ガチャ523回目:久々の機能利用
「やあ兄さん。昨日ぶりだね」
「そだな」
気不味そうなエスを迎え入れ、改めて気になることを聞くことにした。
「あの待機してたとこは、あの場にワープゲートが出現するのか? それとも、待機することで移動するタイプなのか?」
「後者だね。あそこは上から見るとわかるんだけど、ミステリーサークルのようになっていてね。その円の中で30分待機すると、移動できるんだ。まあ昨日から何度も出たり入ったりしてたけど、一向に移動できなかったけどね」
「ほーん、目に見えないタイプか。しかも出入りするって事は、出現後に改めて入りなおさないと30分カウントがされない面倒な仕様と。……ところで、ダンジョンには次層へ移動するためのヒントみたいなのがあるって以前言ってた気がするけど、あれって今もあるのか?」
「ああ、あるよ。実はそのヒントというのがちょっとクセのある内容でね。山の頂上に碑石があって、そこに刻まれてるんだ。最初は3つあったんだけど、今では1つしか残ってない」
ダンジョンの物は例え破壊されても自動で修復される。にも関わらず、今は1個しかないということは……。
「その碑石は各ワープゲートに対応していて、利用者が現れ始めると崩壊するのか?」
「正解だ。流石兄さんだね」
「どうりで第一層や第二層ではヒントらしき物を見かけなかったわけだ」
もう消えてなくなってるんなら、見つけられるわけもないな。
「碑石の内容は写真に撮ってあるけど、見るかい? それとも直接見ておく?」
「んー、直接は後でじっくり見るよ。だから内容だけ教えてくれ」
エスは現状、なるべく最速で第五層に行かなきゃいけないからな。俺の探索に付き合わせるわけにもいかないし、問題は解決しちまおう。と言っても、ここの協会や冒険者達が何年経っても解けていない難問を、ぽっと出の俺が解けるかどうかはわからんが。
「分かった。それじゃ言うね。『昏き中に輪は眠る』」
「……ん? それだけ!?」
「ああ、碑文はどれもこれも非常に短くてね。今までもそうだったよ。ちなみに文面にある『輪』というのはワープゲートのことを指すよ」
「ほーん。昏き中、ねぇ」
「何か思いつくかい、兄さん」
「つってもまだ、俺はここのマップの詳細を知らないしな……」
だから思いつきというか、当てずっぽうになるんだが。
「あの山に洞窟や洞穴はあるのか?」
「無いんだよね、これが困ったことに」
「んじゃ、山の麓付近に、空から見ても見えないけど近付く事で発見できる隠された洞窟なんかは……」
「『初心者ダンジョン』で兄さんが見つけたタイプだよね。その手のものも見つかってないんだ」
「山の麓には多少の森があるみたいだけど、それの日陰とか」
「その手の場所は多くあるけど、目印なしじゃお手上げだね。まあ、今のところそういった場所からの発見報告は無いかな」
となると後は……。
「地面の下は?」
「地面の下……? それはどういう……」
「アリのモンスターとかいないのか? そいつらの巣穴が地面の下や山の中に広がっていて、その奥にあるとかさ」
「……その発想はなかったな。けど、残念ながら巣穴らしきものは洞窟と同様に探されてるはずだよ。それでも見つかっていないのなら、無いんじゃないかな。そもそも、この階層にいるモンスターの数は2種類だけなんだ。その中にアリのような地中で生活するタイプのモンスターはいないよ」
「そうは言うが、ここはダンジョンだぞ。『ハートダンジョン』の第三層や第四層で見たように、岩の中に隠し階段があったりするパターンもあるだろう。全員、一つ一つの岩に直接触れて確かめたことはあるのか?」
「……それは、ないね」
「だろ? それに、ここまで第一層と第二層で3に関連するモンスターの紋章を手にして来たんだ。碑石も3つあったんなら、モンスターも3種類いる可能性が高い」
「なるほど……。でも、階層スタンピードの時にそれらしいモンスターは見かけなかったよ?」
「それはこのダンジョンのやりそうなことじゃないか。未発見のモンスターは参加させないとかさ」
「ああ……。それもそうだね」
「まあ、それが答えか手っ取り早く調べる方法はあるんだが……」
ネタバレをされたくないから今までは封印していたが、今回ばかりはスタンピードが絡むからなぁ。わがままも言ってられないよな……。
でもなぁ……。
「ぐぬぬ……」
こんな風に判断に迷う時、大抵は数十秒で即決している俺も、この階層での楽しみが自分の手で奪われると言う現実に、躊躇いが生じた。結局即決はできずに、『思考加速』と『並列思考』を使ってまで、実時間で数分ほど悩みまくった末に、俺はようやく決断を下した。
「……マップ機能、使う」
苦渋の決断を下した俺を、彼女達やエンキ達が慰めてくれる。
「ん。ショウタ、辛そう」
「す、すまない兄さん」
「エス。一応確認するが、第四層でも同じことになるなんて事はないよな?」
このままエスを第三層から突破させて、俺が第四層に到着した時に、またエスがしょんぼりしてたら目も当てられないと言うか、割とガチで凹む自信があるぞ。
「ああ、その点は大丈夫だよ。第四層は石碑が全部で4種類あって、残存数は2。未発見の2つは連続して発生する仕組みになっていて、そこは昨日の段階で通過していることを確認済みなんだ」
「第一層と第二層は2種類が交互に来てたけど、第三層は3つ、第四層は4つで順番通りのローテーションなのか?」
「そうだよ」
「……なら、問題はないか。ちなみに、第二層のスパンは16時間から24時間って話だったが、第三層は24から32時間か?」
「その通り。8時間ずつスパンが伸びるんだ」
となると、第四層は32時間から40時間か。しかも、第四層は未発見が2つ連続で来るってことだから、最大で80時間第五層への道が封鎖されてるってことだ。
それは、何つーか……大変だな。
まあでも、そこまで明確に分かってるなら、判明している2つのワープゲートの始点と終点さえ観測できれば、いつなら確実に通れるかもある程度明確になるわけだ。
「んじゃ、使うぞー」
マップの暗闇になっている部分に触れると、確認画面が出て来た。
【未確定地域の情報を探査しますか?】
【YES/NO】
この確認も久々だな。基本的にダンジョン探索でマップを全部埋めて、完全に調査を終えて満足するまでは使う気になれないんだよな。満足しても使わないことだってあるし。
「YESだ」
【探査対象の空間情報を計算中】
【探査対象に地下空間の有無を確認中】
【探査対象に生息するモンスターを観測】
【探査対象の知覚妨害機能を検査中】
【探査対象エリアの魔力の流れを観測】
そして真っ暗だったマップに、第三層の全貌が表示された。その中には、山の中に広がる地下空間も表示されており、大量のモンスターを示す赤点の他、ワープゲートの存在すら表示されていた。
「やっぱこのスキル、チートだわ」
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