ガチャ541回目:範囲化
結論から言うと、『プライドブレイカー』の破壊力は抜群だった。
エス達に釣られてやってきた奴らは俺がソレを取り出せば、突然気を失ったかのように落下し、地面に激突するとともに煙へと変わったし、続いて戻って来たエンリルに釣られてやって来た連中は、最初から出しっぱなしにしていた影響か30メートルくらいまで近づいた瞬間またしても急速落下し、地面に落ちる頃には既に煙へと変わり果てていた。
「見ただけで死ぬとか、即死技かなにかか?」
「プライドがないと自分の身体すら保てないなんて、哀れな生き物ね」
「アキ先輩、辛辣ですわ~」
「名前にプライドとついてる以上、それがこのモンスターの根幹にあるものなのかもしれませんね。それも命と同等の」
「ん。ちょっと可哀想」
ちょっとしんみりした空気になったが、アイテム回収を終えたアイラが戻って来た。
「しかし、今回のドロップも似たようなものでしたね。リザードマンの時と違って、相手の人数や意思が交わらない分、アイテムの内容に偏りが見られるのはご主人様だからでしょうけど」
内容としては以下。
『風塵操作Lv2』23個。
『風の鎧』18個。
プライドコンドルの腿肉、400グラムが34個。
プライドコンドルのソリレス、200グラムが25個。
100体を煙に変え、100体全てがアイテムを落としていったようだ。
「時折とはなんだったのか」
「うーん、流石兄さん。と言いたくなるようなラインナップだね」
「まあでも、一風変わったドロップはなくて、リストにあるものの中でレアリティの高そうなものが選ばれた感じはあるかな。つまり、やっぱりハズレだ」
せっかく特殊な方法で退治するんだから、ドロップも特殊であってほしいんだがなぁ。まあ、そういう意味では例の逃げ回るモンスターとやらには期待値が高いんだが。
「それでショウタさん、どうやって探すんですか?」
「エス君の強さを察して逃げちゃう相手なんでしょ? それじゃあ、ショウタ君でもそうなりそうな気がするんだけど」
「ん。レベルで見られるなら、ガチャを引けば可能性はある。けど、ステータスで見られるなら絶望的」
「旦那様、ガチャを引いて行かれますの?」
「……いや。ガチャを引かずとも何とかなる気がするんだよな。数回前のガチャで『鷹の目』がⅢになったでしょ。アレの新機能がわりかし使えそうな気がするんだよね」
まだ使ってないので詳細は不明だが、いけそうな予感がするんだよな。
「じゃあ、しばらくはここにいてくれるのね」
「ん?」
アキの言い回しが気になって顔をそちらに向けると、彼女たちが一斉に飛びついて来た。
「うおっ。急にどうした?」
とはいえ、彼女達の様子がおかしかったのには気付いていた。正確には先ほどの『グランドグリフォン』戦を終えてからだ。
「だって、さっきのショウタ君、すっごくカッコよかったもん!」
「目を閉じるとさっきの戦闘シーンが思い浮かんでくるくらい、目に焼きついちゃいましたっ」
「えへへ、旦那様~」
「ん。凄かった」
「ああ、さっきの乱反射ね」
『ミラージュミスト』は失敗したけど、他はまあぶっつけ本番であることを考えれば大成功と言える出来だったからな。褒められると素直に嬉しい。
アイラは皆みたいに引っ付いては来てないけど、彼女ですら熱い視線を隠そうとはしなかった。
「ご主人様、いつからあの様な技を考えられていたのですか?」
「んー。最初に考えたのは、『空間魔法』を使って砂浜で修行した時だな。あの時はまだ、発動速度もそうだけど、技の根幹にするにしては俺の動きも遅かったし、夢のまた夢って感じだったな。それにたとえ高速化できたとしても、俺の知覚能力が追いつきそうになかったから今まで放置してたんだ。だけど必要なスキルを得た今、試さずにはいられなかったんだ」
「わかるよ兄さん。僕も『神速』を手にした時から、あんな高速戦闘を何度もイメージしてきたけど、兄さんの言う通り『神速』が乗ったスピードは僕らの知覚限界を軽々と超えて行くからね。僕も半ば諦めていたところだったけど、兄さんが先に実現してくれた。これで夢が持てるよ」
「エスの場合、あとは『知覚強化』だけだな。いまのとこ、『伝授の宝珠』は出てないけど、もうちょっと待ってくれな」
「ああ。僕の場合、戦闘能力が極端に上がるというよりも多方面に満遍なく伸びる感じだからね。急がないからいつでも良いよ」
「いやそれ、総合的に見て滅茶苦茶強化されるじゃないか」
『風』なんて概念を操るスキルなんだから、知覚能力が上がればそれだけ活用の幅が広がるよなぁ。
「ただ今のBRは『スキル圧縮』のオプションが優先度高いみたいだから、もうちょっと待ってくれ」
「構わないさ。気長に待つよ」
「……そんじゃ、『鷹の目Ⅲ』を使ってみるかね」
「「「「っ!?」」」」
『鷹の目』を発動させた瞬間、くっついていた彼女達が一様に身体をビクンッとさせた。
「お?」
「はわ、旦那様っ。いきなり視界が浮かぶとびっくりしますわ!」
「え、アヤネも? あたしも視界が浮いてるんだけど!」
「そうなんですの?」
「わ、私もですっ」
「ん。私も」
どうやら、彼女達全員に『鷹の目』の効果が発動したようだ。
ちらりと見てみれば、アイラも片目を瞑って上空の視界に意識を向けているし、エスも冷静に座り込んで意識を空へと飛ばしている。エンキ達も静かに空を見上げてるし、多分効果が出てるんだろうな。
そして『鷹の目』がⅢになった変化は、効果が全体化しただけではないようで、今までは固定だった起点が、割と自由に動かせるようになったらしい。そして他者の『鷹の目』の起点は、やっぱりというか目視で確認ができなかった。それはモンスターからも同様のようで、この視点をいくら飛ばしても相手にはバレないという事実が判明した。
「くっそ便利になったな」
まあ他者の視界の起点は見えないし触れもしないが、そこに架空の視界を飛ばしている事実は変わらない。なので、勘の鋭い奴は気付くかもしれないけど……。モンスターって、『運』がないからな。たぶん、特殊なスキルでもない限り、気付けるモンスターっていないんじゃないか?
「うん。動かし方は慣れて来たかな。それじゃあ僕はこのまま南の方を見てくるね」
「ん。私は北側」
「んじゃ、あたしは北東かなー」
「私は東を見てきます」
「わたくしは南東ですわー!」
「では私は西を」
『ポポー!』
「んじゃ俺は余った南西だな。あとエンキとセレンとイリス。悪いけど、この間俺達無防備になるからさ。このまま頂上の石碑まで運んでてくれるか?」
『ゴゴ!』
『~~♪』
『プルル!』
そうして皆で空の世界を満喫しつつ、探索の目を広げるのだった。
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