだけに留まらない事なんだが。
『キュ?』
「アマチ君、つかぬことを聞くが、それは……?」
やっぱ気になるよね。でも、こんな場所で『テイム』の情報を流すわけにもいかないよな。絶対大騒動になるし、こういう事は少なくとも騒ぎが落ち着いてから……。具体的には俺たちがホテルとかに引き篭もった後に流すべきだろう。
俺の心配を理解し、彼女達も頷いてくれる。ならここは、『テイム』は隠して他を伝えるか。俺にはエンキ達やイリスがいる。何も知らない人なら、俺が元々『テイム』を持ってるという風に察してくれるはずだ。
「第三層の3つ目のワープゲート、及び3種目のモンスターを発見しました。そこにいるモンスターがコレです。彼女達が気に入っちゃったので連れて帰りました」
『おおお!!』
協会の職員だけでなく、周囲で見守っていた冒険者達が大興奮したようで歓声を上げた。
「これの詳細はまた後で伝えますよ」
「ありがたい! 本当に君には頭が上がらない!」
支部長に握手を求められたのでそれに応える。するとカメラのフラッシュが焚かれ、再び周囲から盛大な拍手が送られた。
てか、記者の人達もいたんだな。
まあ連日俺が色々とダンジョンデータを更新しまくってるから、常駐していたのかもしれない。
そこからは、連戦の疲れもあって応対が面倒になって来たところで、察してくれた彼女達が動き出してくれた。そしてあれよあれよという間に観客の波から救い出され、流れに身を任せていたら気付けばホテルのスイートルームに移動していた。
流石うちの彼女達だ。安心感が違うね。
「お兄さん、この子とってもキュートね! それにとっても強いし、ボディーガードとしても役立ちそう!」
『キュキュ?』
俺達を直接視ることは流石に誰もが遠慮しているように思えるが、ペットに対しては皆遠慮がないらしい。あの場にいた誰もがこのモグラを『鑑定』していた。それはシルヴィも同様のようで、こいつは可愛いだけでなく強さも兼ね備えている事をちゃんと把握しているようだ。
まあ、100レベルに近い通常モンスターだもんなぁ。そりゃ皆興味持つよ。
「支部長、シルヴィ。ここからもう1つ……。ああいや、3つほど爆弾情報があるんですけど」
「ええっ!? そうなの!?」
「き、聞こう」
そうして俺は2人に『テイム』のこと。腐葉土のこと。そして『グングニル』の事を伝えた。
「ああ、あと」
「ま、まだあるの!?」
「今日エスが第三層で足止め喰らって黄昏てたから、一緒に攻略した」
「……」
シルヴィはしばらくポカーンとしたあと、思いっきり吹き出した。
「ぷっ。あははは! もう、エスは間が悪いわね」
「ほんとビックリしたよー」
そうして少し和んだところで、支部長が本題に戻してくれる。
「さて、アマチ君。これらの情報、君はどうするつもりかね」
「全部、公開しちゃっていいですよ。まあ『グングニル』の詳細は公開しませんけど、『
「これは誰も見逃していた存在を、君が探し当て、君が見つけたのだ。法外な値段を付けられても誰も文句は言えないが?」
「そういうのは趣味じゃないんで」
「ふふ、そうか。ではどうするかね」
「そこはうちの彼女達、あとはうちの義母さん達に確認してください」
そういえば、『テイム』もそうだし『グングニル』も、義母さん達に伝えておいたほうがいいよな。でも、ここは日本よりも時差で14時間くらい遅れてるんだよな?
となると、今何時だっけか。
「ご主人様。今は17時で、向こうは朝の7時です」
「あー。……じゃあ、大丈夫かな?」
アキもマキも、出会った頃からいつもそのくらいには起きてたし、俺が協会に辿り着く頃には義母さんも協会で働いてた。サクヤお義母さんの生活スタイルは知らないけど、そういうところはきっちりしてそうなイメージあるよな。
「んじゃ、このままビデオ通話しても良い?」
「あ、ならお兄さん。通話するならこの職員用端末を使ってちょうだい。ここならうちの協会の回線を通ることになるから、傍受の心配もないし、信号強度はバッチリよ!」
「その端末は権限を最上位に設定してある。つまりは支部長クラスと同等という事だ。安心して使いたまえ」
「お、それじゃあ遠慮なく」
「ショウタさん。お二人とも知らない番号から電話がかかって来たら警戒するでしょうから、私たちの方で一報入れておきますね」
「あ、そうかも。ありがとね」
そうして俺は、約1週間ぶりに義母さん達と顔を合わせることになった。今後の取引について、考えている草案を伝えなきゃなー。
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