ガチャ511回目:永久機関
『オオオオオッ!!』
『グオオオオッ!!』
キメラが叫ぶと同時に、奴の周辺の空間から無数の爪が伸び、甲羅に絡まっていたツルと一緒に前線に出ていた俺たち4人に襲いかかって来た。
巨大化している問題か、エンキの方にかなりの数が襲いかかっているみたいだ。けどエンキの近くにはエンリル達が控えているし、そこまで問題はないだろう。他の2人は心配するだけ野暮ってものだし、自分の心配だけしていようかな。
ツルは『レッドメイプルトレント』の時のように切っても切ってもすぐに再生してくるのだが、スキルレベルの関係か切断した次の瞬間にはもう生えているし、爪の方も『
けど、いくらこれを迎撃して破壊しようとも、本体には何のダメージも入らないのが厄介だ。『グランドクラーケン』の時は身体の一部だったからこそ意味はあったんだが、こっちは撃破しても再生のための魔力を消耗させているだけだからな……。
相手に『魔力超回復Lv5』がある以上、消耗度合いで言えばこちら側の負担の方が大きいだろう。
「『天罰の剣』『紅蓮剣』!」
一旦俺に襲いかかって来ているツルと爪の対処を『天罰の剣』の内1本に任せ、本体に肉薄する。そのまま燃え盛る剣で相手の樹のボディを切り裂くが……。
『オオオッ!』
『グオオッ!』
「くっ!」
身体を斬った感触はあるし、その瞬間は切断して傷口は焼けている。その様子も視覚で確認できているはずなのだが、瞬く間にその傷はなかったものとなり、相手は平然と攻撃を仕掛けて来た。
やっぱこいつでも『ミストミラージュ』の効果は健在か。さっきからアヤネやエンリル、エスの風担当の3人が、戦いながらも霧を吹き飛ばしてくれているが、『霧生成』のせいで、奴の周囲から霧が無くなることはなかった。
「ミスティも攻撃を開始してくれ!」
「ん。分かった」
『パパパパン!』
乾いた銃声が鳴り響くが、やはりこっちも当たりはすれど、影響は一瞬。キメラは何事もなかったかのように五体満足の姿で攻撃を繰り出す。
「ちっ、やっぱダメか」
「ん。撃っても通じない相手は初めて」
「なら、一瞬でも邪魔になりそうな顔を中心に狙ってくれ!」
「ん、わかった。ショウタの特製弾も使って良い?」
「おう、惜しみなく行け!」
「ん、やったっ」
『ドパンッ!』
ミスティの放った弾丸が、カメの頭を吹き飛ばす。すぐさま何事もなかったかのように元通りとなるかと思ったが、こちらは周囲の霧を吸い取り元通りに回復して行ってる感じだった。
「んん? 違いは何だ……?」
さっきまでなら、一瞬で元通りになっていたはずだが、ただの『再生』スキルを使い始めたな。魔力が切れたとは考えづらい。そういえば『レッドミストタイガー』も『無尽剣』を使った時は、無かったことにせず『霧化』で逃げていたな。
……となると。
「大ダメージは無かったことにできない訳だな」
だが、それが分かったところで攻略法には……。いや、待てよ。さっきガチャから入手した新スキル。あれは『レッドミストタイガー』戦の後に回して得たスキルだ。
となれば、奴が持っていた霧関係のスキルに対して、何らかの対抗策になり得るんじゃないか?
「エンキ、本体の相手を任せられるか!」
『ゴゴ!』
「『天罰の剣』のもう片方はエンキの援護に行け!」
俺の左側で暇そうに浮いていた『天罰の剣』は、俺と変わるように前に突出したエンキの周囲で暴れ始めた。やっぱコイツ、ある程度の命令なら聞いてくれる感じだな。
「ミスティは側面に回れ。アキとマキは引き続きエンキの援護を頼む!」
「ん!」
「はいっ!」
「おっけ!」
少し後ろに下がっても引き続き『霧の魔爪』の一部は追いかけて来ていたが、それは『天罰の剣』の片割れだけでも何とかなっていた。
さーて、頼むぞ新スキル!
「『解析の魔眼』!」
スキルを使った瞬間、世界のあちこちに大小さまざまな数字の羅列が出現した。モンスターの身体やその周辺。ツルや魔爪、霧や巻き起こる風、仲間達やエンキ達、そして『天罰の剣』や周辺の森や大地、空にまでも。
「……ぐっ!」
大地や空の数値はあまりにも莫大で、脳が焼かれる様な感覚を受け、咄嗟に目を逸らす。目に入れる数字も、数が増せば増すほどに眩暈がしたので極力視界に入れないように努め、改めて周囲の状況と表示される数値を1つ1つ確認して行く。
『霧の魔爪』に表示される数値は30/30。ツルには10/10。そして『天罰の剣』には2498/2500の数値が表示されていた。爪とツルは知らないが、『天罰の剣』は5000消費する事で2本出現する事からして、顕現に消費された魔力と、その残量が数値となって表示されているのではないだろうか。
仲間達を見れば、全員に魔力の最大値と、そこから少し差し引いた数値が表示されていた。あれが恐らく現在値だろう。それが増えたり減ったりしているのは恐らく『魔力超回復』やスキル使用による影響かな。
そして問題の相手を視てみれば、現在の魔力推移が手に取るようにわかった。
現在の数値は……9230/9999。
奴の肉体が傷つき、それが無かったことにされたり、爪やツルが壊されれば保有魔力は減少し、頭に大穴が空いた際には数百単位の魔力が消費される。だが、何もしなければ『魔力超回復』だけではありえないスピードで魔力が回復しているのを繰り返しているようだ。
あの回復量、そして奴の周囲に浮かぶ数字の羅列からして……。『霧生成』で霧を作って、それを『水吸収』で霧を吸って回復しているのか……?
「アヤネ、エンリル、エス。一旦風停止!」
「はいですわっ!」
『ポ!』
「わかった」
吹き荒れる風と、それに付随する数字が消えてなくなると、再び奴と戦うこのフィールドが霧に覆い尽くされる。すると、途端に奴の魔力回復の速度が尋常ではない程に加速し、一瞬で9999/9999まで回復しきってしまった。
……なるほど。これは、確定だな。
「状況は把握した。今から作戦を伝える!」
ここからは、我慢比べだ!
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