ガチャ530回目:空の獲物
俺は新たに入手した『魔導技師』の力を試しながら山の頂上へと向かう。
「ふむ……。細かい動きが負担なくできるようになったかな?」
今まで『魔導の御手』は、クピドの弓を扱う予備戦力のような立ち位置にいたけど、狙いは結構大雑把だったからな。まあそれでも発射速度は限りなく早かったし、『紫電の矢』を使った時は雷のような光の速さで到達するから、狙いが多少ズレても相手に回避される事はほとんど無かった。
けど、だからと言って大雑把な狙いでは弱点を狙い撃つなんてシビア過ぎて狙えなかったし、適当に連射させるくらいしかできることはなかった。
けど最近は蛇腹剣をゲットしたからか、『魔導の御手』が持てる武器の種類にハイ・ミスリルソード+5が1本追加されたんだよな。こっちも精密な動きができるようになれば、武技スキルを扱えるようになるかもしれない。流石に遠隔で『無刃剣』を出すには、技量とかが色々と足りてないだろうけど。
「パワーアップですのね!」
「ん。心強い」
「……」
アヤネとミスティがはしゃぐ中、アイラが意味深に微笑んでいた。いや、微笑むというかニマニマというか……。
俺だって、アイラが考えてることくらい分かるぞ。就寝前のアレのことを考えてることくらい。
「俺は直接触る方が好きだから、そっちではそんなに使わんぞ」
「おや、私は何も申しておりませんが」
「その顔が雄弁に語ってるんだよ」
まあそれはさておき、次に考えるべきは空か、地中かだが……。
「エス、悪いが空の連中も付き合ってくれるか」
「構わないよ。ここまで来たら後は誤差みたいなものさ」
「おう、ありがとな。んで、空の連中はずっと飛びっぱなしなのか? マップには映ってるが、今まで一度も目視できてないんだよな」
「ああ。ここの階層は限界高度が果てしなく高く設定されていてね。連中は普段雲よりも上にいるんだ。だから目視確認は難しくて、この階層で実際に空のモンスターを見たことがあるのは数えるくらいしかいないんだよ」
存在自体がレアなモンスターなんだな。
「じゃあエンカウントするには、直接昇る必要があるのか?」
「それなんだけどね。空のモンスターは自分たち以外に飛んでる存在がいると、許せない性質みたいでね。地上から30メートル以上浮かび上がると、周辺にいるモンスターが感知して襲いかかってくるんだ。感知範囲もかなり広い上にしつこくてね。一度襲われたら、獲物が死ぬか第三層から脱出するまで執拗に追ってくるんだ」
「うへー」
「あと、連中に見つかって倒せず逃げ出した場合、第三層のスタンピード進行度が爆上がりするって話もある。事実かどうか定かではないけど、信憑性は高い話だから、ここでドローンを飛ばしたり『空間魔法』で浮かび上がるのはタブーとされてる」
「お前の場合は?」
「僕はほら、自分で対処できるし。高さの調整だって自由自在だからさ。何も問題はないよ」
それもそうか。んじゃ、釣り出し役はエスに頼むか、それとも俺が直接行ってみるか……。いや、どっちもだな。
「エス、エンリル。とりあえず3人で上に行こうか。ある程度戦ったら撮影もあるから降りて戦おう」
「わかった」
『ポ!』
「わたくし達はお留守番ですのね」
「ショウタさん、いってらっしゃい」
「気を付けるのよー」
「ん。3人なら大丈夫だと思うけど、危なそうならここから援護する」
「ご武運を」
「ああ」
彼女達を置いて、俺は空へと駆け上がった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『虚空歩』と『空間魔法』を駆使して空へと昇っていると、周囲から強い敵意を感じた。
『ゴァァ!』
『ゴアアッ!!』
「お出ましか」
*****
名前:プライドコンドル
レベル:78
腕力:700
器用:750
頑丈:380
俊敏:1000
魔力:500
知力:700
運:なし
【
【
★【
装備:なし
ドロップ:プライドコンドルの風切り羽根、プライドコンドルの腿肉
魔石:中
*****
雑魚の割にはスキルが豊富だな。それに『悪食』持ちか。
コンドルは確か死肉をむさぼるって話を聞くし、そう考えると『悪食』があるのも納得だな。んで、死肉ばっか食ってるから『病魔の息』もしっかりあると。なるほどね。
しっかし、そんな奴のもも肉なんて……食えるのか??
「エス、こいつらの肉って……」
「ああ……。誰も倒そうとしないし、僕なんて『運』があれだろう? だから、誰もゲットしたことが無いんだよ」
「そう来たか……」
『ポ』
そうこう話している内に、プライドコンドルの群れが集まって来ていた。
連中、いきなり襲い掛かるでもなく様子を見るかのように俺達の周りをグルグルと回っている。意外と慎重だな?
「モンスターだから顔を覚えられてる訳じゃないだろうけど、連中は自分よりも実力が高いと判断した場合はこうなるみたいなんだ」
「ほーん」
『知力』が高いだけはあるな。まあでも、いつまでも周辺をウロチョロされてても何も進まないし、さっさと倒すか。
「蛇腹剣」
ジャラリと音を立て、蛇腹剣は鞭形態へと移行する。そしてこの鞭は、俺の意志一つで射程が何処までも伸びるのだ。周辺で様子見をし、射程外だと思っているこいつらの隙を突く事など造作もない。
「おりゃっ!」
『ゴァ!?』
『ゴァッ!』
蛇腹剣がしなり、複数のプライドコンドルに激突する。その攻撃には斬撃、打撃、引き裂きなど複数の効果が同時発生し、モンスターは血煙と共に本来の煙を発生させながら消えていく。
『ポ! ポ!』
そして散らばり落下して行くドロップアイテムを、エンリルが巧みな操作技術で回収し『魔法の鞄』に収納して行った。
「問題なさそうだな。このままどんどん狩るぞ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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