ガチャ516回目:3種合体

「ご主人様」

「ん?」

「本来であればガチャの前に確認すべきでしたが、ドロップアイテムの吟味は後に回しますか?」

「そうだな。後半戦はさっくり片付けてさっくり終わらせよう」

「畏まりました」


 テントを片付けた俺たちは、早速行動を開始した。まずは普通の森で緑のトカゲと100連戦。こいつらはスタンピード進捗が完全に初期化された影響か、レベルは35だった。その上、背中の岩が緑だから、余計にカメに見えて仕方がないな。

 そして、構成スキルに変化はなかったが、ドロップに追加があるようだった。


「ロックリザードの上肉……。レッドの時には無かったな」

「ん。高級品。まだレストランでも出て来てたけど、全部冷凍の」

「ほーん」

『プルプル』


 イリスは言わずもがなだが、ミスティも食べたそうによだれを我慢しているような顔をしている。やっぱ解凍肉より鮮度の高いナマの方がいいよな。

 そうして上肉を大量生産しつつ出現したレアは『グリーンロックタートル』。名前に変化はあれど、レベルもスキルも変化なし。ドロップ品の色に関する別物と、こっちも上肉がドロップした。


【レベルアップ】

【レベルが38から131に上昇しました】


 レベルアップは嬉しいが、このタイミングでこのレベルになると、キメラ戦までにガチャは難しそうだな。

 出現した煙は前回同様俺に追従するように動いて来たので、そのまま紅葉地帯へ移動を開始。そして出会った通常モンスターは、グリーンサップリング。

 こっちのレベルは37で、さっきは確認していなかったがサプリング系統の更新後レベルは37~42らしい。やはりこちらもドロップ品に変化はなく、見た目も何故かレッドと変わらず……と思いきや、紅葉の中にいくつか緑の葉が混じっていた。こちらも簡単に100体討伐が完了。レアモンスターが出現した。

 出て来たのは、紅葉地帯には不釣り合いな『グリーンメイプルトレント』。その名の通りこっちは完全な緑の葉を持つ樹の怪物だった。

 レアはスタンピード進行状況に関係なく、レベルは固定らしく、こいつのレベルは前回のレッド同様110。特に苦戦することなくこれを撃破。


【レベルアップ】

【レベルが131から132に上昇しました】


 そのまま霧の森へ移動し、エンカウントしたのはグリーンミストハンター。コイツは他2体と違って見た目に変化はなかった。レッドミストハンターも、別に赤い霧を纏ってた訳じゃないからなぁ。

 レベルは47で、こっちは弱くなっても雑魚としてみるには他とは隔絶した強さを持っていた。ちなみにレベル幅は広く、強さは47~57らしい。

 レベル幅が広いおかげか、倒すのは厄介だがスタンピード進捗チェックにはもってこいのモンスターだったようだ。

 まあ、こいつのそんな役目も今日で終わりだ。100体討伐を行い、レアモンスターを出現させる。


『グオオオオ!』


 『グリーンミストタイガー』は、やっぱり緑色の毛皮を纏ったトラで、スキルもステータスも同じ。今回は討伐方法もわかっているので、アヤネ達に霧を吹き飛ばしてもらい速攻で撃破する。


【レベルアップ】

【レベルが132から142に上昇しました】


 やっぱりこうなったか。

 覚悟していたこととはいえ、やっぱ足りないのは辛いよなぁ。


「あの、旦那様。素朴な疑問なのですが、最初からこっちを攻略すればガチャ1回分は回せたのではありませんこと?」

「まあそうなんだけどさ。さっきキメラを倒したときに、強化状態って出てたでしょ? アレは霧地帯で湧かせて霧の恩恵を受けたキメラと戦って倒せたからこその表示だと思うんだよ。だから、ここ以外でキメラを湧かせても、本来のポテンシャルが発揮できない状態での戦闘になると思うんだ。そしたら、報酬とかそういうのが減りそうな気がしてな」

「そうなんですのね」


 そんな風に話していると、トラの死骸は爆発して中から溢れ出た煙が2つの煙と合流を果たす。あとはここから緑のキメラが現れれば、今日のミッションは完了――。


『ゴトンッ』


 煙が一塊となり、中から現れたのは期待していた怪物などではなかった。


「……へ?」


 それは、レリーフ入りの宝箱だった。

 このタイプの宝箱を見るのは本当に久々ではあるが、まさかこのタイミングで拝めるとは。そして煙が宝箱に変貌するのは、通算2回目の出来事でもあった。


「これは、予想外の結果だな」


【特殊条件を満たしました】

【スタンピード進行が一時的にロックされます】


「通知も出たし、これで終わりか」

「この結果を見るのは久しぶりですね」

「懐かしいですわ」

「この仕様のモンスターがほとんどいないんでしょうね」

「ガチャのタイミングを無くしたのは残念だけど、面白い結果ではあるわよね」

「まあそうだな」


 うん、アキの言うように、ここは前向きに捉えるか。

 そうしてこの現象に対して既知な俺たちとは違い、この現象が初めての兄妹は頭にクエスチョンマークを浮かべていた。


「ん。ショウタ、これ何??」

「兄さんは過去にも経験があるのかい?」

「ああ、そうだったな。以前も特殊な条件で出現するモンスターを狩った際に、レアモンスターの代わりに宝箱が出たことがあったんだ。その時は『管理者の鍵』の破片だったんだが、今回は恐らく……」


 名称:三種の紋章【Ⅱ】

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:アーティファクト

 説明:特殊モンスター『グリーンロックタートル』『グリーンメイプルトレント』『グリーンミストタイガー』の討伐報酬。696ダンジョンで使用する事で、使用者を含めた周囲10メートル以内の人間全てを696ダンジョンの第三階層へ移動させる。何度でも使用可能。トリガーアイテムとしても使用可能。


「やっぱりか」

「通行証か。どうやらコレも、どこからでも第三層にワープできるアイテムなんだね」

「ん。すっごく楽できる」


 しっかし、三色の次は三種と来たか。この次も3に関する何かが待ち受けているのか……? そして今回は、レッドの討伐は通行証の取得に関係が無いと来た。

 その条件はなぜだ? 第一層は3日もあればレッドまで回るけど、第二層は6日も要するからとかか……?


「ま、ちょっと拍子抜けだったけど、これで第二層は完全攻略した訳だな。皆、お疲れ!」


 気になる事はあるけど、とりあえず皆とハグしたりハイタッチしたりして喜びを分かち合う。


「あ、そういえばエス。明日は一旦お休みって事になったけど、このペースで第五層の方は大丈夫か?」

「ああ。それなんだけど、昨日担当チームの伝令役が帰還していたから確認してみたよ。彼らが言うにはあと持って数日らしい。だから、僕だけ先行しようと思うんだ」

「あー、結構ギリギリだったんだな。タイミング次第ではエスとは向こうで数日後に合流って感じになるのか?」

「そうなるかもね。けど、兄さんの攻略ペースが想定の何倍も早いおかげで、負担はこの程度で済んでるんだ。本当に感謝してるよ」

「ところで第五層のモンスターだけど、過去にスタンピードを起こしたことはあるのか?」

「ああ、1度だけね。それは僕がこのスキルを得て間もない頃に起きた事件なんだけど、あれは紛れもなく大災害だったよ……」


 スキルを得たばかりと言うと、まだそんなに『風』を使いこなせていなくて、強さも今のエスとは比べ物にならないくらい弱い頃か。

 今の時点でも、第五層の脅威を完全に取り除くくらい殲滅するには、エスがやらなきゃ抑えることもままならない状況だ。解放させたは良いものの、対応できる人材が揃っていなければ、そうなるよな……。


「ちなみにその階層スタンピードは、第五層の奴らが暴走することで、第一層までのモンスターが全部巻き込まれる形で溢れて来たんだよな?」

「ああ」

「その中に、レアモンスターっていた?」

「……いや、僕の記憶ではいなかったはずだよ」

「ん。覚えがない」

「ふむ」


 となると、階層スタンピード型は、通常のスタンピード型とは違うって事か。なら尚更、正攻法で攻略するしかないって事でもあるか。


「ちなみにその溢れ出た第五層のモンスターってのは、今のエスからすれば雑魚扱いできる?」

「数が増えれば対処も難しくはなるけど、昔ほど苦戦はしないかな」

「じゃあ俺たちと一緒なら?」

「……割と余裕があるかもね。まさか兄さん……」

「いや、それは最終手段だ。やれと言ってる訳じゃないし、そうなっても対処はするから心配するなって話だよ」

「はは、そうか。ありがとう、兄さんが構えてくれているなら、僕も安心して戦えるよ」

「だからエス、先行するのは良いけどあんまり狩りすぎるなよ。俺の分も残しておいてくれな」

「ああ、任せて」


 さっきはああ言ったが、俺的には階層スタンピードは起きてほしくはない。なぜなら、それをするとスタンピード進行度が若干下がるらしいからな。

 そしたら出現モンスターも劣化するかもしれないわけで。俺としては直前の状態をキープしてくれてさえいるのが望ましいのだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る