ガチャ462回目:歓迎会
『ダンジョンコア』の部屋から戻って来ると、ミスティとエンリルが出迎えてくれた。エンリルはミスティの膝の上で省エネモードになっているのか、羽を畳んでお休み中だ。
「ん。おかえりショウタ」
『ポポー……』
「ただいま。……なあミスティ」
「ん」
「『ダンジョンコア』からも聞いたが、やっぱり『ダンジョンNo.696』ってところは、聞けば聞くほど悪意あるダンジョンだなって感じたよ」
「ん。攻略、難しそう……?」
「いや? 攻略はするが。ただ、製作者は性格悪いなって話だよ」
「……ふふ、攻略するのが当たり前って顔してる。ショウタ、カッコイイね」
「そうか? 惚れ直した?」
「ん。した」
ミスティが甘えるように体重を預けてくる。今日でだいぶミスティとの関係性も深まったよな。
……けど、いくらミスティが、俺の原点である始まりの『アンラッキーホール』が見たいって言い出したとしても、本来今日はデートのはずなんだよな? 『ハートダンジョン』での『黄金蟲』討伐兼花畑デートをデートだと言い張る俺でも、これをデートとはとても言えないぞ。
だってやってることは、薄暗くて見所のない洞窟の中で、ひたすら『ダンジョンボス』と連戦してるだけだもんな。しかも、『ダンジョンコア』での問答を挟んだせいで、日も暮れかけている。スタートが昼過ぎって言うのも、今回のデートでは致命的だ。
このまま帰るのも忍びないし……。そうだ。
「ミスティ、今晩空いてるよな?」
「ん。あいてる」
「なら、今日うちに来ないか?」
「ん。それ、アイラ達と住んでる家?」
「そう。良ければだけど」
「……行きたい」
「よし、それじゃ帰るか」
「ん」
迎えにアイラを呼んで、俺達はそのまま自宅へと直帰。
突然の来客ではあったが皆ミスティを歓迎してくれて、俺たちは盛大にパーティーを開催した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そしてミスティがお風呂に入ったタイミングで、俺は切り出した。
「皆、聞いてくれ。3つほど伝えたい事がある」
「3つも? 2つだけだと思ってた」
「え? 予想されてたの?」
精一杯報告すべきことを考え抜いたのに、彼女達には内2つを予想されていたらしい。そう告げたアキだけでなく、他の皆もその2つに心当たりがあるようだ。
「ちなみに、何がくると思ってたの?」
「まず、今日ミスティを抱くって決めたことでしょ?」
「うぐっ」
一番緊張した事を先に言われてしまった。これ、言うよりも言われる方が謎のダメージあるな。
「もう1つは、『
「旦那様、ミスティちゃんのお話を聞いて助けてあげたくなったんですわよね?」
「ほんと、皆には隠し事ができないなぁ。てか、あのダンジョンの話、皆はもう聞いてたんだ?」
「はい。『ハートダンジョン』の第四層で、ご主人様がアリの攻略に勤しんでいる時です」
あの時か。そういえば女性陣で内緒話してたな。
てっきり、ミスティを迎え入れる為の話し合いをしているのだとばかり思ってたが、事情もくみ取っての事だったか。
「ふふ。ですが、想定通りではありましたが、想定通りだからこそ安心もしました」
「そうね。ショウタ君は見捨てない選択を最優先にしたんだもの」
「それでこそショウタさんです」
こそばゆいが、どうやら彼女達がミスティの事情を黙っていたのは、この先どこのダンジョンから攻略するかを、完全に俺に委ねてくれたからみたいだ。俺が求めたものにだけ的確に答え、余計な情報を伝えず俺が望むままに攻略をさせてくれる。今までも高い『運』のおかげか俺が選んだ攻略ルートで上手くやってこれたし、これからもそのつもりではあったが……。
やっぱ、俺は恵まれてるよな。恐らくその行動は、彼女達だけでなく義母さん達も同じで、俺に行動を委ねてくれているんだろう。
「……あっ」
義母さん達で思い出した。
「どうされました?」
「ごめん。報告する事3つじゃなくて4つだったわ」
「えー、そうなの? どんな話?」
「いや、それは関係者を呼んで話そうと思う。だから皆、急で悪いけど明日義母さん達をうちに呼んでくれないか? エスはミスティに呼んでもらうからさ」
俺の言葉に、彼女達は顔を合わせた。
「緊急性の高い案件なのですね。畏まりました」
「はわわ。少し緊張しますわ」
「では私の方でもお母さんの予定を聞いておきますね。たぶんショウタさんからの呼びかけなら、すぐに飛んで来てくれると思います」
「ちなみにショウタ君。その緊急性の高い話って、最初に提示した3つに入ってた? それとも忘れてた方?」
「……わすれてました」
いやー、完全にもう1個の方に思考が持ってかれてたんだよな。
皆微笑ましそうに見てくるけど、仕方ないじゃん。だって
「あはは。ショウタ君らしいわね」
「でも、緊急性が高いなら今すぐにでも始めないんですか? この時間なら、オンライン通話ができると思いますよ」
「いや、今日はしない。だって今日、ミスティとのデートの日だもん。この後もミスティとの時間が控えてるし、それを削るつもりは毛頭ないよ」
「ショウタ、ありがとう」
突然、背後に気配が生じた。そして柔らかい感触と一緒に、お風呂上がりのめちゃくちゃ良い匂いが鼻孔をくすぐった。
「何の話か知らないけど、私のために時間を割いてくれてるんだよね。すごくうれしい」
「なんだミスティ、聞いてたのか。気配消されたらびっくりするだろ」
「ん。ごめん。ついくせで」
そう言うもミスティは離れるつもりがないのか、くっついて離れない。彼女達も俺とミスティとの時間を邪魔するつもりはないのか、静かに見守ってくれて……ん?
皆、すごく困ったような顔をしていた。アイラに至っては呆れていた。その視線の先は明らかに背後のミスティに……。
「……うおっ!? ミスティ、服はどうした!?」
「ん。このあとする。だから必要ない」
「必要あるわ! 初めての人んちで全裸で動き回る奴があるか!」
そういやミスティには羞恥の概念が無さ過ぎてヤバイとか、エスが嘆いてた気がする。
その時はふーんとしか思ってなかったが、ここまでとは思わなかったぞ。
「ミスティ様。ご主人様は脱がせるのが好きなのです。ですので、先に部屋に行って着替えて、湯冷めしないよう待っていて下さい。大事な話が終わったら向かわせますので」
「そうなの? わかった。着替える」
そう言ってミスティは小走りで俺の部屋へと向かっていったのを気配で感じた。しかし……。
「誰が脱がせるのが好きだって?」
「嘘は言ってませんが」
……そうなのか?
と、疑問を口にしようとしたが、墓穴を掘りそうなのでやめておくことにした。
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