ガチャ549回目:封印の先に

「それじゃあ、これで三つ目の鍵が手に入ったのね」

「ああ。だからここから先は洞窟の完全攻略だな」

「ん。さっきの殲滅もそうだけど、レアモンスターを倒した影響か、モンスターの反応が少ない」

「全然湧いてませんわー」

「俺としてもこれ以上宝箱が増えるのは勘弁願いたいし、ありがたい話だ」


 そうして俺達は、ワープゲートの場所をゴール地点に定めつつも、時折発生する分かれ道に人員を送りつつ、見えているマップの再マッピングを開始した。

 『視界共有』とマップ機能のおかげで、別行動にもかかわらず意思の疎通を無しに、情報を共有し合えるから便利だよな。

 ただ、もっと効率の良い方法もあるにはあったんだが、『鷹の目』作戦を実行できなかった。何故なら、この洞窟は全体的に真っ暗だし、『鷹の目』じゃ『暗視』スキルが乗らないんだよな。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 結局、俺達は道中で封印されていそうな箇所を発見することは叶わず、ワープゲートのある最奥地にまでたどり着いてしまった。


「結局、ゴールに答えはあったわけか」


 ゴールであるワープゲートのある安全地帯。その部屋は大部屋になっていて、中央には光り輝く空気の歪みがあった。あれは第一層で見かけた、風上にあるワープゲートと同じタイプのものだった。

 そしてその奥には、いかにもな怪しいレリーフが刻まれた壁があったのだ。しかも刻印されているのは、この階層にいたリザードマン、コンドル、モグラだ。


「たぶん、これに触ったらこの壁は消えるとか起きそうだな」

「では、せっかくですし写真に撮っておきましょうか」

「そうですね。記録保全は大事です」


 そういえばさっきの宝箱も、俺が開けるよりも早く彼女達は写真を撮ってたな。

 そうして写真を撮りつつ雑談に興じる。


「あ、ねえショウタ君。結局今の洞窟探索の道中で、雑魚モンスターは100体いたの?」

「いや。ギリギリ届かなかったな。アイラ」

「はい。たしか94体でしたね」

「ん、惜しい。でもショウタは、戻る気ない?」

「おう。特に目的もなく狩るのは性に合わんからな。目的の中で達成できないんなら、縁がなかったというだけの話だ」


 それに、さっきのガチャ内容を精査する前に、次を回す機会が来るのはなんか気持ち悪いしな。


「じゃ、開けるぞー」

「とはいえ、取っ手らしきものはどこにもなさそうだね」

「見えない鍵なんてものがある以上、こういうのは触れれば何とかなるもんさ」


 そうして俺が刻印の刻まれた壁に手を触れると、レリーフの中央部分が音を発しながら沈み始めた。


「全部消えるわけではないのか」


 出現した小さな入り口を潜るとそこは小さな部屋になっていて、中央には金をベースに宝石などが散りばめられたゴージャスな台座があった。そしてその台座には、台座が見劣りするほどに、燦然と輝く3つの宝箱が鎮座してあった。


『おおー!』


 宝箱だけが存在する部屋。

 過去に、『上級ダンジョン』でそんな場所が存在していたという話を聞いたことがあった。だけどまさか、自分もお目にかかれる日が来るとは。

 中央に存在する宝箱は、今まで見た宝箱の中でも一際地味な色合いの宝箱ではあったが、その分存在感があった。なぜなら、滅茶苦茶ちっちゃいのだ。

 逆に左右にある宝箱は、高レアリティの宝箱なんだろう。今までに見たことのないような輝きをしている。


「『プラチナの宝箱』に、『プリズムの宝箱』か。まさか再び見られる機会があるなんてね」

「ん。感慨深い」

「兄さん、一つ言っておくね」

「ん?」

「僕達が手にした『風』と『ケルベロス』は、この右手にある『プリズムの宝箱』から手にしたんだよ」

「……え、マジで!?」

「ん。マジ」


 それは予想外の展開だな。

 このダンジョンにはもう『幻想スキル』はないと思ってたのに。いや、でも本当にソレが入ってるかは開いてみるまでわからんか。

 となれば、これを開けるのは最後にするべきだろう。


「んじゃ、こっちのちっちゃいのから行こうか」


 そう言って宝箱に触れた瞬間、目の前に通知が出現した。それは中身の選択肢ではなく……。


【特殊条件を満たしました】

【スタンピード進行が一時的にロックされます】


「この階層は、これに触れることが条件だったか」

「これで第三層も平和になったんだね。兄さん、本当にありがとう」

「ん。ショウタすごい! ありがとう!」

「おう。つっても、まだ二層分残ってるけどな」


 頭を下げる兄妹の肩を叩き、頭を上げさせていると、しんみりした空気を入れ替えるように彼女達が飛びついて来た。


「にしても、すごいハイペースよねー。このまま第四層と第五層も1日ずつで終わったりして」

「どうだろうな。ダンジョンの構成次第じゃないか?」

「んふ。そうだけど、ショウタ君ならやってくれそうな気がするのよね」

「ショウタさん、冒険が順調でも、体力は無限じゃありません。休息も大事ですからね」

「ああ、分かってる。疲れたらマキに癒してもらうよ」

「はいっ。お任せくださいっ」

「旦那様。今日は帰還したら、二重に感謝されそうですわね」

「……そうだった。ドロップアップもあったんだった」

「ふふ。わたくし達にお任せあれですわ!」


 そんじゃ、通知のせいで中断しちゃったけど、中身を確認しましょうかね。ま、想像はつくけど。

 パカリと開けると、見覚えのある紋章が目に入った。


「うん、やっぱりな」


 名称:三種の紋章【Ⅲ】

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:アーティファクト

 説明:特殊モンスター『リザードマン オッドボール』『エスケープ バード』『エルデスト ガヴァナー』『セカンド ガヴァナー』『サード ガヴァナー』を調伏した者に贈られる特別報酬。696ダンジョンで使用する事で、使用者を含めた周囲10メートル以内の人間全てを696ダンジョンの第四階層へ移動させる。何度でも使用可能。トリガーアイテムとしても使用可能。


「調伏、ね。言い得て妙だな」

「ご主人様」

「ん?」


 感慨深く思っていると、『プラチナの宝箱』の隣でスタンバっているアイラから声をかけられた。彼女もまた、エス達と同じように『プラチナの宝箱』に思い入れがあるのか、感慨深そうな表情を浮かべていた。


「どうした?」

「はい。この『プラチナの宝箱』ですが、私がこの武器……。『パラゾニウム』を手にしたのもこの宝箱からなのです。私ですらこの獲物を手にできたのですから、ご主人様であればきっと、素敵なものが手に入ると思います」

「おー。それは楽しみだな」


 そういや、アイラは白金の箱から手にしたとか言ってたっけ。確かに白金はプラチナだもんな。んじゃ、次はこの『プラチナの宝箱』か。

 アイラは期待してくれてるけど、まずは選択肢がどうなるかだよなー。

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