ガチャ542回目:矜持の種類

 俺たちの意識は第三層のあちこちに散らばっていたが、その身体はエンキによって運ばれ続けていた。そしてしばらく『鷹の目』を飛ばしていると、各々が優雅に飛ぶプライドコンドルとエンカウントしたが、そばを通っても誰も気付かれることはなかった。

 おかげで、安全に探索をすることができていた。


「今の所それらしい影は見えないが、例の特殊レアを見たことあるのはエスだけなんだよな? 実際そいつは、どんな見た目の奴だったんだ? エスしか知らないのにそれを見たって断言できるってことは、見た目からして別物だったんだろ?」

「ああ。簡単に言えば色が鮮やかだったんだ。プライドコンドルは地味なブラウンとグレーの組み合わせだったけど、例の奴は赤と青の配色でね」

「随分とまあ、目立つ色合いで。そりゃ見間違いなんてあり得ないわな」


 マップに目を向けるが、そこには俺たちを示す青点と他の冒険者を示す白点。そして通常モンスターを示す赤点の3色しかなかった。

 例のレアに関してはここに出ないのは仕方がないとしても、『鷹の目』もマップに映らないとはな。マップとは完全に別スキルだから、共有されないのは仕方が無いのかもしれないが、おかげで誰がどこにいるのかとかは分からなかった。なので見える景色とモンスターの数を報告してもらったり、片目を開けてマップと見比べたりして各々で判断してもらうしかなかった。

 けどこの2視点の併用は脳に負担が掛かるもので、『並列思考』を持ってる俺は慣れたもんだけど、初めて自分の意思で動かせる他のメンバーは四苦八苦していた。俺も最初の頃は立ちくらみ起こしたりと大変だったっけ。


「ご主人様。西方面、ダンジョン壁に到達しましたが発見できませんでした」

『ポポ!』


 そして真っ先にマップ端に到着したのはアイラとエンリルだった。流石にこの2人は練度が違うか。


「ではエンリル様、お互いの間を塗り潰しましょうか」

『ポポ!』


 アイラは俺の顔とエンリルの雰囲気を見て、彼の言葉を理解したんだろう。相変わらずの理解力だな。


「北東方面、とりあえずマップの端まで来たけどそれっぽいのはいなかったかなー」

「私も東方面発見ありません。姉さん、私達もお互いの間を塗りつぶす感覚で埋めていこう」

「オッケー」


 続いて逆方面の姉妹も動き出した。

 エスとミスティはまだ端っこには到着していないらしい。かく言う俺もだが。

 言い訳をさせてもらうと、元々俺たちのいる場所は北側に寄っていて、俺とエス、アヤネは片道の距離が長いためだ。逆にミスティは、こういう操作が苦手なのか難しそうな顔をしている。


「ん。難しい……」

「焦る必要も無理する必要もないさ。ゆっくりで良いからな」

「ん。分かった……」


 ミスティの頭をポンポンしていると、エスが声を上げた。


「……いた!」

「お、マジか」


 まさかエスが見つけるとは。一番無いかもしれないと思ってたのに。


「エス、具体的にどの辺かわかるか」

「ああ、見える大きさからして、場所はこのマップの端辺りだね。高さは200メートルほどみたいだけど、詳細は分からない。もう少し近づくかい?」

「いや、雑魚には感知されなかったが、こいつもそうだとは限らんしな。そのくらいの距離を維持して見張っておいてくれ。全員、悪いけどエスの位置まで視点を移動させてくれ。俺に考えがある」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして、全員の視点が、そいつを囲む位置へと布陣した。


「それでショウタ君、これからどうするの?」

「ああ。まず奴は感知範囲がクソデカい可能性がある以上、エスはここで待機だ。今の場所も、エスを避けるようにして一番離れた場所にいるような感じだしな」

「そうかもしれないね」

「だから討伐は俺とエンリルの2人で行く。その間、皆には奴が動かないか見張りを頼む。ダンジョン内で連絡はできないが、エスとアイラに『視界共有』を掛けておく。流石に『鷹の目』の映像を『視界共有』で覗き見る事はできないけど、2人は奴が動くことがあれば皆と連携してマップで奴の位置を示してくれ」

「分かった」

「お任せ下さい」

「ま、見失ったらまた試すだけだから、気楽に行こう。そんじゃ、行ってきまーす」

『ポポー』

「「「「「「いってらっしゃい」」」」」」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして案の定と言うか、俺たちが近付いていることを奴はどうやってか感知したらしく、まだ1キロくらいは離れていたというのに、慌てて移動を開始した。

 それを俺とエンリルは二手に分かれて挟み込むようにして動き、第三層の隅っこに追いやることに成功した。


『グアアアッ!』

「ふぅ。やっと追い詰めたぞ」

『ポポ!』


 だがこんな状態に追い込まれても尚、奴は逃げることを諦めた様子はなく、少しでも油断すると今にも猛スピードで移動を開始しそうな雰囲気を発している。

 ほんと油断ならないやつだな。


「『真鑑定』『真理の眼』」


*****

名前:エスケープ バード

レベル:150

腕力:500

器用:2000

頑丈:500

俊敏:3000

魔力:9999

知力:2000

運:なし


アーツスキル】隠形Ⅴ、気配断絶Ⅲ、認識阻害、敵意感知Ⅲ

★【エクススキル】魔力の網、生存欲X、逃走術LvMAX


称号:エスケープ スペシャリスト

装備:なし

ドロップ:魔石の特大ポーチ

魔石:極大

*****


 まさかの称号持ち。しかも、逃走の専門家、ね。名前はそのまんまだけど、こんな称号を持ってるんなら、そりゃ確かにプライドがありそうだわ。

 スキルも見たことのない新種の感知スキルがあるし、どんだけ生き残りたいんだか。しかし最近『全感知』には含まれない感知スキルをよく見かけるようになったなぁ。

 本当ならそのまま倒してこのスキルをゲットしたいところではあるが、目的はそれじゃない。

 諦めてプライドをへし折るか。

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