ガチャ552回目:第三層の新特産

 俺達は『銀の宝箱』を取り囲み、中に入っていた土をマジマジと見ていた。


「……モグラだからかな。まさか土そのものを宝箱に入れるなんて、想定外だよ」

「ん。どこからどう見ても土。エスはちゃんと視た?」

「ああ。僕の『真鑑定』でも土って出るね」

「土かぁ。どうしろってのよ」

「土がパンパンに入ってますわね」

「食料が豊富なダンジョンですから、農業用の土でしょうか?」

「ご主人様。『真理の眼』で詳細を見れませんか?」

「ああ、やってみる」


 武器や防具、アイテムとかなら、俺もすぐに『真鑑定』と『真理の眼』を使うっていうのが癖付けられて来た俺だけども、流石に土が出て来て面食らったせいか、使うという発想にならなかったな。反省反省。


「『真鑑定』『真理の眼』」


 名称:トレントの腐葉土

 品格:≪最高≫エピック

 種類:素材

 説明:ダンジョン製の土と水、そしてトレントの葉や枝が堆積して腐葉土と化した物

 ★ダンジョン内の自動修復作用に用いられる循環魔力が内包されており、ダンジョン産の作物を植えることで効果発動。作物の複製体を作成し、時間経過と共に急速成長していく。また、腐葉土内にミネラルワームが存在する場合、成長速度が大幅に向上する。


「……普通にめっちゃ便利な土じゃん」

「ん。外でも二層のお野菜食べ放題?」

「場所を問わないなら、日本でも栽培できちゃいそうね」

「輸入するのが野菜か土かの違いでしかないかもしれませんが……。複製される数や上限数次第では、中々使い勝手が良さそうですね」

「問題はその循環魔力というものが、どのくらい使えば枯渇するか、でしょうか」

「そうだね。あとはダンジョン内作物となれば、対象はこの『696ダンジョン』に限った話じゃない。世界中のダンジョン野菜を増やすことができる。これは需要の高そうなアイテムが出たね……」

「旦那様、これから土を量産されますの?」

「いや、そこはもう1つの中身を見てからになるかな」


 まあ、片方がすでに当たり枠みたいな扱いだし、スキルが外れでも残念じゃないな。


「んじゃスキルをっと」


 そうして気軽に開けた宝箱の中身は、とんでもない代物だった。


「マジかよ、ここで出るのか!?」


 名称:テイム

 品格:≪最高≫エピック

 種類:パッシブスキル

 説明:動物型モンスターを手懐ける事が可能なスキル。自身のモンスターを譲渡する場合、相手もテイムスキルを取得している必要がある。

 ★1度テイムに失敗したモンスターは、テイム成功確率が著しく低下する。

 ★成功率は対象とのステータス差などで変動する。

 ★レベルに応じて対象の種族、同時使役可能なモンスターの数が増加する。


「うっわ、初めて見た……」

「『テイム』スキルだって!?」

「わわ、生で見るのは初めてですわ」

「日本じゃ未確認のスキルだもんね! それどころか、世界に視野を広げても発見国は限られるわよ!」

「ここは日本じゃないですけど、それでもこの発見は大きいですよ!」

「そうですね。今回の報酬には、このスキルを優先的に日本へ流通するように手配するよう申請しておくべきですね」

「ん。すごい。ショウタの偉業がまた増えた」


 そうして盛り上がっていると、エンキ達が俺を見上げて確認して来た。


『ゴゴー?』

『プルプル』

『ポポ』

『~~♪』

「そうだな、ある意味イリスが一番立ち位置としては近いよな」


 エンキ達はコア以外は俺がスキルを使ってボディたら何やらを調達したのに対し、イリスは元々はダンジョンモンスターだ。それを魔石を通してテイムしたようなもんだからな。

 エンキ達は関係値は家族でも、スキル的視点で見れば配下だ。けどイリスは、家族ではあるけど配下とは少し違う。仲間とした方がニュアンスとしては近いが、だからといって改めてテイムする必要はないだろう。


『プル?』

「おう、心配すんな。そんなことするまでもないよ」

『プル!』


 イリスを抱き抱えながら、この後のことを考える。

 この『テイム』スキルを圧縮しまくれば高レベルの物が出来上がるはずだ。そうするとどんな風にスキル効果が変化し、強化されて行くかは気になるところではあるが……。それはまあ、帰ってからでもできるだろう。


「そんじゃ、切り上げようか。エスもこれで心残りはないか?」

「ああ、十分だよ。ありがとう兄さん!」

「よし。じゃあ広間に戻って、あのワープゲートを皆で潜ろうか。マップで見ればまだ閉まるまでに時間の余裕はあるみたいだし、エスだけはぐれるなんてオチは無さそうだしな」

「あはは。もうあんな経験はごめんだよ」


 冗談で言ったのに。本当に経験済みだったとは。ってことは、以前言ってたチームが分断されたって話は、エスの身の上話だったのかよ。

 そうして俺達は四層へと足を踏み入れるのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 視界が開けると、真っ先に目に飛び込んできたのは雲一つない澄み切った青空だった。そして今いる場所は噴水広場のようになっていて、ダンジョンの外にある公園の一角に飛ばされたのではと錯覚してしまった。

 だが、マップはきちんと機能しているし、何よりこの公園の四隅にある石橋の先を見れば、現実ではあり得ない物が浮かんでいることが分かった。


「おお、これはまたファンタジーだな」

「すごい光景ですわ……!」

「素敵です……!」

「幻想的ねー!」

「話には聞いたことがありましたが、なるほど。これは確かに特徴的な光景ですね」


 四方に見える橋の先。そこにはスプーンで地面をくり貫かれたような、色鮮やかな大地が広がっていた。

 どうやらこの第四層では、4つの……いや、この中央島を含めれば5つの浮島が舞台のようだな。ここも中々楽しめそうだ。

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