ガチャ498回目:2つの能力

 世間一般に向けたカバーストーリーについて、スキルは喪われたとする事で発生する利点はもう1つある。弟の方が所持していたスキルの名前だ。『言霊支配』なんて名前からして物騒なスキル、持っていると知られたら百害あって一利なしだからだ。

 それにあの兄弟も、自分達が持っているスキルは極力他人には知られたくなかったんだろう。どっちも当然のように『鑑定偽装LvMAX』を持っていたみたいだからな。

 俺も確認したのは戦闘直前の一瞬だけだったが、奴らが持つ『裏決闘Ⅱ』も『言霊支配』も、隠されていて視る事はできなかった。

 多分、俺の『真鑑定』がLvMAXじゃなかったからってのもあるんだろう。『鑑定』系統のスキルが、妨害や偽装スキルより低いと看破率は格段に落ちるって話だからな。

 となると、殆どの人間は、奴らが持っていたスキルの詳細は知らないはずだ。これの詳細を本人以外で知っている奴がいるとすれば、それは一緒につるんでいた兄と……。あとは、例の組織のボスくらいだろうか。


「それで兄さん、奴らの遺したスキルはどういう性能だったんだい?」

「ああ、それは今から俺も視るところだ。一緒に確認しようか」


 名称:裏決闘Ⅱ

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:スペシャルスキル

 説明:所有者は相手を指定する事で効果発動。自身と指定した相手の魂を専用フィールドに召喚する。専用フィールド内では互いに賭けるものを宣言し、勝利する事でそれを奪う事ができる。60秒経過しても宣言をしなかった場合、賭けを放棄したと見なされる。1度スキルを使用すると、900時間使用不可。また、スキルレベルに応じて賭けの種類、術者側の参加可能人数に変化が生じる。

 ★宣言された能力はこの空間内では使用不可能となる。

 ★この世界で死んでも現実世界の肉体に影響はしないが、魂は消耗する。

 ★消耗した魂の回復は困難を極める。

 ★賭けの対象:スキル(Ⅰ)、人間関係(Ⅱ)

 ★言葉を解する者にのみ有効。

 ★フィールド展開後、同等以上の決闘を申し込まれると効果が無効化される。


「……多いな」


 『天罰の剣』もそうだったように、スキルによって発生したモノを視るより、スキルオーブを直接見た事で、読み取れなかった注釈がいくつか追加されてるな。

 『決闘』も、レベルが上がるごとに相手に負担を掛けたり、Ⅴになることで配下を連れてこれてたし、レベル上昇で術者側が有利になるのは同じって事か。

 どこにも正々堂々とした決闘感がないのがスキルらしいといえばスキルらしい。けど、『言葉を解する者にのみ有効』という文言が気になるな。これ、一見モンスターには使えないように見えて、『ゴブリンヒーロー』とか会話ができる奴には使えるという事だろうか。

 あとは、『決闘』による相殺効果も気になるな。『裏決闘』に『決闘』を重ねる事で、相互に無効化されるのか、はたまた上書きされるのか。試そうにも人間相手には使いたくないし、都合よくどっちか持ってるモンスター現れないかな……。

 一見バランスが保たれてるように見えて、これ、『真理の眼』じゃないと視れないんだよな……。それに、使う前にスキルを封じられたらたぶん駄目だろうし。

 そこがまた、なんともいやらしい。


 あとは賭けの対象も問題だよな。『幻想ファンタズマ』級スキルは奪えないことについては『真理の眼』をもってしても明記されてない以上、人間関係もどこまで対象なのか不明なのが怖い所だよな。あいつらの反応を見るに、恋人限定か? とするなら、『愛のバングル』で言うところの80や90以上が対象となるとか……?

 普通、こういうのは低い方から奪われるのが相場だと思うんだが、ダンジョン産のスキルな上に、品格も『伝説レジェンダリー』だからな。常識では測り切れないところはあるかもしれない。

 謎が深まるばかりだが、この辺は検証のしようがないな。

 俺が思案に耽っている間も、仲間達はこのスキルについて話を続けていた。


「なんにせよ、使用にリキャストタイムが存在したのは朗報だが、それでも1ヵ月と少しで使える以上、それなりの人数が食い物にされていそうだね」

「ん。気になるのはコレがⅡという点」

「そうねー。基本的に効果量の高いスキルを持っているモンスターが居るときは、大抵無印を持ってる奴らはそれなりに出てくるイメージだもんね」

「例の、支配しているダンジョン産なんでしょうか……」

「もしくは、ただ無印版を持つモンスターを何匹も狩って、4つ分集めてまとめて覚えてしまったかですわよね」

「ここは今の我々ではわかりかねますね。奪っているのがあの兄弟だけだったのか、それとも例の組織の人間は全員が持っていたのか……。そうなってくると、兄弟が持っていたスキルだけでは奪われた人間の全てがここにある訳ではないという事になります。特定は大変かと思いますが、シルヴィ様、よろしくお願いします」

「お兄さんの頼みだもの、絶対にスキルの持ち主は特定して見せるわ」


 俺に対して呼ばれた気がしたので我に返ると、シルヴィと目が合った。


「あ、お兄さん。少なくともいくつかのスキルは兄弟が最初から持っていたスキルも絶対あると思うの。汚いスキルかもしれないけど、それの割り出しが完了したらお兄さんに返却するからよろしくね」

「ああ、わかった。それじゃ、そんなスキルがあったら売っておいてくれ。売上金についてはアイラに連絡してくれればいいから」

「迷いが無いのね。わかったわ」

「それと、『決闘』による無効化は対処策としては十分有りかもだけど、もしかしたら連中はまだ知らない可能性がある。だからこれも、しばらくは伏せておいてくれ」

「OKよ!」


 『決闘』か『裏決闘』持ちのレアモンスターと出会えれば、打消しか上書きかの検証ができるんだが、さすがにそんな都合よくあらわれたりはしないだろうしな。この情報は、連中に対しての切り札になり得る。


「んでもう1つが……」


 名称:言霊支配

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:スペシャルスキル

 説明:対象をフルネームで指定し、命令する事で効果発動。対象が知っている事であればどのような秘密でも嘘偽りなく話させる効果を持つ。

 ★高位の状態異常『言霊呪縛』を対象に付与する。

 ★防ぐには驚異的な意志力、もしくは強力な状態異常耐性が必要。


 同じ『伝説レジェンダリー』なのに、こっちはカロリーが低くて助かるよ。


「なるほど……。逆にフルネームを知らなければ効果が発揮されないのか」

「わたくしとマキ先輩は、『鑑定妨害』のレベルが低くてバレてしまったのですわよね……」

「ショウタさんのおかげで事なきを得ましたが、もし『克己Ⅱ』が無かったらと思うと、ぞっとします……」

「まあその時は、無理やりにでも口を塞いでいたさ」

「ショウタさん……!」

「今、とっても塞いでほしい気分ですわ!」

「あー……。それは、あとでな。さて、もう1つ伝えたいことがあるんだ。連中がわざわざ俺を狙ってきた目的だな」


 俺は、連中から命乞い代わりに聞き出した、襲った目的について思い出した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る