ガチャ476回目:模擬戦

 外装を展開した俺は、強化した『ハイ・ミスリルソード+5』を2本とも抜き放つ。この武器は研磨したことで、本来の輝きに加え、底知れぬオーラを放つようになっていた。

 見るものが見れば、これが普通の『ハイ・ミスリルソード』とは別ものであることが分かるだろう。

 対するミスティは、緊張など微塵も顔には出さず、二丁拳銃状態の『ケルベロス』を向けた。


「まずは1発」

「来い!」


『パァン!』


 乾いた銃声と共に、剣閃が走った。

 ミスティの放った銃弾は真っ二つに叩き割られ、俺の背後の壁に2箇所の傷をつけた。『金剛外装』が削れた様子もない。

 どうやら、上手くいったらしいな。


「……流石ショウタ」

「おお、やればできるもんだな」

「勝負を挑んといて、自信なかったの?」

「半々かな」


 ミスティと笑い合うと、静まり切った会場にシルヴィの実況が響き渡った。


『おおー! すごーい! 日本の『ニュービー』、ミスティの銃弾を叩き斬ったー!!』

『おおおお!?』


 ミスティの射撃は、いままでに何度か拝むチャンスがあった。

 流石に飛んでくる銃弾が見える位置には居なかったが、彼女の動きは見惚れるくらいには凝視していた。だから『予知Ⅳ』が仕事してくれるんじゃないかと期待をしてのものだったが、ちゃんと働いてくれたみたいだな。

 それに、事前に『ハイ・ミスリルソード』を+5まで研磨できたのも大きいと思う。研磨前の剣だったら、最悪押し負けてたかもしれない。ミスティが放つのは通常弾とはいえ、弾を発射しているのは最高峰の『幻想ファンタズマ』武器だ。銃弾の1発1発の威力は馬鹿にできない。


「正直、当たらなくてホッとしたけど、なんだか無性に当てたくなってきた」

「ははっ、俺は当たってやる気はないぞ。遠慮なく来い!」

「ん!」


 そこかはらミスティも火がついたのか、2発、3発と同時に撃つ数を増やしていき、次第に連射するようになっていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



『すごいすごい! 目にも止まらぬ銃撃と剣戟の応酬! 両者、一歩も引く気がありません!』


 ミスティは定位置からの射撃では埒が明かないと判断したのか、高速で移動を開始。残像を描きながら四方八方から銃弾を叩き込むが、ショウタもまた時に切り払い、時には回避を織り交ぜて凌いでいく。戦いが始まって約3分ほど経過したが、未だショウタの外装は健在だった。


『さて、中々決着がつきそうにないから、ここで彼らの解説に移るわ。といっても、皆には『雷鳴の魔女』について、今更説明するまでもないわよね!』

『そうだね。彼女の武器『ケルベロス』は最高峰ランクの『幻想ファンタズマ』武器。今まで数々のモンスターを煙に変えて来たし、並みの武器や使い手じゃ太刀打ちできない強者だ。それに正面から渡りあえているだけでも、皆の中で彼の評価は変わった事だろう』

『そうね、ここにいる半分くらいはもう私達の実況より、目の前の戦いに夢中になってるんだもの』


 ミスティとショウタが躍るように切り結ぶ光景に、観客はすっかり魅了されていた。


『さて、何人が私達の実況を聞いてるかは知らないけど、ちゃんと実況の仕事もしなきゃね。それじゃ早速、皆が一番気になっていそうな所を聞いてみましょうか。エス、今回の勝利条件にある『ニュービー』のシールドについてよ。あれ、私達がよく知るシールドとはやっぱり別物かしら?』

『ああ、そうだね。彼が持つシールドは、この国で産出されるものとは完全に別種だ。僕達がよく知るシールドは、スキルのレベルやシールドの種類によって吸収量が異なるが、総じて『一定のダメージを無効化するまで有効化』されるというものだろう?』

『そうね。普通のシールドだと、ミスティの銃弾を受けたら一撃で叩き割られるどころか、貫通してダメージを負うはずよ』

『その点、彼が扱うシールドは完全防御だ。どんなダメージも1度だけ無効化する性能をしている。その分、消費が激しいなどのデメリットもあるみたいだけどね』

『完全無効化!? なるほど、破格のスキルな訳ね!』


 そうして2人が解説を続ける中でも戦いは続いていたが、突如、乱射していた射撃を中断し、ミスティがショウタから距離を取った。そして手をクロスさせると、祈るように目を閉じた。


『おおっと、出たー! ミスティの武技スキル『クロック・スコーピオン』だー!』

『攪乱からの乱射ですら防がれた以上、数で攻めるならあれしか残っていないだろうね』

『完全に無効化の守りを突破するにはうってつけの技ね!』


『ドドドドドンッ! ドドドドドンッ!』


 ミスティが引き金を引くと、『ケルベロス』から合計10発の弾丸が飛び出した。だが、その弾丸は飛び出してすぐの位置に停滞し、空中に浮かび続けている。


「ショウタ。これ、防げる?」

「……あー。余裕かも?」

「ふーん? じゃあ、お代わりをあげるね」


『ドドドドドンッ! ドドドドドンッ!』


 停滞する弾丸が20発にまで増加し、全ての弾がショウタに照準を合わせるかのように角度を変えた。


「これでも余裕でいられる?」

「……やってやるさ」


 ショウタが不敵に笑うと、ミスティもひっそりと口角を上げた。


「狙い撃て。『クロック・スコーピオン』!」

「『無刃剣』!」


『ドガガガガッ!!!』


 20発の弾丸と、無数の剣閃が激突。会場に轟音が鳴り響き、その衝撃に爆風が起きた。

 観客たちが突然の出来事に目を覆い、ゆっくりと目を開くと、そこには外装の輝きに身を包んだショウタと、両手を挙げたミスティの姿があった。


「……ギブアップ」

『……勝者、日本の『ニュービー』ショウタアマチ!!』

『おおおおお!!!』


 この日放送された番組は高視聴率を叩きだし、世界中に放映されるのだった。

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