ガチャ479回目:赤い大将

「とりあえず、視えている森から潰していくか。あ、ミスティ、エス。とりあえず手出し厳禁ね。あと、判明してる第二層への移動する方法も、教えるのは無しね。自分で見つけるから」

「ん。わかった」

「モンスターの数を減らしてくれるなら、後は兄さんに任せるよ」

「おう。サンキュー」


 それじゃ、狩りを開始しますかね。


『ウキッ!』

『ウキッキ!』


 鬱蒼とした森に到着すると、早速2匹のサルがお出迎えだ。

 しっかし、どいつもこいつも、『いかにも怒ってます』って顔しやがってまぁ。……あ、これもエスがあげてた他の要素だったりするか? 怒ってると危険だとか、そういう……。

 まあ、とりあえず倒していけば分かるだろ。


『キキッ!』

「おらっ!」


 俺は木の上で鳴き続け、降りてこないサル共に向かって大きく飛び上がり、剣を横方向へ一閃する。


『斬ッ!』


 一刀両断にされたレッドエテモンキーは煙へと変わった。そして次の瞬間、2匹とは少し離れたところにいた奴らが叫び声をあげ、その叫びは森中を伝播していく。


『キキィー!!』

『キキィー!!』


 沢山の気配がこちらに向かって動くのを感じた。


「あれ? もしかして、スタンピードが発生した?」

「いや、森に集まっている連中は一度でも手出しすると、一斉に襲い掛かって来るんだ」

「なるほど。なら、逆に大歓迎だな。『天罰の剣』!」


 『魔力』がごっそりと抜ける感覚と共に、2本の剣が出現した。


「襲い掛かってくるサルの相手をしろ」


 命令を理解したのか、『天罰の剣』はゆっくりと浮上し、俺がしたサルに向かって突進を開始。そして付近の樹木ごと両断して見せた。


「おおー。便利ー」


 そんな感想を漏らしている合間にも、『天罰の剣』は次々とサルを煙に変えていく。

 俺の持つ技量は全て再現し、更には威力面で俺の本来扱えない全力『腕力』の8割を参照して再現するとは鑑定の結果に出ていたが、とんでもない威力だな。

 俺が現時点で扱える『腕力』では、腰を据えて切り捨てるならまだしも、飛び上がった状態で木々ごとモンスターを両断するのは難しい。

 先程俺が倒した2匹が掴まっていた木は、一閃に巻き込まれてもまだ健在だったしな。木もろともモンスターを両断するとなると、『天罰の剣』のように『腕力』もそうだが、技巧も上げなきゃいけないだろうな。


 そうして時折処理しきれなかった奴らが俺のところまで辿り着いたが、ほとんどのサルは『天罰の剣』によって処され、森にいた全てのサルは駆逐された。


「アイラ、数は?」

「魔石、スキルオーブ、ともに50個です」

「なんだ、たったのそれだけか。エス、1つ聞くが、ここの階層ってのは見えてる通り、どこまで行っても平地と森しかないのか?」

「ああ、そうだよ」

「なら、アレやっとくか。エンリル!」

『ポ!』

「この階層ぐるりと一周してきて。念のため、外装は張るようにな」

『ポポー!』


 飛び立つエンリルに『視界共有Ⅱ』を施しつつ、俺達はそのまま近場の森へと進軍。同じようにサル共を殲滅した時のことだった。


「お、来たか」


 最後のレッドエテモンキーを切り捨てたその時、煙が発生しその場でモクモクと焚きあがったのだ。


「エス、サル討伐後の煙だが、視えていたか?」

「……いや。まるで視えていなかったな」

「アキとマキは?」

「辛うじて、ね」

「ちょっとぼやけて見えます」

「『運』300でそのレベルか……」


 となると、ここのレアは認知するのに最低でも3桁。確実に湧かせるにも5桁必要になるのかもしれないな。レベル15のモンスターで発生するレアの割には、要求値が随分と高いな……?

 そう思っていると、煙はその場で膨張を始めた。


『ヴキキー!』


「『真鑑定』『真理の眼』」


*****

名前:レッドマントヒヒ

レベル:80

腕力:1000

器用:750

頑丈:900

俊敏:700

魔力:300

知力:300

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅲ、怪力Ⅲ、鉄壁Ⅲ、城壁Ⅲ

パッシブスキル】身体強化Lv2、精力増強Lv2

アーツスキル】木登りⅢ、鼓舞

スペシャルスキル】威圧

★【エクススキル】フェロモン、弁天尾


装備:なし

ドロップ:赤色に輝く香油

魔石:大

*****


「サルの次はヒヒか。マキ、アヤネ」

「いつでもオッケーですっ!」

「準備できてますわ!」

「よし。軽く捻ってやるか」



◇◇◇◇◇◇◇◇



【レベルアップ】

【レベルが42から93に上昇しました】


 斬り捨てた『レッドマントヒヒ』が煙に変わり、その場で再び焚きあがる。これが出るという事は、つまり次もあるという事だ。

 しっかし、5分ほど動画撮影のためにわざと攻撃を受けてみるために、あえて接近戦で挑んでみたのは失敗だった。


「はー……。臭かった」


 たぶん相手の【エクススキル】に含まれていた『フェロモン』のせいだろうけど、独特の獣臭さを何倍にも濃縮したような異臭が常について回ってたんだよなぁ。『悪臭』ってほどの刺激臭ではないにしろ、そんな臭い身体をブンブン振り回すもんだから、正直この5分間はほぼほぼ呼吸をしなかった。


「ご主人様、無呼吸戦闘お疲れさまでした」

「いつの頃かアイラが何分でも息を止めていられるって言ってたのを思い出してな。やってみたんだが、割とやれるもんだな。まあでも苦しい事は苦しいから、ちょっとパフォーマンスは落ちてしまったが」

「別の事に神経を注ぎ、更には初挑戦という中、あれだけ動ければ十分です」

「んで、エス。コイツって見たことあったか?」

「……いるのではという憶測はあったけど、実際にお目に掛った事は無かったね。そんな眉唾な存在をすぐに出現させるなんて、本当に兄さんには驚かされるよ。……倒せばすぐにアイテムドロップしない場合は、次のレアモンスターが出る証明でもある、だったかな。今兄さんは、を待ってるってことだよね?」


 流石にエスもわかって来たか。

 エスに対して頷きで返してやると、先程偵察に行かせた仲間が戻って来た。


『ポポー!』

「おかえりエンリル」


 『視界共有』によるエンリル視点でこの第一階層の全景が見れたおかげで、マップは完成できた。まあ、レアモンスター戦に、息を止めつつ別の視界での光景を脳で処理して地図に写し取る作業は中々に大変だったが……。

 やってみれば何とかなるもんだな。

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