ガチャ497回目:誓約書とポイント

「あと、連中が被害者たちに口止めの為に、『誓いの誓約書』とか使ってる可能性があるんだけど、それの対処はどうしようか?」

「兄さん、それなら心配いらないよ。そのアイテムを打ち消す魔道具もまた、別に存在しているからね」

「そうなのか。……じゃあ、俺達も解消しとく?」

「……いや、このままでいいよ。これは必要な事だから受けた事だしね」

「そうか? まあエスがそう言うなら良いが……」


 俺としては外せるなら外しても良いと思うんだけどなぁ。

 その後、支部長はひとしきりお礼の言葉を述べ、早速元の使用者を確認するべく部屋を出て行った。奴らが落として行ったスキルは一旦、スウェンの持っていた『魔法の鞄』に中身を空にした状態で放り込み、シルヴィに渡す段取りとなった。


「それにしても、今回お兄さんは襲われるばかりで何も得してないけどいいの? 『魔法の鞄』まで手放しちゃうなんて」

「良いさ。連中が持ってた『魔法の鞄』は2個あって、その内のラシャードが持っていた分は貰い受けるわけだしな。それに有用そうなアイテムも頂いちゃったし。ただまあ、存在自体が違法そうなアイテムは破棄するけどね」

「それは、兄さんがいうところの例ので、かい?」

「そうそう。違法アイテムは処分するのも一苦労ありそうだけど、アレなら1発だしな」


 連中が投げつけてきたアイテムの中には、明らかな『危険指定アイテム』も含まれていた。大半はエネルギーに還元したが、それでも投げられずに『魔法の鞄』内部でそのままにされていた物もいくつかあったはずだ。

 確認はしてないが、あんな連中が持っているアイテムに、まともなものは期待できない。管理はアイラに丸投げだな。


「そういえば、今ポイントはいくつぐらい溜まってるんだろ。あいつら大量に放り投げて来たからなぁ……」


 俺は机の上に『魔石変換器』を取り出した。


【エネルギー残量:5448400】


「おぉう……。だいぶ増えたな」


 元はバナナで133万まで増えてた事を考えても、だいぶ増えたな。

 でも、バナナだけで133万行った事を考えれば少ないような気もしてくるから不思議だ。まあ、投入したバナナの数は3色合わせて1000本超えるんだが。


「ん。ダンジョン限定とはいえ、大量のごみをエネルギーに変換できるのはすごい」

「そうだね。実は僕も協会の手伝いをすることが多いから知ってるんだけど、ダンジョンアイテムで不要になった物は、基本的にダンジョン内に放棄するようにしているんだよ。ダンジョンは放っておけば自浄作用が働くから、落ちているアイテムは勝手に掃除してくれるんだ。一部都市のダンジョンでは、浅層の一画にアイテムの放棄場を設ける事もあるんだよ。ただ、中には悪用できてしまう物品も紛れ込んでるから、持ち去ろうとする連中が後を絶たないんだ。だから監視者が必要だったりで手間がかかるんだよ。けど兄さんのやり方なら、その心配がなくて羨ましいよ」

「うへぇ、大変そうだな」


 しかもそこ、ダンジョンだからモンスターも湧くんだろ? ある程度戦える必要があるし、人件費とか含めて管理が色々と面倒そうだ。


「ところでエス、シルヴィとはもう付き合ってるんだよな?」

「ああ、おかげさまでね」

「結婚はするんだよな?」

「えっ!? そ、それはまあ……。そのつもりだけど……」


 その言葉にシルヴィはとてつもなく嬉しそうにしていた。我慢ならなかったのか、抱きついて甘え始めたが。


「エス~!」

「シ、シルヴィ。兄さん達の前だよっ」


 他人がイチャイチャしてるのを間近で見るのはあまり経験はないが、相手が身内のエスだからか、何だか微笑ましい気持ちになるなぁ。

 エスも普段、俺達の事をこんな気持ちで見ているんだろうか。


「に、兄さん。どうして急にそんな事を?」

「いやなに。一番重要な秘密は伝えなくても、ある程度の秘密くらいなら共有しても良いかなって。弟の嫁さんなら大丈夫だよなーっていう確認だな」

「なるほど……?」

「あっ、つまりボスには伝えにくい事を私に教えてくれるのね? 分かったわ、お兄さん。エスに誓って内緒にするわ!」


 彼女がエスを想ってきた期間を思えば、その言葉は中々信用できる言葉だな。


「まず今回の戦果だけど、アイテムの他に特大スキルが2つ。それからとある情報が1つだ」


 俺は机の上に『技能の天秤』と『裏決闘Ⅱ』のスキル、そして『言霊支配』を並べた。


「あれ、これってもしかして、あの兄弟が持ってたスキル?」

「ああ。これだけは他所に流すつもりはない。俺から自発的に使うつもりは無いけど、使われたくもないスキルだからな。誰かに使われるくらいなら取得しておきたいんだ。世界には複数あるものかもしれないけど、危険は可能な限り減らしておきたいんだ」


 危険なスキルを所持していると周囲から疎まれたくはないけど、『直感』がこれらのスキルは所持しておいた方がいいと判断してる気がするんだよな。

 今までも俺はこの『直感』を信じて進んできたし、これからもそのつもりだ。


「確かに、こんなスキルを所持しちゃう事を知っちゃえば、ボスには報告の義務が発生するもんね。でも、連中が持ってた他のスキルは全部ドロップしたのよね? 逆にそれが無いって、怪しくないかしら」

「そうか? これだけ特殊なスキルなんだ。相手に譲渡ができない特殊スキルで、移動の際に喪われたとかって言えば、通る気もするぞ」

「そうかしら? ……そうかも?」

「それにこうしておけば、スキルが無いのはおかしいと言ってくる奴が釣れるかもしれないからな。そう言うって事は、このスキルについて詳しくなきゃ言えない訳だ。つまり、敵側の内通者の可能性が考えられる」

「なるほど……。そっか、そうよね。わかったわお兄さん、ボスにはスキルは消えたって報告するね!」


 シルヴィはそう言って納得してくれたみたいだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る