ガチャ524回目:彼女達の介抱
その全貌が露わになった第三層の地図を全員がのぞき込む。
中央に鎮座する山、そこに登り詰める為の山道や、少し外れた場所に出現するモンスターの赤丸。山の中に広がる洞窟に、その中に無数に蠢く赤点の群れ。そしてその奥には常にリアルタイム映像が反映されているかのように、白く輝くワープゲートが映り込んでいた。
あとは山道でも地中でもない完全な空の上。そこにも、全く別の赤点が動いているのが確認出来た。どうやらこの階層は、地上・地中・上空の3カ所にモンスターが散らばっているようだな。
「ん。ショウタのスキル、やっぱりすごい。696協会が2年間くらいかけて調べ上げたどんな情報よりも価値がある」
「そうだね。地下の存在もそうだけど、他2箇所のワープゲート出現地点も、明確に示されている」
そう言ってエスが示す場所は、位置関係的に先ほどまでエスが待機していたミステリーサークルっぽい場所で間違いないだろう。そこをタップすると以下のような表示がされた。
【第三層の試練B】
【次の稼働まで 残り06:46:12】
試しに今現在開いているゲートを叩いてみれば……。
【第三層の試練A】
【稼働終了まで 残り06:43:08】
「3分ほど差があるのは、多分クールタイム的な何かがあるのかもな」
ああ、こういうことも自分で調べたかった……。ぐぬぬぬぬ。
「ショウタさんっ」
突然マキに抱き寄せられ、顔面が彼女の胸の中へと埋もれてしまう。俺はそれに抗うことなく深呼吸をした。……居心地の良いフローラルな香りに、ささくれ立っていた感情がなだらかになっていく。
「次あたしねっ」
そう言ってマキの位置にアキがやってきて、彼女の胸元に吸い込まれる。それをアヤネ、アイラの順に変わっていき、何に憤っていたのかも忘れるくらい心が落ち着いて行った。
自然と気持ちが切り替わり、気が和らいだ俺は、改めてもう1度アイラの胸元で深呼吸をするのだった。
「落ち着かれたようですね」
「ああ……。やっぱ皆に抱きしめられると安らぐな」
「お求めでしたらいつでもどうぞ」
「皆ありがとう」
彼女達にはこっちからハグしなおして感謝の気持ちを伝えていると、ミスティが素直な気持ちを吐露した。
「ん。皆すごい。ショウタ、一瞬で落ち着いた」
「愛の深さに時間は関係ありませんが、相手が望むものを理解するには過ごした時間の長さが必要ですからね」
「まさに、愛の成せる技だね」
「ん。私もその域に達したい」
「ご主人様と共にあれば、いずれ到達できますよ」
……さて。何の話だったか? 気持ちがなだらかになりすぎて、記憶が飛んだような感覚に陥ってしまった。
頭を捻っていると、マキがそっと手を重ねてくる。
「ショウタさん、この階層はどう攻略して行きますか?」
「……ああ、そうだった。ワープゲートへの到達方法を考えるんだったな」
まだ頭がふわふわしてる気がしたので、頭を振った。
「そうしてくれるとありがたいかな。まあ、あと6時間ほどで次の階層へのゲートが開くみたいだけど」
「ん。やっぱりエスの不運が炸裂してて、32時間を引いてたみたい」
そういえば昨日は、今の時間よりも少し早くにエスが出発したんだっけ。そっから24時間以上経過して、残りが6時間ちょっと。……うん、確かに不運炸裂してるわ。
「せっかくなら、未発見のゲートをくぐっておきたいよな。んで、この山の中の洞窟が何処と繋がっているかだが……」
全員で改めてマップを見るも、どうにも物理的に繋がっている様子が見えなかった。これ、どこから入るんだ?
「この洞窟、完全に切り離されているわね」
「ですが、第三層のマップとしてここに映り込んでいる以上、この洞窟も第三層という枠に収まるエリア。そう考えられますよね」
「特別な入口があるのでしょうか?」
「このマップにも隠し階段のような類すら映り込んでいないということであれば、ここに移動する方法は特殊な手段が必要かもしれませんね」
「ん。階層内で繋がるような特殊なワープゲートとか?」
「それも面白そうだけど、これは兄さんのスキルだ。次層へのワープゲートの詳細まで暴き切っているんだから、現時点でそういった類のものが表示されていない以上、ワープゲートとは別の何かがあるとみるべきかもしれない」
「となると一番怪しいのは、洞窟の中で地上に一番近い位置にあって、なおかつワープゲートから一番離れた位置にある、ここだな」
俺はマップの中に映り込んだ洞窟の最上部。山頂の丁度真下にある空間を示した。
「ここってさ、例の石碑がある場所の真下だよな?」
「ああ。間違いなくね」
「なら、ここにヒントがあるかもしれない。だから、今から向かおうか」
さーて、目的は決まった。
あとは……そうだな。道中地上にいるモンスターを、さらっと100体討伐しちゃうかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
最初にエンカウントしたのは、槍を持ったトカゲ人間……リザードマンだった。
*****
名前:リザードマン
レベル:65
腕力:700
器用:650
頑丈:480
俊敏:700
魔力:300
知力:300
運:なし
【
★【
装備:リザードマンの鉄槍
ドロップ:リザードマンの革、リザードマンの腿肉
魔石:中
*****
『シャアア!』
「ほぉ、人型モンスターか。珍しいな」
今まで戦ってきた人型はゴブリン、オーク。レアでは騎士と天使ぐらいだったから、戦う機会があまりなくて俺の中で人型のモンスターは、レアモンスター以上にレアなイメージだ。
レア以外の人型は、今のところ獣人っぽいのにしか出会ってないかな?
「こいつらは全員槍を持っていて、集団で襲い掛かってくるから乱戦になりやすいんだ。だからこの階層を主戦場としてる冒険者達はベテランが多いかな」
「なるほど。赤くはないが……」
「ああ、レッドとかグリーンとかは2層までだよ」
「なんだ、そうなのか」
目の前にいるリザードマンは全部で4体。マップはあとで確認するとして、地上にいるモンスターはどいつもこいつも複数で群れて行動していたから、下手しなくても山の地表にいるモンスターは全部こいつらかもしれないな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます