ガチャ540回目:空間殺法
「よぉ。バトルしようぜ」
『クェェェ!!』
俺の意図を理解したのか、『グランドグリフォン』は俺に向けて雄叫びを上げ、奴の頭上で閃光が奔った。
それを目視した時には、俺はすでに回避行動を取っていた。
『ピシャッ!』
直前まで俺がいた場所に雷が落ち、地面を焦がしたようだ。
今の閃光は稲光だったようだな。となるとこれは『風雷操作』によって生み出した雷か。エンリルが普段から扱っている攻撃手段だけあって、その仕様も十分理解している。
この雷はダメージもエンリルが使えばこの階層のモンスターなら一撃で煙にできる威力がある。エンリルに及ばないまでも『知力』が2500もあるコイツの攻撃ならば、まともに食らえば大ダメージを受けることに加え、感電による『スタン』と『麻痺』が発生するはずだ。
その上『風雷操作』による攻撃は、リキャストが存在しない。
つまり、連発して撃てるのだ。
『ピシャッ! ピシャッ!』
『クエエエ!!』
「ええい、鬱陶しいな!」
あんまり時間をかけてやっていると、『極光魔法』が飛んでくるだろうし、悠長なことはしてられないな。雷の軌道を変えるような手段は持ち合わせていないが、俺には防壁が2種類もある。
高速で動き回ることで、攻撃と同時に回避を織り交ぜつつ、相手の体力を削り切ってやる!
◇◇◇◇◇◇◇◇
何度か使う事で詳細が分かってきたが、この『虚空歩』というスキル、どうにも『1度足場を経由した後』という条件を満たすなら、1度だけ空中で跳躍ができるというスキルだった。それは上に向かっての跳躍に留まらず、術者の思う方向へと飛ぶことを可能にしていた。
そのため、『虚空歩』を使えばまるで狭い小部屋の中でスーパーボールを投げたときのように、縦横無尽に跳ねまわり、対象を翻弄しながら多方面から攻撃し続けることだって可能だった。
そしてその『虚空歩』の条件である足場は『空間魔法』で設置した透明なプレートでも代用可能だった。極めれば空中に浮いた状態でも縦横無尽に乱反射して相手を攻撃する事だって可能なのだ。そこに『神速』と、自分のスピードを理解する『思考加速』や『並列処理』を組み合わせることで、目にも止まらぬ速さで動くことも可能だった。
あとは実験的に『ミストミラージュ』を使用できないかと、『空間魔法』を『グランドグリフォン』を囲い込むように配置して、足場兼、血煙を逃がさない特殊な空間にしてみた。しかし、発想は良かったのかもしれないが、これは失敗に終わった。どうにも防壁2種で受けた場合は発動しないらしい。
となると『ミストミラージュ』はチートスキルであるものの、使い勝手は良くなさそうだ。無かったことにするには、一度直接受ける必要があるわけで、そうなると痛みが伴うからな。痛いのは嫌だし、このスキルは基本的に封印安定だろう。
『クエエ……』
そして数十、いや、百回以上切り刻んだかもしれない。俺の猛攻が幾つもの消えない傷となり、ボロボロとなった『グランドグリフォン』は遂に倒れ伏し、煙となっていった。
2種類の再生スキルの壁も、高速で切り刻まれ続ければ機能を果たせなくなるみたいだな。
【レベルアップ】
【レベルが10から341に上昇しました】
「ふぅー……」
『空間魔法』を解除し、血煙を周囲に散らせながら一息つく。いつものようにアイラがアイテム回収にやってくるが、彼女も察しているのだろう。
「ご主人様。確認をお願いします」
「ありがと」
『プライドブレイカー』と名のついたソレだけは、収納せずに俺に手渡しして来てくれた。
「『真鑑定』『真理の眼』」
名称:プライドブレイカー
品格:≪遺産≫レガシー
種別:槍
武器レベル:43
説明:金色に輝く特殊な槍。味方が持っていると頼もしく見えるが、敵対生物が見ると自尊心がズタズタに切り刻まれてしまうプライドの破壊者。自尊心が強いモンスターに向けると、勝手にへりくだってくれるが、人間には効果がない。
★このアイテムによってモンスターのプライドが叩き壊されると、消える間際に時折アイテムを遺していく。
「やっぱり、英雄の証と同等の存在だったか」
「ん。悪趣味なのに、ショウタが持ってるとカッコよく見える」
「不思議ですわ~」
「この『時折』ってのが気になるわね。本当に時折なのか、それとも『運』が参照されるのか……」
「ショウタさんの場合だと、確定になりますよね」
「そこはご主人様ですから」
「はは、僕が持つとただ消えるだけになりそうだ」
エスの不幸体質を考えれば、そうなりそうで怖いな。
「まあ、人間には効果が無いって言うのは悪用されなさそうで安心だな」
「そうねぇ。もしそうだったら、ショウタ君なら大丈夫だけど、他の人には渡したくないわよね」
「はい。ショウタさんなら安心ですっ」
「信頼してくれてるのは嬉しいけど、プライドだけの人間になら試してみたくはなるよ?」
「ん。どんな風にバッキバキになるのか見てみたい気もする」
「ふふ。お二人とも悪い顔をしていますわ」
「話に聞く限り、征服王とやらはプライドだけは大きそうですからね」
「そうだね。人間の中で一番効果的だったかもしれない事を思えば、モンスター限定というのはやはり勿体ないな」
エスが残念そうに吐き捨てた。
つーかまあ、エスやミスティを信じない訳じゃないけど、その征服王とやらを俺は実際に目にしてないから、どんなクソ野郎なのかまだ実感できてないんだよな。現状、奴に群がってるハイエナのようなゴミの一部にちょっかいを掛けられたくらいで、当人から被害を受けた訳じゃないしな。
こんな嫌われてる以上、実は良い奴でした! なんてオチはないだろうけど、どこかのタイミングで直接お目にかかりたくはあるよな。まあでも、そんな時うちの彼女達は連れて歩きたくはないけども。
それはさておき、この槍の検証を始めるか。
「んじゃ、早速効果の検証をしたいところだが……。エス、例の逃げるレアモンスターはいたか?」
「いや、残念ながら見ていないね」
「エンリルは?」
『ポポー……』
「そうか。そんじゃ、軽くそこらの雑魚のプライドをへし折ったら、俺も探すかなー」
ガチャは……まだ良いか。
逃げるレアを追う中で雑魚のプライドをへし折ったり撃破したりする機会もあるだろうけど、341で狩っても161で狩っても大差はないだろうしな。
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