ガチャ515回目:溢れるチートスキル

「じゃあ最後に、こいつだな」


 初めてガチャから食べ物と思しきものが出現した訳だが、名前からしてすでに物々しい。サイズや見た目としては巨峰サイズの丸々肥えたサクランボのようだが、これをこのまま丸齧りしろってことなのか?

 まあそれは置いといて、まずは効果の確認からだな。どれどれ……。


 名称:神秘の果実【武器貯蔵庫】

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:スキルの実

 説明:一口で飲み込むことで特殊スキル【武器貯蔵庫】を取得できる神の果実。


 ……んん!?


「これってつまり、そういうことだよな?」

「そういうことですね」

「スキルをコピーできるアイテムの次は、スキルオーブの代替品が出てくるなんてね」

「どういうことですの?」

「つまりこれを使えば、例えご主人様がスキルを覚えていなくても、私達も特殊なスキルを取得することができるという事です」

「すごいですわ!」

「ん。すごい」

「まあでも、スキルの名前からして兄さんが覚えるべきスキルであることは変わりないね」

「まあそうだな」


 今でもメインの剣二刀流の他に、弓と銃とあるし、予備に槍もあるからな。武器管理が楽になるなら覚えていて損はないだろう。


「そんじゃ一口で……」


 説明文にもあるように、噛んだりせずに一気に飲み込む。丸呑みするにはちょっと勇気のいるサイズだったが、不思議と喉でつっかえることなく飲むことができた。

 まるで飲もうとする意思に従って、スキルオーブのように体内に消えていったかのような感じだな。

 その後も特に違和感はなかったが、無事に取得できたという感覚はある。とりあえず使ってみるか。


「『武器貯蔵庫』」


 唱えると、使い方が頭に流れ込んできた。……なるほど、これは確かに便利なスキルだな。

 自分の武器として認識した装備を好きなタイミング、好きな場所に現出・収納を可能とするスキルで、言葉にせずともイメージだけで運用することも可能なようだ。

 たぶん、空中に浮かせた『魔導の御手』に直接『クピドの黄金弓』を持たせることも可能だろう。


「アイラ」

「はい、こちらに」


 相変わらず用意の良いアイラから、『クピドの黄金弓』と『魔導銃クイーン・デトネーター』、それから『激流の三叉槍』を受け取り、2本の『ハイミスリルソード+5』と合わせて貯蔵庫に保管する。

 あとは適度に出したりしまったりして感覚を掴む。次の戦闘から武器をちょこちょこ変更したりして、使い心地の確認をしてみるか。


「ふふ、ショウタさんが楽しそうで何よりです」

「はやく戦いたいって顔してるわねー」

「いやー……。あ、そうだ。アイラ、キメラ戦の直前のガチャで『伝授の宝珠』の2個目が出たのと、『知覚強化Ⅲ』に上がったから、使っておくか?」

「そうですね……。では、せっかくですし使わせて頂けますか?」

「ああ」


 俺は『伝授の宝珠』を胸に押し付け、『知覚強化Ⅲ』を強くイメージする。すると正解したかのような「ピンポーン」という軽快な音と共にメッセージが現れた。


『対象のスキルはレアリティ条件に一致。スキルを複製します』


 手の中にあった『伝授の宝珠』は、輝きながらゆっくりとスキルオーブへと変化していった。さーて、こいつのレベルはいくつかなっと。


 名称:知覚強化Ⅲ

 品格:≪遺産≫レガシー

 種類:パッシブスキル

 説明:五感を限界まで研ぎ澄まし、第六感までも負担なく向上させるスキル。能力の上昇幅は本人の資質によって変化する。


「やっぱコイツ『遺産レガシー』だったか」

「ん。凄いスキル。私のEXにも似たようなスキルは入ってると思うけど、ここまでじゃない」

「そうだね。次があるなら僕も立候補したいくらいだ」

「ん、なんだエス。欲しいなら2個目も用意できるぞ? ちょうどさっき出たしな」

「ええ!? 確かに欲しくはあるけど、義姉さん達も使うだろう?」

「まあ有用なスキルは山ほどあるしな。けど、『知覚強化Ⅲ』にだけ焦点を当てた場合は、そうでもないって言うか。使いこなせるのがアイラくらいだなって話を以前したんだ」

「そうそう。だから遠慮しないでいいわよ」

「エスさんが強くなれば、それだけショウタさんの危険も減る訳ですし、私たちが拒む理由はありませんよ」

「ん。私は多分、機能が被るから取得できない。だからエスに譲ってもいい」


 皆が権利を手放しエスに譲る中、アヤネだけは珍しく思い悩んでいる風だった。


「アヤネ、どうした?」

「あ、ごめんなさいですわ。ちょっと気になるスキルがあって……」

「アヤネが気になるスキルとなると……。『魔力の叡智』か?」

「はいですわ! 具体的にどんな効果か気になるのですわ。わたくしの活躍できる要素は魔法ですし、その機会が増えるのなら獲得して、旦那様のお役に立ちたいですわ」

「うーん。アヤネの心意気は嬉しいし、直接スキルを視ないことにはなんともではあるが……。多分魔法攻撃という分野とは少し運用が違うように感じるんだよな。まあ、俺も詳細は気になるスキルだし、伝説未満なら試す価値はあるな」

「あと、『魔石操作』も気になりますわね。以前は扱えないスキルでしたけど、『魔力貯蔵のネックレス』が出てきた以上話は変わりますわ。10万もの数値を旦那様だけで溜めるのは大変ですし、わたくしもスキルを覚えればチャージをお手伝いできますわ!」

「なるほどなぁ」


 まあ魔石はいくらでも取れるとはいえ貴重な資源だし、『魔力超回復』でいくらでもおつりが来る魔力で充電した方がエコではあるよな。アヤネも色々考えてくれてるみたいだな。せっかくなので撫でておこう。


「えへへ」

「というわけだがエス、どうする?」

「はは、そういうことなら僕は遠慮しておこうかな。僕の方は彼女ほど是が非でもほしい訳じゃないし、本当に余ってからでいいよ」

「エス兄さま、ありがとうございますわ!」

「じゃあアヤネ、どっちから取る?」

「えっと……。では、旦那様も気にしている『魔力の叡智』からでお願いしますわ!」


 そうして2個目の『伝授の宝珠』を使用すると、無事『魔力の叡智』のスキルオーブ化に成功した。

 詳細は……。


 名称:魔力の叡智

 品格:≪遺産≫レガシー

 種類:パッシブブーストスキル

 説明:魔力の運用技術が向上し、魔力を使用する全ての魔法及びスキルの消費魔力を1割カットする。また、魔力や魔素に関する膨大な情報を認識した際や、魔力が枯渇した際の衝撃が軽減される。


「ぶっ壊れだったわ」

「ぶっ壊れですわ!」


 色々と突っ込みたいところはあるが、『天罰の剣』の消費が5000から4500に軽減されるって事だろ? それはすごいし、利便性は果てしなくあるが……。魔法攻撃に内包される魔力も減ったら、威力が下がったりしないんだろうか……?

 ううん、今すぐにでも検証したいが、まずは緑化が進んだ第二層の完全攻略が先だよな。頑張らないと。

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