ガチャ478回目:地雷原

「ここがそのダンジョン……。随分と物々しいな」


 翌朝、俺達はさっそく『『幻想ファンタズマ』ダンジョン』へとやって来ていた。ダンジョンの周辺は背の高いコンクリートの壁が随所に張り巡らされており、俺達はその上空に設置された通路から壁の内側を目指す。壁の内部は迷路状になっており、所々に地雷を示す髑髏マークの看板などが設置されていた。

 平和な日本では考えられないような衝撃的な光景に、彼女達も言葉を失っていた。


「まあ、それなりの頻度で階層スタンピードを引き起こしているからね。この5年間、こちらの予想を超えて地上にあふれた回数は片手じゃ数えきれないくらいにはあるんだ。ここ最近では管理も慣れて来ているから、第二層以降で管理不足によるスタンピードは起きていないけど、それでも起きる寸前まで行ってしまったことが何度かあったんだよね」

「警戒を忘れないためにってことか」


 というかその説明だと、第一層はスタンピードが頻発しているってことか? なら、この地雷原も現役で使用中ってことになるが……。まあそれは、中で確認すれば良いとして。


「そんな頻繁にスタンピードを経験してるなら、この重苦しい空気も理解できるが……。つーか、地雷とかリアルで初めて見たんだが、こんな現代兵器がモンスターに効果はあるのか?」

「モンスターにも知性のあるタイプと、無いタイプの2種類に分けられるけど、そのどちらであっても溢れ出た第一陣なんかは、結構引っかかってくれるかな。ダメージもそれなりに期待できて、低階層のモンスターの場合は大体これで一撃だ。数を間引いてくれて、更には勢いも削ってくれるから、地雷はいい仕事をしてくれるんだよ。ただ、第二陣以降になると途端にかかりが悪くなるんだよね。恐らくスタンピードで出てくるモンスター達は、何らかの情報共有手段を持ってると僕達は見ている。でもスタンピードが起きるたびに第一陣は引っかかってくれるから、その共有能力も万能ではないようだけどね」


 ここのスタンピードってWave制なのか。

 それとも、階層スタンピードは全部そうだったりするのかな?


「ちなみのあの地雷は、ダンジョン内には流石にないよな?」

「そりゃあね。一定の効果が見込めるとしても結局使い捨てである以上、ダンジョン内に設置してもデメリットしかないよ。……ちなみに、兄さんが心配している点も大丈夫だよ。ダンジョンが発生する前の旧時代製と、魔石研究で誕生した魔導具製の2種類があるけど、『頑丈』が500を超えていれば前者は効果が無いそうだ。後者の方は都合のいいがいないらしくて、1500程度でも怪我を負ったらしい」


 刑期削減のための人体実験ってやつか。


「怖い話だな」

「けど、兄さんのステータスなら平気だろう?」

「まあそうだと思うが、怖いもんは怖い」

「ははっ、それもそうか。でも、兄さんは彼女達にもシールドを覚えさせているだろう? なら、もしも踏んでしまっても、慌てずシールドを張れば無傷でやり過ごせるさ」

「ふむ……」


 ……あれ? もしかして俺、エスにも思考が読まれ始めてるか??

 そう思っていると、うちの彼女達がくすりと笑った。


「ご主人様の事を理解してくると、最初は何となくですが大体わかってくるようになるものです」

「ショウタ君、割と考え方というか、方向性が一貫してるというか、ブレないからね。予想が立てやすいのよ」

「……単純って事?」

「何考えてるか分からないよりずっといいですよっ」

「そうですわ。旦那様と心が近いと嬉しいのですわ」

「……そういうことにしておくか」


 そうしてエスの方を見れば、ミスティが頬を膨らませていた。


「むぅ。エスに負けた」

「はは、ミスティもそのうち分かって来るさ。兄さんの思考回路は1にダンジョン、2に彼女達だ。正確にはこの優先順位も時と場合によって変動したりするみたいだけど、基本はこれだから忘れないようにすれば視えてくるさ」

「ん。頑張る」

「頑張らなくても良いぞー……」


 そんな感じでゆるーく会話をしながら、俺達はダンジョンのゲートをくぐって行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 ダンジョンを降りた先は、平原だった。

 所々に森があるのは視認できるが、それ以外特筆すべき点は見当たらないフィールドで、そこかしこにモンスターと戦う冒険者の姿が見受けられる。なんというか、『初心者ダンジョン』の第二層から、川と丘陵と砂漠地帯を除外したようなフィールド構成だな。

 一見してここまで平和に見えると、本当に切羽詰まってるダンジョンのようには思えないが……。


「……不味いな」

「ん? どうしたんだ?」

「ああ、第一層のモンスター飽和率が100%を超えようとしている。このままだともうすぐスタンピードが起きてしまいそうだ」

「マジで? ……どこを見てそう思ったんだ?」


 辺りを見渡しても、その判断材料がわからない。

 いたって平凡な平原に見える。


「ああ、まず1パーティが抱えてるモンスターの数が多い。その上、フィールドに点在している森からは大量のモンスターの気配がするし、敵のレベルも最大値だ。それに……」


 エスは苦い顔をした。まあ、帰ってきて早々これじゃ、嫌な気にもなるか。さっきも第一層は頻繁に階層スタンピードを起こしてる風な感じだったし。


「これは、早急に狩らないと不味そうだ」

「ふーん? モンスターって、あれだよな?」


 ちょうど『真鑑定』が届く位置で戦っているチームがいたので、覗き見てみる。

 相手は、燃えるような真っ赤な体毛をした、怒り顔のサルだった。


*****

名前:レッドエテモンキー

レベル:15

腕力:130

器用:220

頑丈:80

俊敏:200

魔力:200

知力:50

運:なし


アーツスキル】木登り


装備:なし

ドロップ:レッドバナナ

魔石:小

*****


 エテって確か、サルって意味だったような?

 となると、赤猿々……? 変な名前だな。


「にしても第一層からレベル15か。初心者にも向かないダンジョンなんだなぁ」

「今の姿はね。実は、ここも出現当初とは違っているんだよ。ダンジョン出現当初の頃は、第一層のモンスターはレベルが3~5くらいしかなかったそうだよ」

「ってことは、『ケルベロス』の入手後と、『風』の入手後でレベルが上がったってことか?」

「ああ。ミスティが力を手にした段階で、奴らのレベルは8~11となり、僕が力を手にしたら12~15になったんだ」

「そういや、さっきもレベルが高いって言ってたな。つまり、相手のレベルが全部15の最大値の場合は……」

「ああ。スタンピード寸前を表している。まあ、他にも判別する要素はあるんだけどね」

「はー……」


 わかりやすくて良いね。

 とりあえず、俺はいつも通りやってみますかね。

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