ガチャ531回目:お空へGO
「ふぅ、こんなところか」
周囲を取り囲んでいたプライドコンドルの群れを一掃した俺は一息入れた。
「流石だね兄さん。手にしたばかりの新種の武器を、こうも容易く自分の物にできちゃうなんて」
「まあスキルのおかげもあるが、その根本はうちの彼女達の教えのおかげだな」
『ポポ!』
アイテム回収を終えたエンリルが腕に留まり、なでなでを催促してくる。もちろん頑張ったご褒美はあげるつもりだったので、俺は撫でながら魔力を補給してあげるのだった。
『ポ~』
「それにしても、射程無限の鞭か。兄さんの認識次第とはあるけど、これと『視界共有』を使えば実質どこにいようと兄さんの攻撃が届くんじゃないのかい?」
「……いや、実はそう便利なものでもないんだよな」
「そうなのかい?」
「ああ。射程無限とあっても、これは形式上どうしても鞭という枠からは外れられないんだ。だから、攻撃すればどうしてもしなるし、槍みたいに突き刺すことはできない。だから、目標が遠い位置にいると、真っ直ぐに攻撃を飛ばすことも難しいんだ」
「なるほど……」
「それに、そんなに離れている相手なら、俺には他にも遠距離の手段があるし、そうでなくてもミスティがいるからな。今の所、彼女が見せてくれる形態は二丁拳銃だけだけど、スナイパーライフルみたいな形態もあるんだろ?」
エスは何も言わずにニッコリと微笑んだ。
この微笑みにファンの子達は卒倒したり黄色い声をあげたりするんだろうけど、残念ながら俺にそういうのは効かない。
多分、ネタバレを嫌う俺のことを察して、何も言わないでいてくれてるんだろう。まあ、無いなら無いでちゃんと否定はしてくれるだろうから、あるんだろうなぁとは思う。
「んで、今ので何匹くらい倒したっけな」
「うん、37体だったかな」
『ポ!』
「そうか、じゃああとは地上に降りて戦うかな。悪いけど、エスとエンリルにはこの『視界共有』で見たマップを参考に、良い感じに連中がいるエリアで注目を集めて連れて来てくれるか? そんでこの下に持って来てほしい」
「ああ、任せて」
『ポポ!』
「そんじゃよろしく!」
地上に降りて彼女達に情報共有すること数分、まずはエンリルが戻ってきた。その背後には大量のプライドコンドルの群れがひしめき合い、その数は目視では判断しづらかったが、マップを見ていたアイラが正確に数を提示してくれる。
「ご主人様、全部で28体のようです。またエス様は恐らく38体ほど連れておられるようで、こちらの戦況を読んでかゆっくりとこちらに向かって来ております」
「了解。まずは全員で迎え討つぞ!」
「「「「はい!」」」
「「了解!」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
全てのプライドコンドルを片付けた俺たちの前で、煙が膨れ上がりすぐに中からレアモンスターが出現した。
*****
名前:シックネスコンドル
レベル:180
腕力:1600
器用:1800
頑丈:800
俊敏:2000
魔力:2000
知力:1600
運:なし
【
【
★【
装備:なし
ドロップ:シックネスコンドルの毒爪、シックネスコンドルの毒腺
魔石:極大
*****
「滅茶苦茶顔色の悪いコンドルが出たな。しかもレベルがたけぇ」
『ガア!』
あとはレアモンスターの例に漏れず、図体がデカいのが特徴か。尺度が縦も横もメートル単位になってくると、まるでダチョウみたいに見えてくるな。スキルは順当強化だが、面倒なのは魔法か。空中から範囲魔法を連発されたらたまったもんじゃない。
大地の上で気怠げに立ち上がった奴は、周囲を見渡し俺達を認識した途端、翼を広げた。どうやら飛び上がるつもりらしい。
「させるか!」
奴の直上に向かって飛び上がり、『虚空歩』を使って空気を蹴り急降下する。そして今まさに飛び立とうとしていた奴の背に蛇腹剣を突き刺した。
『ガアッ!?』
「ぐっ、暴れんな!」
『ガアアアッ!!』
「うおおっ!?」
『頑丈』の数値が低い割に『シックネスコンドル』はガッツがあるようで、剣が突き刺さったまま空へと羽ばたいた。俺を乗せて。
「ショウタさん!」
「ショウタ君!」
彼女達の心配する声に返事をする間も無く、俺は強制的に空の旅へと連れて行かれてしまった。
そして奴は身体を回転させながら滑空し、俺を振り落とそうと暴れ回る。だが、いくら暴れても俺が手を離さないもんだから、強硬策に打って出た。
『ガア! ガアア!!』
「うおっ! どわっ!」
器用にも、背に乗る俺に向けて『風魔法』や『病魔の息』を使って来たのだ。前者は『超防壁』で完全無効化したが、『病魔の息』は状態異常攻撃だ。2種の防御スキルは意味をなさず貫通し、俺に直接振りかけられた。
俺には『状態異常耐性』と『毒抗体Ⅳ』があるおかげか、腐敗した肉のような匂いに顔を顰めさせられたくらいで、悪い影響はなさそうだった。
『ガア! ガア!!』
「……ふむ」
そしてそれを繰り返し何発も受けていると、俺も慣れて来て驚きを感じなくなっていた。魔法を何発受けようとも『超防壁』が破られる心配はなく、状態異常も起きる気配はない。冷静になった俺は、攻撃を受けながらも落ち着いて対処を考え始めた。
いきなり飛び上がった時は驚いて思考がまとまらなかったが、今ならこいつを倒す手段がいくつも湧いて出て来た。
例えば今、剣がぶっ刺さったこの状態で『紅蓮剣』を使えばどうなるだろうかとか、蛇腹剣を鞭状態に変化させたら、奴の体内をズタズタにできるんじゃないかとか、このまま『閃撃』を使ったら技は発動するのかなどなど。
対処法のネタが尽きることはなかった。
「さあて、どうしてやろうか……」
俺は悪い笑みを浮かべた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます