ガチャ550回目:真の秘宝

 『プラチナの宝箱』に手を掛けると、中身は確定していないからか選択肢が出て来てくれた。


【武器】

【秘宝】


「うわっ、クッソ悩ましい選択肢が出たな」

「ん。流石ショウタ。限界知らず」

「秘宝か。となると『伝説レジェンダリー』級が出るのは間違いないね」

「んー、俺の場合もっと低いランクの宝箱から秘宝が出てるしなぁ。『プラチナの宝箱』なんだからもっと良いものが出る可能性も否めないな」


 前回の秘宝は、マップにワープ機能をもたらした『転移の宝玉』だからな。さらに良いものとなると想像がつかん。


「確かに秘宝は気になるわよね。武器は一昨日ゲットしたばかりだし」

「そうですね。現状剣は言うことなしですし、弓も最高峰の逸品です。これらを越えるものなんて、そうそうないと思います」

「武器を選んでも扱いに困るかもしれないんですのね」

「確かにそうですね。ご主人様ならきっと素晴らしい業物が出土することは間違いないでしょうが、今回の宝箱はモンスターからの直接ドロップではなく、ダンジョン側が事前に用意していた報酬です。その為、どんな武器種が出るか予想ができません……。最悪、全く扱えない武器が出る可能性も……」


 最初はわくわくが隠し切れなかったアイラが、言葉を紡ぐごとに意気消沈して行く。どうやら俺がすごい武器を引き当てるのを観たかったらしい。


「……うん、皆の言う通りだな。じゃあアイラには悪いが、秘宝を選ぶね」

「ご主人様の望むがままに」


 そんじゃ、秘宝を選択してっと……。

 箱を開けると案の定暗闇だったので、手を突っ込む。すると球体状の何かがそこにはあった。前回の秘宝も球体だったけど、秘宝って玉タイプが多いのかな? いやでも、あの兄弟が使ってた秘宝は天秤だったしなぁ。

 そんなことを考えながら、俺はそれを引き上げた。


 名称:真・転移の宝玉

 品格:≪高位伝説≫ハイ・レジェンダリー

 種別:アーティファクト

 説明:神が護りし秘宝の1つ。ダンジョン内であれば、一度訪れた事のある場所に瞬時に移動出来る。有効対象10メートル。再使用時間36時間。


「うおいっ!?」


 変な声が出た。

 何だこれ、ツッコミどころしかないぞ……!?


「この見覚えしかないアイテムのことは置いとくとしても、『伝説レジェンダリー』の更に上が存在したのか……? 皆は知ってた?」


 うちの彼女達は全員が首を横に振った。アイラもミスティも知らないなら、そういうことだよな。

 エスは……なんか考え込んでる。


「エスー?」

「ああ、すまない兄さん。僕も実際に見るのは初めてだね」

「ということは、噂では聞いたことがあると?」

「噂というより、仮説だったけどね。もしかしたらあるんじゃないかって話さ。現状僕たちが把握している希少度を表すランクも、確認できている物を皆で共有したものに過ぎない。だから、10年経った今でも未発見のランクが存在していてもおかしくはないとは思ってたよ」

「なるほど、確かに。けど、今まで知られてないってことは、それだけ珍しいってことだよな」

「ああ。だから位置付けとしては、『伝説レジェンダリー』よりは上で、かつ『幻想ファンタズマ』並に珍しいけど、唯一無二ではない物。それらに与えられる枠組みかもしれないね」

「なるほどな」


 この『真・転移の宝玉』だが、現状説明文だけ見ると再使用時間が半減した以外に特別メリットらしいメリットは見当たらない。……けど、絶対何かある。

 『真理の眼』でも見つけられない何かが。そう俺の直感が告げている。

 それに――。


「……」


 こいつ、『アトラスの縮図Ⅱ』に反応してるっぽいんだよな。

 俺が開いているマップとの間で引力でも発生しているのか、この手を離せば今すぐにでも飛び込みそうな感じがする。

 せっかくの希少な『高位伝説ハイ・レジェンダリー』だけど、この現象は気になるし、皆に確認してみるか。


「――というわけなんだけど、どう?」

「良いんじゃない?」

「良いと思います」

「旦那様にお任せですわ!」

「ご主人様の望むままに」

「ん。任せた」

「もとより兄さんのアイテムだ。兄さんの好きにして良いよ」

「皆ありがと!」


 んじゃ早速、宝玉を握る手の力を緩め、マップへと転がして行く。するとトプンと宝玉はマップに飲み込まれ、マップが一瞬輝いた。

 輝きが明けると、マップはいつも通りの様子ではあったし、特に変化らしきものはなかった。っていうか、後回しにしてたけど、Ⅱにレベルアップした後どう変化したのか確認してなかったな。


「んー……?」


 俺は皆が見守る中、マップ全体や設定なんかを色々と再チェックしていく。すると、階層を切り替える為のタブに、見慣れないマークが追加されているのが分かった。


「なんだこれ。回転マーク……?」


 ポチリと押してみると、マップに表示されていた『696ダンジョン』の『第一層・第二層・第三層』の情報画面がガラリと変化して、『アンラッキーホール』の『第一層』の情報へと切り替わった。


「……は??」


 そして見事に赤点しか存在しないマップの中で、ほとんど微動だにしないソレをタップすればスライムの映像が表示され、何もない空間をタップすれば以下の画面が出現した。


【対象のダンジョンの選択した場所に転移しますか?】

【YES/NO】


「おいおいおいおい……」


 チートスキルが進化してチートスキルになったぞ!?


「皆もこれ、見えてるよな?」

「は、はいっ」

「み、見えてるよぉ……」

「『伝説レジェンダリー』級の武器なんて目じゃないくらいぶっ飛んでますわ!」

「流石はご主人様です。世界の常識を覆し続けるような、アイテムやスキルを量産し続けるご主人様に対し、差し出がましい真似をしてしまいました。お許し下さい」


 先程の宝箱で秘宝ではなく武器を推していたことを、反省してるらしい。


「アイラは大袈裟だな。微塵も怒ってなんていないから、頭を上げな」


 頭をポンポンしてあげると、うっとりした表情で俺の手を握って頬擦りして来た。人前で甘えるなんて珍しいな。

 このアイテムの出現が、アイラの何かを刺激したらしい。


「それにしても、まだ本命の宝箱が残ってるって言うのに、兄さんはとんでもないことをしてくれたね」

「ん。不正入国し放題」

「ミスティ、不穏なこと言わないでくれる?」

「んふ」


 恐らく『アトラスの縮図Ⅱ』で得た効果が、今まで足を運んだことのあるダンジョンの情報も、リアルタイムで切り替えて見れるようになるというもので、『真・転移の宝玉』の効果は、他のダンジョンでも転移が可能となるという効果に違いない。

 にしても、こんな機能がついちゃったらなぁ……。


「こうなってくると最悪、ダンジョンごとに拠点を買う必要がないじゃんね」

「ふふ、本当ですね」

「36時間は使えないとしても、最短1泊2日で戻ってこられるもんねー」

「プチ旅行で、どこでも行きたい放題になれちゃいますわ!」

「この能力を使えば、例の『征服王』が支配するダンジョンを攻略する時も、安全に活動ができますね」

「ん。確かにそう。流石アイラ。良い着眼点」

「そうだね。いよいよあのダンジョンの攻略の、現実味が出て来たかもね」

「盛り上がってるとこ悪いが、まずはこのダンジョンからだからな? あと、エスも言ったように本命も残ってるし」


 さて、本来前座だったはずの『プラチナの宝箱』で随分と盛り上がってしまったな。そんじゃ、最後のとっておき。『プリズムの宝箱』を開封するとしようか。

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