ガチャ502回目:食事

 キンググリーンバナナの説明文に、皆が驚きを隠せないでいた。

 念のため他の赤と黄も確認するが、内容はまるで同じ。存在感からしてもこのキングシリーズはどれも同じ質と同じ味を持っていそうだな。


「食べてみたくはあるが、1本食べるだけでマジで1本満足しちゃうのはヤバいな」

「ん。興味あるけど、ご飯が食べられなくなるのは辛い」

「ずーっとお腹が減らないって、どんな感じなのでしょう?」

「わたくしはまだ成長期ですから、いっぱい食べないと大きくなれませんわ!」

『プル?』

「わざわざ説明欄に書いてあるくらいだ。流石のイリスでも……。いや、イリスならいけるか?」

『プル~ン? プルプル』

「はは、そうか?」


 興味はあるけど、貴重みたいだから判断は任せるそうだ。

 食いしん坊だけど、そういうところは冷静だよな、イリスは。偉いので撫でてあげよう。


『プルプル』

「1本で3日分というのであれば、これを明日の朝人数分に切り分けて食べてみるのはいかがでしょうか」

「人数分と言うと……」

「はい。イリスと……あとはゴーレムの中で唯一食事ができるエンリル分も含めた、9等分です」

「それならまあ、3日分の1/9なら、普通に朝食1回分になるな?」


 バナナ15センチ前後を全員で食べてそれを朝食にするのか。中々面白い光景だが、どうなるかは気になる所だよな。


「よし、じゃあ明日の朝はそうしようか。ミスティ、悪いけどエスに伝えといて」

「ん。わかった」

『プル』

『ポポ?』

『プルプル!』

『ポポ』


 2人が何か話し合ってる。なぜエンリルは食事が可能で他の2人はできないのか。そんな感じの会話をしているみたいだった。

 それはエンリル自身よくわからないそうだが、その辺は多分、鳥は何でも食べていそうなイメージが俺にはあったからだと思う。逆に、砂や石の身体を持つゴーレムが食事をしているところは想像ができなくて、エンキは食事ができないのかもしれない。

 セレンは……。逆になんでできないんだろうな?

 一般知識では、クラゲって何食ってるかわからないから、そこが引っ張られたかな?


『ゴゴ』

『~~♪』

「気にするなって? でも皆で食事を囲った方が楽しいんじゃないかと思ってな」

『ゴ。ゴゴ』

『~~♪』

「今のままで大丈夫? ……そうか」


 2人がそう言うならそういうことにしておくか。まあそこはいずれ、コアのレベルを上げるときに調整できないか試してみるかな。

 そうして俺達は冒険者のために用意されたリラックス用の施設を活用し、のんびりと過ごした後レストランで夕食を摂り、そのまま寝室へと向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふぅー……」


 昨日は、俺が失われるかもしれなかったという恐怖と、別の誰かに取って代わられていたかもしれないという状況に恐怖したのもあって、いつも以上に白熱した。

 ダンジョンから帰ってすぐにはそんな顔見せなかったのに、やっぱりそういう場所では皆素直になるんだなぁ。

 今のところは『精力増強LvMAX』と『性豪Lv1』のおかげで5人相手でもなんとかなってるけど、今後を思うとなぁ……。高レベル冒険者だから産気づく直前までは問題はないっていう調査結果を、サクヤお義母さん経由で教えて貰ってはいるけども、いつまでも彼女達をダンジョンに連れまわすわけにも行かない訳で。

 そうなってくると、彼女達の目論見通り4人が一次離脱をするタイミングでカスミ達が合流する事になるはずだ。安全面を考慮してミスティはまだ薬を服用していて、のは抑えて貰っているが、そのタイミングで薬はやめてもらうつもりではいる。

 問題は、相手をする人数が7人同時となって、俺が大丈夫かという話な訳だ。


「……ちょっときついかもな」


 今のメンバーで一番搾り取ってくるのはアイラだが、向こうにも房中術の使い手であるハヅキがいる。彼女なら仲間達に手ほどきをしてるはずだし、いずれ訪れる未来は、手強い戦いになりそうだ。


「ショウタさん、えっちなこと考えてます?」

「んー、なになにー? 昨日の事が忘れられないって?」

「確かに昨日のことを思い出してはいたけども」

「ん。その割には、覚悟決めてる顔してた」

「旦那様、バナナの影響で元気いっぱいですの?」


 確かにアヤネの言う通り、朝食に食べた一切れのバナナは食べることで全身にエネルギーが漲ったような感覚を覚えた。開けば2メートルを超えるバナナの皮ですら、『魔石変換器』に放り込めば3万ものエネルギーへと変換できてしまったのだ。とんでもないエネルギーを秘めていたのは間違いないが、それが原因でこんなことを考えているとは思いたくない。


「流石ご主人様。度し難いですね」

「……アイラ。分かってて言ってるだろ」

「おや、何のことでしょう。私などがご主人様の心情を推し量るなど、とてもとても」

「白々しすぎる……」

「兄さんも義姉さん達も、イチャつくのは程々にしよう」


 そういうエスも、朝顔を合わせた時は少し疲れているような顔をしていた。話を聞くに、初っ端からLv2を2つ使ったらしい。全部使わされなかった辺りに、シルヴィの優しさを感じてしまう。


「それで兄さん、今日は第二層の攻略でいいんだよね?」

「ああ、そのつもりだ。一応第一層の状況を見てから決めようとは思ってるが、流石に昨日の今日でスタンピード進行が再開しているとは思えないがな」

「それは僕も同感だ。けど、どうやって調べるんだい?」

「そんなの、とりあえず100匹しばけば分かるだろ」

「流石兄さん、強引だけど合理的だね」


 そうして俺たちは第一層の奥地で緑のサルが住む森を4つほど殲滅。出現した『グリーンマントヒヒ』を蹴散らし、煙が霧散したことを確認。

 その後、風が吹いていなかったため、森の中で切り株を探し出し、目的の物を見つけた。


「『真鑑定』『真理の眼』」


 名前:転送の切り株

 品格:なし

 種別:ダンジョンオブジェクト

 説明:696ダンジョン第一層の試練の1つ。このオブジェクトに触れたものを強制的に696ダンジョン第二層へ移動させる。


「試練の一つ、ね」


 そのワードは少し引っかかったが、俺達は全員切り株に触れ、第二層へと移動した。

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