ガチャ505回目:赤い甲羅
見通しの悪い森、かつ相手は群れずに単独行動するタイプかつ、1匹1匹の身体が大きめであり『反響定位』でお互いの位置が把握できるということもあってか、連中はとにかく四方八方に散らばっていたため、狩るのに時間がかかってしまった。
接敵すれば一撃で倒せはするけど、こんなに散らばってるんじゃあ、たぶんマップ機能が無ければ探し回るのに1時間は軽く超えていたと思う。まあ、それでも雑談していた時間を除けば30分は掛ってしまったが。
「お出ましか」
『……』
*****
名前:レッドロックタートル
レベル:108
腕力:1080
器用:1080
頑丈:1480
俊敏:60
魔力:5000
知力:800
運:なし
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★【
装備:なし
ドロップ:ロックタートルの赤熱甲羅、ロックタートルの特大卵
魔石:特大
*****
体高3メートルを超える巨大亀が現れた。
トカゲの次はトカゲかと思ったが、見た目から寄せて来たか。カメは見た目とそのステータス通りひたすらに鈍重のようで、こっちの事には気付いているがすごくゆっくりと近付いて来た。距離は20メートルくらいしかないんだが、あの調子じゃ数分かかりそうだな。
『……!』
「おっ」
と思ったら、ウォーターボールで遠距離攻撃を仕掛けてきた。
と言っても所詮は『水魔法』。今の俺なら剣で迎え撃ってしまえばぶった切れるし、残った水も『泡魔法』で身体を纏ってしまえばなんてことはなかった。
『……!』
続けてカメはビッグウォーターボールを連発してきたが、違いとしてはちょっと巨大になったくらいだ。『魔導の叡智Ⅱ』と『知力』800で、玉の大きさはそれなりではあるが、大した問題じゃない。広範囲魔法を使われない限りはこのまま適当に迎え撃とう。
その間に、敵のスキルについての共有と、確認をしようかな。
「なあ、『超防壁』ってなにかわかるか?」
「そういえば兄さんは知らなかったんだっけ。この国では兄さんの発見した『金剛外装』こそないけれど、その代わりとなるスキルがあってね。それが『超防壁』さ。大体の冒険者は取得している防御系の便利なスキルなんだよ」
「そういや、模擬戦の最中になんか似たような事を言ってたな」
確か、シールドがどうのと……。
「ん。固定ダメージ吸収スキル。一定のダメージまで肩代わりしてくれるスキルで、過信しすぎると怪我をするけど、有るのと無いのとじゃ天地の差」
「ちなみに、昨日の兄弟が落としたスキルにも『超防壁』があったよ。確かⅥだったかな」
「ん。いいの使ってる」
「おー。あの中に何があるかとか、全然チェックしてなかったわ。とりあえず『金剛外装』みたいな絶対防御じゃないにしろ、あれば便利なスキルなわけね」
例えばこいつの使ってくるウォーターボール程度なら、わざわざ斬り捨てなくても無視できるとか、そういう感じか。でもなぁ……。俺、今まで敵の魔法は怖いから全部防いでるし、直接攻撃も全部避けるなり防ぐなりしてる。更には危険な技に対しては、安心安全の『金剛外装』でいなしてきた。だから、モロにダメージを受けた経験がほとんどないんだよな。
修行と自傷ダメージを除けば……。アキからの腹パンくらいだな。うん。
そんな俺が、わざわざ取得するべきスキルかと言われると、別にそうでもないんだよなぁ。まあ『金剛外装』が完全上位互換と言うか、チートすぎるだけなんだが。
それにダメージがないものと思って行動して痛みが発生したら、俺多分、多少は怯むと思うし……。
『……! ……!』
そんな事を考えつつ、いくつものウォーターボールを斬り捨てていると、しびれを切らしたのかカメが前足を高く上げた。
「お、『震天動地』か?」
『ゴゴゴゴ!』
どうやら当たりのようで、奴がストンプすると地鳴りが起きた。俺をこかせることで隙を生み、その隙に攻撃をする算段のようだが、残念ながら俺はその手の修業も怠らずにして来た。エンキに直接『震天動地』を使ってもらうまではしていないが、足場が悪い中でのバランス取りは、基本中の基本だからな。
足は、アイラが修行を行う上で特に厳しく見ている点でもある。今も後ろでは彼女達が見守ってるんだ、情けない場面は見せたくない。
俺に効果が無いと見ても、カメは何度もストンプを繰り返した。どうやら品切れみたいだな。
「ネタも尽きたみたいだし、そろそろ狩るか」
地面が揺れ続ける中を悠然と歩き、奴の目の前まで行く。するとカメは頭をひっこめるでもなく、食らいつこうと口をあけて来た。
俺はそれを迎え撃ち、頭を一刀両断にしてやった。
【レベルアップ】
【レベルが107から114に上昇しました】
カメから湧き出た煙はモクモクと宙に浮かび上がる。
低レベル補正+特大魔石のおかげで、それなりにレベルは上がってくれたが……。やっぱ美味しくはないな。これが一桁とかそのレベルなら、ガチャが回せるくらいにはレベルが上がってたかもしれないのに。
……いや、流石に160には届かんか。
「ま、次が出たら上がってくれるだろ」
そう思っていた俺の思惑を裏切るように、信じられない事が起こった。煙を吐き出していたカメの死体が、いきなり弾け飛んだのだ。
「うおっ!?」
「え、消えた?」
「ん。どこにいったの?」
カメの死体が消え、そこには煙だけが残った。だがその煙は、今までのレアⅡが出現するものとはどこか違って見えた。漠然とした妙な感覚に、じっと見つめていると、煙が緩慢な動きで移動を始める。
そしてすぐ、動きを止めた。
「んん?」
「何、この煙……」
「危険な感じはしないですが……」
「旦那様、どうなっていますの?」
「煙がそこにあるのかい?」
「ん? というと……。この煙が見えるの、俺の他はアキとマキだけか?」
「はい」
「そうみたいね」
『運』のあるなしで煙が見えたり見えなかったりするのは、いつものことではあるから、この妙な動きをする煙は、いつもと同じ次が出る前兆なのは間違いなさそうだな。けど、爆発したのも謎だが、それ以上になんですぐ動きを止めたんだ?
アキとマキが、考え込む俺の代わりに皆に状況を説明してくれた。
「なるほど……。兄さん、今煙は、具体的にどこに?」
「俺の目の前。元々はカメが死んだ辺りに集まってたんだ」
「ふむ……。もしかして、討伐者の近くに寄って来たとかじゃないかな?」
「そんな懐いてるペットみたいな……」
「「あ」」
俺が動くと、煙が一緒に移動した。そして俺のすぐそばで動きを止める。
「……エスの言う通りみたいだな」
動いてすぐ止まった理由はわかったが、余計に分からなくなったぞ。なんなんだこの煙は。『真鑑定』も『真理の眼』も通じないし、今までのレアⅡとは仕様が異なるみたいだな……。
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