ガチャ481回目:赤い熱情

 煙の中から現れたのは、体毛の赤い3メートルを超える巨大ゴリラだった。


『ウホホホホ!!』


*****

名前:レッドハイゴリラ

レベル:140

腕力:1600

器用:800

頑丈:1600

俊敏:800

魔力:6000

知力:400

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅳ、怪力Ⅳ、阿修羅Ⅲ、怪力乱神Ⅱ、鉄壁Ⅳ、城壁Ⅳ、金剛体Ⅲ、難攻不落Ⅱ、力溜め

パッシブスキル】身体強化LvMAX、体術LvMAX、格闘術LvMAX、精力増強Lv5

アーツスキル】連環拳、木登りⅤ、鼓舞Ⅲ、ドラミング

スペシャルスキル】強圧

★【エクススキル】フェロモン、独占欲


武技スキル:破拳、爆砕鉄拳


装備:なし

ドロップ:レッドキングバナナ、赤の紋章【Ⅰ】

魔石:極大

*****


 サル、マントヒヒと来てゴリラか。


「まあ、そんな気はしてたよ」


 けど、第一層で出てきていい強さじゃないだろ、これ。

 この後の攻略、どうなるかちょっと不安になって来たぞ?


『ウッホホウッホホ』


 そんな事を考えている間、『レッドハイゴリラ』は出現以降こちらには目もくれず、楽しそうに踊り続けていた。傍から見ると愉快な奴にしかみえないが、スキル構成的に絶対無害じゃないだろうなぁ。

 今の内にとスキル構成を皆に伝えてみたところ、アキが手を挙げた。


「ショウタ君、あたしがやってみても良い?」

「ん。良いぞ。マキと一緒にやるか?」

「ううん、1人で挑んでみたいわ」

「じゃ、任すー」

「任されたわ!」


 格闘タイプのモンスターだからか、挑んでみたくなったんだろう。武技スキル持ちでもあるから、上手くいけば取得できるかもしれないしな。

 それに、同じ武器の使い手となれば挑みたくなる気持ちは分かるし、俺も似たような相手が出たらテンション上がるからな。

 槍の『海の騎士』然り、剣の『ゴブリンヒーロー』然り、弓の『クピド』然り。でも、困ったことに人型で武器持ちのモンスターって、なかなか居ないんだよな。俺が挑戦するダンジョンがたまたまそうなだけかもしれんが、今のところ動物系への偏りが多い気がする。


「あんたの相手はあたしよ!」

『ウホッ!? ウッホホウッホホ!!』


 アキが突っ込むと『レッドハイゴリラ』は興奮した様に『ドラミング』を行なった。それと同時に、奴から感じられる圧力が高まった気がする。

 スキルにもあったが、アレはおそらく自己強化の技なんだろうが……。それにしてもなんか、興奮の種類が戦いに向けたものというより、発情に近いものを感じるぞ?

 接近したアキも感じ取ったのだろう。眉を顰めて拳をギュッと握り込んだ。


「なに発情してんのよ! 『破拳』!」

『ウホッホ!』


 恐らく相手も『破拳』を使ったのだろう。

 同種のオーラを纏った拳がぶつかり合うと、空気が破裂するかの様な音が聞こえて来た。本来なら、今の攻撃はお互いに怪我を負いかねないものだが、ダメージを負ったのは『レッドハイゴリラ』だけ。

 アキは、安心安全の外装を纏っていたのでノーダメージだった。

 

「効いたかしら? わっ!?」

『ウホッホ!』


 奴はダメージを気にしていないのか、構わず殴り続けた。


『ウホッホ! ウホッホ!』

「ちょっ! わっ! 危なっ!?」


 アキは外装を2枚残したまま、敵の攻撃をギリギリで回避していく。だが、敵の攻撃はどれも必殺の威力を込めていた。最初に見せた『破拳』と同レベルの攻撃に見えるが、あのスキルって連続使用できたっけ?


「いえ、ご主人様。『武技スキル』は本来クールタイムが存在します。ですが、一部のスキルと連携させることで連続使用を可能とします。ご主人様の『重ね撃ち』がそうですね」

「なるほど。じゃああの『連環拳』がそうかな」


 意識していなかったが、確かに一撃必殺級の技が多い『武技スキル』が連発できたら強すぎるもんな。特にモンスターが使って来た日には、途端に危険度が跳ね上がるだろう。

 ……あれ? でも……。


「『クピド』の奴、『重ね撃ち』を持ってたはずだが、『魅惑の矢』も『破魔の矢』も重ねて来なかったな」

「ご主人様も覚えたての頃は重ねられるのは『紫電の矢』までで『雷鳴の矢』は重ねられなかったではないですか。きっとそれと同じでしょう」

「なるほど。本人の技量か、もしくはスキルレベルの不足が原因か」


 なら納得だな。

 そうして雑談する間も戦いは続き、アキは時折鋭い一撃を放つが、『レッドハイゴリラ』はダメージを無視して連続攻撃を繰り返していた。

 『破拳』の消費はたったの30。『魔力』が6000もある相手がガス欠になるのを待つのは得策ではない。かと言ってダメージを与えていても倒れる気配は一向になく、アキは精神的にジリ貧を強いられていた。


「んもー! しつこい男は嫌われるわよ!!」

『ウホッ!? ウホホホー!!』

「ちょ!?」


 しつこいという言葉に衝撃を受けたのか、『レッドハイゴリラ』は殴りかかる攻撃から、直接アキを掴み取るスタイルに戦い方をシフトした。直線的な攻撃から大振りに腕を動かす攻撃に、さしものアキも対処できなかったのか、ガリガリと外装を削られ、完全に外装を破壊されてしまう。


「『金剛外装Ⅲ』!」


 すぐに外装を貼り直すも、捕まれば何されるかわからない恐怖から、アキは攻められずにいた。


「うぅー……! ショウタ君助けて〜!」

「ああ、任せろ!」

『ウホッ? ……ウホ!!』


 アキの代わりに前に出ると、敵から放たれる圧力がさらに高まり、ついでに怒気も飛んで来た。女性相手だと『ドラミング』でステータスを向上させて、男が現れたら怒りと共にパワーアップ。

 こっちはもしかして、『独占欲』の効果か? まあ、なんでも良いさ。


「アキは俺のものだ。勝手に独占しようとしてんじゃねーよ」

『ウホホッ!!』


 相手の拳に、今まで以上の圧力が込められる。もう1つあった武技スキルの方だろうか? だがそんなのは関係ない。それ以上の力で捻じ伏せる!


「『閃撃・剛』!!」


 剣から放たれた剣閃が、相手の拳もろとも、その身体を切り裂いた。


【レベルアップ】

【レベルが93から164に上昇しました】


 経験値が美味しいのは良いが、第一層でこれかぁ……。

 そんなナイーブな気持ちに陥ろうとする俺を引き留めるかのように、1つのメッセージが俺達全員の前に表示された。


【特殊モンスターが討伐されました】

【スタンピード進行が一部リセットされます】


 おっ?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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