ガチャ538回目:使った意味
「それにしても、複数種類ものスキルがまとめて覚えられるなんて、面白いアイテムが出たわね」
「そうだね姉さん。でも、どうして忍者セットシリーズが出たんでしょうか」
「というと?」
「出る順番に意味は無いかもしれませんが、あんな名前なんですし、きっと他の職業系統のスキルセットもあるはずですよね」
「そうねー。でも、忍者が出たのはたまたまじゃない? ガチャなんだから、狙って取るようなものでもないじゃない」
「……いや、案外そうでもないかもな」
俺はミスティに視線を向けた。
「ん?」
「ミスティ、さっきの英雄の証の時に忍者の話をしてたよな」
「ん。忍者カッコイイ」
「多分それに釣られたんじゃないかと思う。『レベルガチャ』ってそういうところあるから」
俺が初めて知ったスキルを認識した途端にガチャから直接出たり、状態異常を受けてすぐに耐性装備を生み出したりと、思い当たる節は割とある。
「ん。じゃあ色々と言ってみよっか?」
「いや、こう言うのは期待しない方が出た時インパクトもあって嬉しいから、今まで通り気にしないでいこう」
「ん。分かった」
あと気にするべきはⅡになった『狭間の理』と、『スキル圧縮Ⅳ』とその他オプションだが……。『狭間の理』は元々『空間魔法』とかの空中系の概念に対する認知や認識が深まる感じのスキルだったから、空中戦にも応用できそうな気がする。
けど、肝心の『スキル圧縮』だが、こっちはなんか、今のところ変わった気がしない。そして発動しようにも、対象がないのか反応がない。
これは圧縮対象のスキルを俺が覚えていないだけなのか、全てのオプションが合わさる事で初めて意味のあるものなのか。まあ180消費だとしても、このダンジョンのレアⅡはどいつもこいつも強敵揃いだし、中間地点の3層で正規ルートではないにしろ、300越えの怪物が出現するくらいだ。
レベルが上がらないなんて悩みは起きないだろう。
「そんじゃエス、エンリル。悪いけどまた50体ずつ頼むわ」
「任せて」
『ポポ!』
2人は地図に映る敵影を頼りに二手に分かれ、飛んで行った。
しっかしまあ、エスと合流してからなんやかんやで1時間半くらい経過しつつある。ゲートの残り時間は4時間半ほど。あいつは急ぐ身ではあるのだが、結局俺のワガママに付き合わせちゃってるなぁ。
「ミスティ様。ご主人様は時間を気にされているようですが、5層は現状、どの程度不味い状況か分かりますか?」
「ん。詳細は聞いてないけど、今潜ってるチームの戦力からして、休みながらの討伐速度なら、まだ数日分の猶予はあったはず。そこにエスが到着すれば巻き返せる。だから1日遅れた程度なら心配ない」
「……こう言っちゃなんだけどさ、エス君が丸一日足止めされていた事を考慮すれば、マップ機能を使うまでもなく、次層への移動用のゲートが出現するタイミングはある程度読めた訳なのよね?」
「それは言わないでくれアキ。俺もマップを使って残り時間が出た時、それは思ってたから……」
「あ、ご、ごめん」
「旦那様、よしよしですわ」
「ショウタさん、ハグしておきますか?」
「しておく……」
悲しい現実を忘れる為、俺は再び彼女達とハグをしあうのだった。
そうして待つ事5分ほど。まずはエスがやって来て、その背後には大量のプライドコンドルがやって来ているのが見て取れた。
「兄さん、ビッグニュースだよ!」
「どうした、嬉しそうだな」
「ああ! 例のドロップアップ、コイツらにも適用されていてね。今まで見たこともない食材が追加されていたんだ!」
ほぉ。それは気になるな。
『ポポー!』
そうして話していると、エンリルも戻って来た。
「よし、まずは殲滅を優先する。100体手前で討伐の手を止めてじっくり確認しようか」
そうして蹂躙が始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『ゴァァ!』
エス達が連れて来た数はきっかり50体ずつであり、1体を残して殲滅が終わった。今の時点で、既に周辺には無数のドロップが広がり、エンリルとアイラが協力して回収作業に励んでいてくれているが、その中には確かに見たことのない食材……。もとい部位が転がって見えた。
もう目視しちゃったし確認するまでもないかもだが、一応見ておくか。
*****
名前:プライドコンドル
レベル:78
腕力:700
器用:750
頑丈:380
俊敏:1000
魔力:500
知力:700
運:なし
【
【
★【
装備:なし
ドロップ:プライドコンドルの風切り羽根、プライドコンドルの腿肉、★プライドコンドルのソリレス
魔石:中
*****
プライドコンドルの『風魔法』が吹き荒れる中、俺たちは雑談に興じていた。
「ソリレスって、希少部位だっけ?」
『ゴァァ!』
「はい。もも肉の付け根にしかない貴重な部位ですね。鶏からはピンポン玉くらいのサイズしか獲れない事を思えば、このモンスターのサイズ感なら、テニスボールくらいのサイズしか獲れないはずなんですよ?」
「でもこれは、100グラムくらいはありますわ!」
マキの手には、輝く鶏肉があった。比喩ではなく、実際に輝いているのだ。
ドロップ時の質向上だけでなく、量が増えるというのは、そういうことなのだろう。
「まあそこは、ショウタ君クオリティよね」
「そうですね。ご主人様ですから」
「ん。エスが倒したら爪先くらいになりそう」
「はは、そもそも落とさないんじゃないかな」
「いやー、どうだろうな? ドロップアップもついてるんだから、エスでもドロップさせられるかもしれないぞ」
「それは夢が広がるね」
『ゴァァ!』
奴の『風魔法』は全てエスによって完全妨害され、こちらに攻撃が一切飛んでこない。とはいえ、いい加減うるさくなって来たし、そろそろ倒しておくか。
「おりゃっ!」
プライドコンドルを斬り捨てると、煙が吹き出し始めた。さーて、今度はちゃんと真正面から倒すぞー。
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