ガチャ503回目:第二層突入

「ここが第二層か。……前方も左右も、見事に森だな」

「ん。木々の間隔は広めだけど、ずっと見通しが悪いから、迷いやすい。出現したばかりの頃は迷子による遭難者が多発した」


 今いる場所は第一層の名残か若干の平原になっているようだが、少しでも進めば森が広がっていた。ここにはテントこそ無いものの、冒険者達が集まる場として賑わっているようだ。平原の中央にはバカ高い鉄の塔が建ち、それを中心に冒険者達が思い思いに集まっている。見回してみれば誰も彼もが『初心者ダンジョン』で言うところの第五層レベルの人達が集まっていた。


「いきなりレベルが上がったなぁ。冒険者のレベルも、ダンジョンのいやらしさも」

「ん。今でもたまに遭難者が発生する。この鉄の塔が建ってからは減りはしたけど、森の中では絶対に見えないタイミングが必ずある。それで迷うみたい」


 この鉄の塔は、目印以外の役目はとくにないようで、付近を確認してみたが電波を飛ばす為の黒柱は設置されていなかった。どうやら、このダンジョンは第一層以外外との通信手段が確立されていないようだった。

 まあでも、それはそうかもしれない。だって、物理的に繋がっていないんだし、各層を繋ぐワープゲートも入口のゲートは一定時間ごとに勝手に移動するんだもんな。そりゃ、そんな状態で通信手段の確立は不可能だろう。


「ふーん……。方向音痴の人は入っちゃ駄目な場所みたいだな。ちなみに迷いやすいって話だけど、ここは三半規管も攻撃されたりするのか?」

「ん。そこまで凶悪じゃない。ただ、慣れてないチームは逸れやすい」

「ふむ。じゃあとりあえず……。エンリル、いつものやるか」

『ポポ!』


 エンリルに『視界共有Ⅱ』を掛け、空へ羽ばたかせる。これでしばらくすれば第二層も全域がわかるだろう。

 さーて、どこから攻めるべきか……。


「ミスティ。この階層、全部森で目印はこの人工物しかないのか?」

「ん。目印はあるにはあるけど、ここからじゃ見えない。空からの視点があるならすぐ見れるかも」

「いや、エンリルに繋いでる視線は、マップ反映のために直下に向けてあるからな。周囲の確認にはあまり向かないんだ。だから直接見てくるよ」


 俺は『虚空歩』と『空間魔法』を使いながら木々よりも高い位置まで上がっていく。それに追従するようにエスもやって来た。


「どうだい兄さん、第二層の光景は」

「下から見た光景とは、また違った雰囲気だな。ホントにただの森しかなかったらどうしようとは思っていたよ」


 目の前の森は葉の色が緑だが、左奥に進むにつれて紅葉化が進んでおり、一番奥には頭ひとつ分高い真っ赤な頭頂部が見えた。あれが目印の一つか。

 逆に、右奥に進めば進むほど霧が濃くなっているようで、上からでも非常に見通しが悪い。そしてその霧は風によって流されるでもなく、ずっと同じ場所から動いていないように思えた。


「あの霧もギミックの1つか」

「うん。そうだよ」

「ちなみにこの階層も、エスが見つけた攻略法とは別のマイルド版が今の攻略の手法だったりするのか?」

「ああ。兄さんなら、今すぐにでも解いてしまいそうだけどね」

「この段階でか? ……てことは、現時点でも解ける情報は揃ってると言うことか? となるとそうだな……。例えばあの霧の中心部に何らかの目印があるとして、そこから大きな紅葉の木まで、既定タイム以内に駆け抜けるとかかな?」

「……本当にすごいな、兄さんは」

「お、当たったか? でも割と思いつくままに言ったのに、第二層になっていきなり実行難易度が上がったな。まあ必要タイムは不明だが、ある程度の『俊敏』があれば突破できそうではあるが……」


 俺の言った通りだとするなら、精巧な地図と対応力、それから判断力と戦闘力も必要になってくるよな。道中は絶対モンスターが絡んでくるだろうし、邪魔されるのは目に見えてる。


「いや、そうじゃなくて」

「ん?」

「兄さんが当てたのは、僕の試練の方だよ。今はそんなに面倒なことは求められてないんだ」

「……僕のってことは、それが『風』の試練の始まりだったのか」

「そういうこと。まさか今のヒントだけで辿り着けるなんて、兄さんはやっぱり、取るべくして『幻想ファンタズマ』を取ったんだね」

「そう褒めるなって。となると、マイルドになったってことは、ここのゲート位置はスタートとゴール地点の2つか?」

「そうだね。それであってるよ」


 そうして会話している内に、この階層のマップ踏破率が2割を超えて来た。エンリルの調査は順調だな。


「んじゃ、まずは情報が更新されつつある目の前の森の調査から行こう。そこから、左手の紅葉地帯を目指してみるかな」

「ああ、了解した」


 俺達は地上へと戻ると、状況を説明して森へと侵入した。

 そして人の少ないルートを選んで進軍していると、最初のモンスターと邂逅した。


*****

名前:レッドロックリザード

レベル:38

腕力:380

器用:350

頑丈:500

俊敏:20

魔力:500

知力:100

運:なし


パッシブスキル】硬化Ⅱ、再生Lv1

アーツスキル】隠形、反響定位

★【エクススキル】病魔の口


装備:なし

ドロップ:ロックリザードの卵、ロックリザードの肉

魔石:中

*****


 大きさは体高1メートルに、体長2メートルほど。背中に岩を生やした赤いトカゲだった。トカゲというより、背中の岩が甲羅みたいになっててさながらカメだな。

 それにしてもまたレッドか。となると……。


「エス、まさかとは思うが……」

「すまない兄さん。一昨日の影響がここにも出ているみたいだ」

「ん。でもレベルは最大値の40じゃない。だからまだ猶予はある。……たぶん12時間くらいは」

「なるほどね。……んで、ここはミスティがケルベロスの入手と同時に解放された階層だから、ここのレベルは2種類のタイプしか確認されてないって事で良いんだよな?」

「ん。そう。発見当時は20~25だった。今は35~40」

「上がり方がエグイな……。二層から20スタートってのも中々アレだが、当時の第一層は8~11だったことを思えば、まあ順当ではあったのか?」

「ん。順当。でも、今は苛烈」

「今のサルは12~15で、ここは35~40だもんなぁ」


 難易度の跳ね上がり方が異常だ。でも、それならばそれで、低レベル補正を受けやすいから冒険者同士で協力すればレベルアップはすぐかもしれないよな。コイツ、鈍間だし。

 まあいきなり強くなったら、力の加減ができなくなるから、一時的に私生活は大変になるだろうけど。


『シュルルル……』


 トカゲはこちらに向かって舌をチロチロと伸ばして威嚇している。相手は『反響定位エコーロケーション』持ちだからか、俺達が近付いて来るのは先に気が付いていたんだろうけど、動きが鈍いし遠距離技も持ち合わせていないからか、不意打ちはできないようだった。レベルやステータスを視る分には、一見手強そうに思えるが、『俊敏』がここまで貧弱だと実際弱そうだよな。

 ま、とりあえずこいつらを100匹討伐していきますかね。

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