ガチャ527回目:時代劇
さて、いつまでも瀕死の英雄様を放っておくのもなんだし、はやく介錯してやろう。
俺は恨めしげに睨んでくるアドロンに近付き首を切り落とす。まだ何か言いたそうだったけど、結局やつは何も言葉を発さずに消えていった。
【レベルアップ】
【レベルが156から258に上昇しました】
それなりのレベルではあったけど、魔石は極大だったし、そこまで大幅なレベルアップには至らなかったな。
ま、正々堂々と戦えばそれなりに良い勝負ができたかもしれないけど、『決闘』持ちは本当に珍しいからなぁ。今回みたいな手を試せる相手は今後もすぐ巡り会えるとは思えないし、仕方なかったのだ。
「すまんアドロン。安らかに眠れ」
俺は心にもない言葉を並べていると、奴の死骸から溢れ出した煙が消えていき、ドロップアイテムが散らばった。
「ご主人様もなかなか、悪辣な事をなさいますね」
アイラがくすりと笑いながら素早くアイテムを回収して行く。こいつ分かってて言ってるだろ。
「あれは事故だろ。狙ってやったわけじゃないから許してほしいね」
「ん。結界破壊の結果は誰も想像できない」
「そうですわ。旦那様は気に病むことありませんわっ」
「そうそう」
慰めてくれるミスティとアヤネを撫でていると、アキとマキが参加して来た。
「でもショウタ君、あのレアモンスターの事あんまり好きじゃなかったから、あんな結果になったこと全然悔いてないでしょ」
「うっ」
「ふふ、そうですね。まあいっかって顔に書いてますよ」
「むぅ」
バレてたか。
アキとマキは全部お見通しみたいだな。
「ああアイラ、他のドロップはさておき、『英雄の証』だけ出しといてくれ」
「畏まりました」
他のドロップは良いとして、これだけはステータスを見た時から気になってたんだよな。
「『真鑑定』『真理の眼』」
名称:英雄の証
品格:≪遺産≫レガシー
種類:特殊遺物
説明:リザードマンヒーロー・アドロンが所持していた英雄の証。一部のリザードマンは、この証を見ると膝を折り、頭を下げたりアイテムを献上してくれたりする。
「……水戸黄門かな?」
「この印籠が目に入らぬか! ってやつ?」
「あー、なんかそんな感じの」
「確かに物は印籠だったけど、決め台詞は紋所じゃなかったかな?」
「いや、なんでエスの方が詳しいんだよ」
エスは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「いやあ。日本にいる時、兄さんが関西エリアに行ってる間、暇だったから時代劇を観ていたんだよね」
「ん。忍者、カッコイイ」
ミスティも観てたのか。まあ気持ちは分かるが。
「って、話がずれたな。この証は、わざわざレアⅡがくれたんだ。何か意味があるはずだと思いたい。まずはその辺の雑魚モンスターに見せて反応が見たいな」
俺はマップを開き、周辺状況を確認した。
しかし、件の時間制レアモンスターの姿は無かった。
「エス、例のモンスターってどの辺に出るんだ?」
「ああ、それなら山の中腹辺りだね。マップでいうとこの辺かな」
「再出現時間は?」
「大体4時間前後といったところかな。このモンスター、出現場所は大体同じだけど、その後は結構動き回るから、本来なら一度見失ったら探すのは厄介なんだ」
「エスはそのモンスターを見たことがあるんだよな。そいつは、『認識阻害』のスキルを持ってないんだよな?」
「ああ、持ってないはずだよ。だから現れさえすれば、マップにも表示されるはずさ」
エスの情報だから信じてやりたいところだが、問題はエクススキルに、似たような性能の特性があった場合だよなぁ。エスの運のなさは証明されたばかりだし、どうなることやら。
とにかく、この証を使いながらその出現ポイントを目指して移動して行って、そこでガチャを回すとするかな。そうと決まれば、さっそく移動開始だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺達はマップを視ながら山の中腹へと移動を開始すること数分。ようやくリザードマンと遭遇した。相手の数は3体。リザードマンの集団としては比較的よく見る数だった。
『シャア!』
『シャアア!』
威嚇か仲間達への呼びかけか分からないが、連中は槍を携えながら突撃してくる。
そこに俺は突出して『英雄の証』を突き出した。これで何の効果も無かったらお笑い種と言うか、槍でめった刺しにされるところだが、ちゃんと保険は掛けてある。
現在俺は、『金剛外装Ⅳ』と『超防壁Ⅴ』を同時併用している。このスキル、ちゃんと別枠として発動ができる上に、出現位置も
もしも『超防壁Ⅴ』『金剛外装Ⅳ』の順で発動すれば、『超防壁』が内側に発動し、逆であれば『金剛外装』が内側に来るのだ。やっぱり安心できる並びは、『金剛外装』が内側で、雑多なダメージを全て吸収できる『超防壁』が外側に来るべきだろう。
現状、『超防壁』は透明な壁になっていて、『知覚強化Ⅲ』を取得した俺やアイラをもってしても、発動しているかどうかを目で知覚する事はできないでいる。だけど、薄い膜のようなものが実在しているのは確かなようで、第六感というか、感覚でそこにナニカがあるのは感知できていた。
そして防御性能を実験した感じ、うちの彼女達でもミスティの通常弾ならば1発は耐えてくれる様で、俺に至っては俺特製の貫通弾でさえ2、3発は耐えてくれる性能だった。
これなら正直、そこらの雑魚からの攻撃はすべて無視してしまっても構わないかもしれない訳だ。
『シャア!?』
『シャア……!!』
そんな事を考えていると、リザードマンが間近にまで迫っていたが、そこにあったはずの敵意は霧散しており、スライディング土下座のような形で平伏して来た。
『シャア……!』
『シャアア……!!』
この懇願する様子……。たぶん、俺に槍を向けた事を謝っているのかもしれない。
凄いな『英雄の証』。本来敵対するモンスターをこんな風にしてしまえるとは。まあ、こんな風に平伏する相手を斬り倒せるほど俺も鬼じゃないし、どうしたもんかな……。
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