ガチャ480回目:赤いバナナ

「……ふむ」


 エンリルによって反映された第一層のマップを改めて眺めてみたが……なるほど。確かに、次の階層への階段が存在しないな。『アトラスの縮図』の能力を活用すればこのマップの攻略方法なんかも出てくるんだろうけど、それはつまらないしやりたくない。

 にしても、マップに映る赤点はどれもこれもレッドエテモンキーで、変わり映えしないな。そして確認する限り、全ての森に50体ずつ存在していて、平地にも3~5体の群れがそこかしこに散らばっている。このままレアⅡを討伐したら次は強化体を狙ってみるとして、その後はどうするかなぁ。


 そんな事を考えつつ煙を見ていたが、まだ湧いてくる気配はない。『思考加速』も使わずゆっくりと考えていたから、今ので恐らく5分くらいは経過したはずなんだだが、こりゃ10分コースかな?

 なら今のうちに、他の疑問を解いておくか。


「アイラ、今回の雑魚ドロップだけど」

「はい。こちらですね」


 アイラの手には、1房5本のレッドバナナ。その名の通り、赤いバナナがあった。

 バナナと名がつくからには、こいつらはちゃんとフルーツのバナナなんだろうけど、この色合いだと食欲は……そそらんなぁ。

 剥いたらちゃんと中身は白いんだろうか?


「全部5本だったのか?」

「いえ、7割が5本でしたが、残りは4本でした」

「俺の『運』を持ってしても違いが出るのか。それだけ要求値が高いのか、それともどれだけ『運』を高めても最後は確率になるのか……」


 まあ俺の場合確率になったとしても、最後には圧倒的なラックパワーでねじ伏せちゃうのが今までのパターンではあったのだが。それが機能してないというのも妙な話だ。

 まあそれは良いとして……。


「エス、お前達が言ってた渋いドロップって、これも当てはまるのか?」

「ああ。といっても、こんなまとまって出てくるのは初めて見たよ。多くても2本が最大だったはずだよ。そしてそれ以外のほとんどが1本ドロップなんだよ。また、ドロップ率も魔石と同じくらいで、10体につき1本くらいで出れば良い方だね」

「ふーん。でも、食料が出るなら多少渋くても良いんじゃないか?」

「……食べられればね」


 エスが苦い顔で言う。

 その表情を見て、イリスが滅茶苦茶残念そうな声を上げた。


『プルン……』

「ああ、決して不味いわけじゃないんだ! ただ、当たり外れの度合いが酷くてね……」

「と言うと?」

「このレッドバナナ、別名があってね。ロシアンバナナって呼ばれてる」

「……あー。?」


 俺だけでなく、彼女達も察しがついたらしい。苦い顔でバナナを見ている。意味が理解できていないのはエンキ達くらいだ。


「そういうことさ。たまにハズレのバナナが入っていて、物凄く辛い。でも、見た目じゃ判別がつかない。『鑑定』でも『真鑑定』でも見えないんだ」

「なるほど? じゃあ……『真理の眼』」


 名称:レッドバナナ

 品格:≪通常≫ノーマル

 種類:食材

 説明:皮が赤い品種のバナナ。

 ★種から激辛エキスを流す別品種が存在する。

 ★ドロップから3時間経過すると劣化し始め、種の赤い斑点が増加する。


「ふむ? 見えたが……よくわからん説明があったな。それに、5本ともちゃんと食えるやつみたいだな。アイラ、全部出してくんない?」

「畏まりました」

「んー……」


 1つ1つチェックしていくが、1房5本の方は今のところ問題なさそうだ。

 んで、1房4本の方は……。


 名称:レッドエキスバナナ

 品格:≪通常≫ノーマル

 種類:食材

 説明:レッドバナナの近縁種。種から激辛エキスが流れており、身の大部分が辛みに汚染されており、非常に辛い。

 ★スコヴィル値:約50万

 ★ドロップから3時間経過すると劣化し始め、種の赤い斑点が増加。劣化が進むほどスコヴィル値が増加し、最大3倍にまで増加する。

 ★種に最初から赤い斑点が3つあるのが特徴。


 普通に見れたな。だが、『真鑑定』だけでみると普通のレッドバナナに見えるようだ。

 なんつー意地の悪い食い物だ。つーかこれ……。


「4本のやつ、全部レッドエキスバナナだな。どんだけ出てくるんだよ」


 俺は皆に見えた情報を共有し、レッドエキスバナナの身を割って中のタネを見てみた。

 すると、顕微鏡が必要なレベルでだが斑点があるのが分かった。俺は『知覚強化Ⅱ』、ミスティは『銃器マスタリーLvEX』、エスは『風』の力でなんやかんやして視えたらしい。エスの能力は説明されたが、人体科学はよくわからん。

 ちなみに、普通のレッドバナナは斑点があったが、1個だったり2個だったりとバラバラだった。


「まさか、劣化前の段階でしか判別できない方法があったなんて……。ドロップしてすぐ調べるとかしないと判別できないんじゃ、いままで気付けなくても仕方ないか……」

「でも、当たりも美味くはないんだよな?」

「そんな事はないよ。見た目がアレなのと、ハズレを引かなかった安心感で味がしないって話もあるけど、糖度で見れば市販のバナナとそう変わらないらしい」

「そうなのか」

『プルプル!』


 イリスが我慢できないらしく飛び跳ねている。


「んじゃ、食って良いぞ」

『プル!』


 イリスがレッドバナナの5本をヘタが繋がったまま皮ごと丸呑みし始めた。彼の体内で、ゆっくりとレッドバナナが溶けていく。


「美味いか?」

『プル~ン』

「兄さん、彼は何て?」

「普通だそうだ」

「ははっ、そうか」

「ん。普通」

『プルプル』


 エスとミスティがイリスを撫でていると、煙が膨張を開始した。

 なんだかんだで煙が出現してから、15分以上は経過したはずだよな。レアⅡ1匹にそんなに掛かるって事を考えると、このダンジョンの攻略、相対的に時間がかかるかもしれないな……。

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