ガチャ453回目:デートウィーク⑤

【休暇十二日目】


「お兄様、お待たせしました」

「おお、ハル。……うん、今日の服、似合ってるぞ」

「あ、ありがとうございます」


 今日のデートはハルとだ。

 カスミから聞いたんだが、どうやらハルは借金のこともあって、今までまともに遊びに行った事がないらしい。遊ぶ経験がない点は、まるでどこぞの専属みたいだが、あっちは仕事が楽しくもあり忙しくもありで、遊ぶ暇がなかったというタイプだが。

 そういうこともあり、デートの内容はカスミとイズミで決めたらしい。その詳細は昨日カスミから聞いているので、俺が率先してエスコートしようかな。ちなみにその間、カスミはうちの彼女達を家に招待して昔話に花を咲かせるらしい。


「ハル、行こうか」

「はい、お兄様!」


 そうしてたどり着いた場所は、ダンジョンの賑わいによる再開発で建てられた複合型のスパだった。銭湯やら温水プールやらと色々あるらしいが、今回はSランク特権をフル活用して全施設貸切にして貰っていた。

 どうにもこの、レベルの暴力であるオーラとやらは、サングラスとマスクなどで防げることから予想できた事だが、肌面積の露出度合いで威力と範囲が変動するらしい。

 なので上半身裸になるプールや風呂なんかは、高レベルの人間は一般の人が多くいるところには参加できないそうなのだ。


 数日後には『充電』に回すからオーラの暴力からは解放されるだろうけど、うちの彼女達は全員350前後ある。肌を見せる機会はないだろうけど、今後その辺り苦労しそうだし、なんかそういうアイテムとか手に入れられないかなぁ……。


「お、お兄様……」

「ん?」

「カッコ良すぎて直視できません……!」


 貸切スパにて、水着に着替えて来たハルの、最初の一言がコレだった。ハルでさえコレなんだから、一般人には致死毒だろう。早くなんとかしてあげなきゃな。

 なんてことを考えつつ、俺達はスパを全力で楽しみ、そのまま併設されたホテルで一夜を明かすのだった。

 ちなみにその日の夜は、ハルがめっちゃ頑張ってくれました。はい。



◇◇◇◇◇◇◇◇



【休暇十三日目】


「お兄さーん!」

「お待たせしました、お兄様」


 元気娘のレンカと、歩く暴力イリーナが走ってくる。

 普段のシスター服もそうだが、オシャレしたイリーナは破壊力5割増しだな。こんなん人死にが出るぞ。


「……相変わらずすごいな」

「今日もイリーナは通行人を悶絶させてたよー」

「やっぱし?」

「もういつものことだけどねー」

『プルン』


 まるでイリーナの一部がその擬音を発したように思えたが、今のは俺の頭の上から聞こえてきた。


「あれ、イリスちゃんも来てるのー?」

『プルル』

「ああ、今日のデート内容を聞いたら行きたがってな。構わないか?」

「うん、おっけー!」

「イリス様、今日はめいいっぱい楽しみましょうね」

『プル!』


 今日のデートは食べ歩きだ。

 レンカは食べるのが好きみたいで、そういう意味でイリスとは気が合うらしく、ダンジョンでは暇があれば視界の端で戯れあっている様子が何度も視界に入っていた。


「お兄さん、こっちこっちー!」

「ああ」


 レンカに腕を引っ張られ、食い倒れツアーを開催する。どうやら今日はここら一帯にある店を制覇していくつもりらしい。レンカのこの行動はいつも通りなのか、イリーナは何も言わずにただニコニコとついて来ていた。


「お兄さん、次はこれ食べよー!」

「おう」

「おばさま、4人前をお願いしますわ」

『プルン』


 それにしてもレンカは元気だな。こんなにはしゃいでいる姿を見ると、歳の離れた妹がいるみたいだ。……でもカスミの1個下で、イリーナと同い年なんだよな? 不思議な感覚である。


「お兄さんお兄さん!」

「あいよー」

「とっても美味しいですわね」

『プル~ン』


 そうして3軒目、4軒目とハシゴしていくが、レンカの食欲は止まるところを知らない。


「これは、リピート確定ですわね」

「うん、美味しいね!」

「おー……」

『プルルン!』


 ……俺もダンジョンに潜るようになってから食事量は増えたほうだし、マキやアイラが作るようになってからはもっと食べるようになった。ダンジョンでの戦いはエネルギーの消耗が激しいからな。だから出会ったばかりの頃はドン引きしていたアイラのお重も、今ならペロリと平らげられる自信はあった。


「あれも美味しそうー!」

「気になりますわね!」

「……うっぷ」

『プル?』


 だが、そんな俺ですら限界が近いらしい。

 あの小柄なボディに、どれだけ入るというんだ。イリーナもまだまだ余裕そうだ。さすがレンカと付き合っているだけあって慣れてる。


『プルル?』

「……ああ、イリス。あとは任せた」

『プルル!』


 レンカが元気な子で気力に溢れてるのは知っていたが、食べ物が絡むとイリス並みにテンションが上がるのは知らなかったな……。それに、あの小さそうな胃袋のどこに消えて行ってるんだ? あの中にはもしかして、魔法の鞄のように暗闇が広がってるのでは……?

 そんなこんなで食い倒れツアーは真っ先に俺がギブアップ。レンカとイリーナはイリスと共にその後も色んな料理を食べ続け、俺は夜のターンで挽回するのだった。

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