ガチャ508回目:霧の中
煙は瞬く間に『レッドメイプルトレント』の死体から溢れ出し、球状となって1つの塊に変貌。そして俺の近くに変わらずついて来ていた煙と合流すると、体積が2倍以上に膨れ上がった。
「ああ、こりゃ確定だな」
マップを開けば、全ての赤点のうち、反応しないのは霧の深い森にいる赤点だけ。となれば、こっちのレアを倒すことで、3体とも別種であるはずのレア達のレアⅡが現れると見てよさそうだ。
問題は、3体同時出現か、1匹ずつの連戦か。……もしくは、ヤバい1体が出てくるのか。
どっちにしろ楽しみだ。
「よし、霧が立ち込める森に行こうか!」
俺たちは休憩もそこそこに、紅葉地帯を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「うわぁ、マジで霧が濃ゆいな」
「ん。マップで見てわかる通り、ここは迷いやすい上にモンスターも厄介だから、基本的に誰も来ない。だから、こっち側に次層への転移ゲートが出現してる時は、誰も第三層へは進まないようにしてる」
「そうなのか。ちなみに、更新周期は?」
「第一層が8時間から16時間くらいで、第二層は16時間から24時間くらいかな」
「ほーん……。ちなみに、切り替わった時ってのは、その階層にいるときに知覚できるのか?」
「いや。今まで誰も知覚できた試しはないよ。ゲートの目の前にいて、ゲートが消えてしまったって話は聞くけどね」
「チームで動いてて取り残されたら大変だな……」
「ああ。第一層ならともかく、それ以降だと命に関わるからね。なるべく全員で一気に飛び込むようにしているようだよ」
「なるほどな」
そういうのは厄介だし、第一層では試してみたくてワープゲートを使用したが、これ以降はレアⅡの報酬アイテムで移動して行くのが無難か。でも各階層のワープゲートの条件は、移動前に調べておきたいよなー。
特に第四層とかは、次層への移動手段が確立されてないものがあるって話だったしな。ちょっと確かめてみたいけど、その時間帯にたまたま訪れないと確認のしようもないし、探すのは全部終わってからになるのかな。『ダンジョンコア』でネタバレを喰らうのは嫌だし。
そんなことを考えていると、マップにある赤点が近付いて来ているのが目に入った。
「第一モンスター発見っと……おぉ?」
「なにあれ」
「おばけですの!?」
*****
名前:レッドミストハンター
レベル:55
腕力:480
器用:540
頑丈:350
俊敏:700
魔力:500
知力:800
運:なし
【
【
★【
装備:なし
ドロップ:ミストシロップ、リフレッシュミスト
魔石:中
*****
これは……なんだ??
意思を持つかのように一塊となって動く霧の中に、明らかに異質な影が見え隠れしている。2本の角が生えたドクロの頭らしきもの、骨ばった人の胴体らしきもの、2本の腕らしきもの。そして、生物としてはありえないほどに鋭く伸びた、鉤爪のような殺意マシマシの爪。
そしてその影には、腰から下が存在しなかった。近寄って来ているにも関わらず、足音がしない訳だ。足が無く浮いてるんじゃ、音を立てようがない。
『……コォォォ!』
レッドミストハンターは『生体感知』を持ってるから、こっちの気配なんて関係なしに見つけて来たんだろう。こんなのが闊歩してるんじゃ、隠れるなんて真似は通用しない相手な訳だ。
奴は爪を振りかざして攻撃を仕掛けてくる。
『ガキンッ!』
剣とぶつかった爪からは金属音が鳴った。『ミストボディ』なんてスキルを持ってるから全身が霧なのかと思ったけど、激突したという事は物質化してるのか?
そのまま何合か応戦した後、一気に爪を叩き斬った。
「おりゃ!」
『コォォォ……』
「……効果なしと」
だが、奴はすぐに周囲の霧を集めて爪を再生成した。
見た感じ、あの『ミストボディ』には霧の操作スキルも含まれてるんだろうか。また新種の操作スキルかと思ったのに、ゲットできない『
「兄さん、そいつに物理攻撃はあまり効果がないよ」
「みたいだな。なら……『紅蓮剣』」
火と水じゃ相性は悪いかもしれないが、それでも魔法の剣だ。多少なりとも効果はあるはずだろう。なのでもう一度奴の爪を狙って斬り落としてみる。
「せいっ!」
『コォォォ……』
「……ちょっと再生が遅いか?」
『再生』スキルがあるわけでもないし、この違いに要因があるとすれば、やはり普通の剣による攻撃か、そうでないかの違いはありそうだな。けど、爪の再補充の時間が伸びたものの、ダメージを受けた様子は見えない。となれば、もうこのまま本体を削りに行くか。
『斬ッ!』
奴の身体を、霧ごと袈裟斬りに両断する。
すると今度はしっかりとダメージが通ったようで、苦しそうな声を発しながら霧散して消えていった。レベルアップ通知は無いが、アイテムが散らばったし倒したとみて間違いないだろうな。
「しっかし、こんなのが通常モンスターとして蔓延ってるのか……。その上、森全体は霧に覆われ視界は最悪。そりゃ、誰も来ないわ」
「モンスターに気付かれないよう慎重に行動しようと、連中は『生体感知』で物理的な障害を無視してこっちを認識してくるからね。そしてこんなのがワラワラと集まってきたら、対処が面倒な上に、戦っている内に方角もわからなくなってくる。本当に厄介な場所なんだ」
「ん。だから、誰もここの宝箱にまで手を出そうとはしない」
「確かに、他2カ所だと宝箱はまばらに分散してたけど、こっちは結構な数があるな」
宝箱に出会えれば一攫千金かもしれないが、明確な危険に身を乗り出すような奴はいないよな。
「そういえば今更な話なんだが、ダンジョンってコンパスとか機能するの?」
「あーそっか。ショウタ君にはマップがあるから、気にもしなかったよね」
「ダンジョンによって機能するところもあれば機能しないところもあるようですよ」
「ちなみにこのダンジョンは、機能するエリアもあれば機能しないエリアもあるよ。この霧の森は……言うまでもないよね」
「だよな。……んじゃ、また『視界共有』でマップ情報を連携するから、さっきみたいに3組に分かれて行動しよう。エンキ達は30。エス達も30くらいにしといてくれ。俺ももうちょっとやりたいからな」
『ゴ!』
「ん。わかった」
そこから俺は、各種魔法を使ってみたり、剣だけのゴリ押しで倒せないかと色々検証してみた。結果から言うと剣だけでの討伐もできない事は無かった。ただ、剣を勢い良く振って風圧で霧を散らして、その隙に本体を滅多切りにする必要があるので、毎回これをするのはちょっと大変そうだった。
「ショウタさん、次で100です!」
「わかった!」
さーて、今度は何が出るかなっと。
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