ガチャ451回目:顔合わせ
『……』
沈黙が辛い。
娘さんをくださいと頭を下げたは良いものの、これ、どのタイミングで頭を上げたら良いんだ?
なんだかんだでミキ義母さんもサクヤお義母さんも、紆余曲折があったとはいえ、最終的には2つ返事で了承してくれた。けど、話を聞くにどちらも旦那さんには先立たれていたみたいだし、男親がいるところにお願いするのは初めての試みだった。
最悪ゲンコツが飛んでくるかもしれないが、その場合相手の拳がひしゃげる可能性があるんだよな。その気配を感じたら外装を張るべきだろうか?
そんなことを悶々と考えているうちに、ハヅキのお父さんがやってきて豪快に笑い飛ばしてくれた。
「フッ、フハハハハ! まさかとは思ったが、娘達全員を嫁によこせとは。中々豪胆に育ったものよ! ハヅキよ、中々面白い男に見初められたな!」
「ち、父上!」
「フハハ! ……おっと、ショウタ君。顔を上げなさい」
「……はい」
「娘の反応を見るに、想いに嘘偽りも無さそうだ。であるならば、いくつか確認をしたい。良いかな?」
「答えられる事ならば」
「うむ」
元弟子という事もあって少し緊張してしまうが、嘘は付けない。でも答えられることと答えられないこともある。冒険者なら秘密事も無数にあるので、その辺はハヅキのお父さんも察してくれたようだ。
「ではまず、うちの子らが発する気配が、先月とは見違えるほどに進化している。これは君がやったのか?」
「はい。俺の妻に迎える以上、彼女達の安全を確保する必要がありました。その為に、限界以上に強くなってもらいました」
「ふむ、なるほど……。しかもどうやら、付け焼き刃ではなく、きちんと修練の面倒も見てくれた様だな」
「力は正しく使えてこそですから」
「うむ」
「それに、俺もまだまだ修行中の身です。これからも彼女たち、そして俺自身を守る為に、もっと強くなります!」
「その気概や良し。では最後にショウタ君、君のレベルを聞いても良いか」
念のため周囲を確認する。
入ってきた扉は閉まっており、スタッフもおらず、この場にいるのは彼女達の肉親のみ。監視カメラなどの存在も確認できない。多分、そういうのもカスミ達が気にして手配してくれたんだろう。
「俺のレベルは422です」
「……ほう」
彼から発せられる圧が一段と高まったが、特に攻撃の意思があるようにも見えなかったので、警戒する必要はないと判断し、真顔で受ける。
その反応が良かったのか、彼は満足そうに表情を緩め、快活に笑いながら俺の肩を掴んだ。
「うむ! ショウタ君、君の事を認めよう。これからうちのハヅキをよろしく頼む」
……ほっ。割とあっさりと行ってくれて安心した。
もうちょっと揉めるもんだと思ってたのに。
「アレは戦いにばかり目が行きがちだが、若いころの妻に似て努力家で、気概のある良い女に育ってくれた。本人は自分に魅力はないなどと宣ってはおるが、妻からも房中術の類も学んでおるから嫁に出す事に心配もない。ハヅキなら、君の力となれるよう支えてくれることだろう。思う存分可愛がってくれ」
「は、はい!」
房中術……?
そういえば、カスミとハルと3人で
「アマチさん、うちの娘をよろしくお願いします」
「はいっ。ハヅキ、これからもよろしくな」
「はい、兄上! 微力ながらお手伝いさせて頂きます」
そう告げる彼女を抱きしめ、ハヅキのご両親から祝福をもらっていると、今度はレンカとイリーナが母親を連れてやって来た。
そういえばこの2人は、付き合っていること自体、親公認だったよな。彼女達の親からも、正直
レンカのお母さんは野性味あふれる感じがするけど、優しそうな気配もある。それはそれとして、イリーナの隣にいる人は、ちゃんとお母さんだよな? お姉さんなんてオチじゃないよな??
「アマチさん、初めまして。イリーナの母ですわ」
「レンカの母だ。よろしくなアマチさん」
「あ、はい。よろしくお願いします!」
「ふふ。実は私達、娘からある程度のことは聞き及んでおりましたの。好きな男性ができたから近々一緒に挨拶に来てくださると」
「それも同じ男が好きになったとか、既にその男には将来を誓った女性を何人も侍らせているとか聞いた時は驚いたぜ? レンカはお馬鹿なとこがあるし、イリーナちゃんはおっとりしてるからな。悪い男に騙されてんじゃねーかってさ」
まあ、そうなるよな……。
「ですが、一目見て確信しました。娘たちの判断は間違いではなかったと」
「こんな良い男に靡かなかったら逆に心配になるくらいだぜ。うちのレンカもそこまでお馬鹿じゃ無かったか」
「カッチーン。ママ、いくらなんでもひどくない?」
「事実だからしょうがねーだろ」
レンカと筋肉ママが猫が喧嘩するみたいにじゃれ合っている。
うん、ちゃんとレンカは手加減できてるな。
「ふふ。そういうことですから、アマチ様。娘達をよろしくお願いしますわ」
「はい、お任せください」
「ところで……。アマチ様は、私のような年増はお嫌いですか?」
「全然ありですけど?」
「まあ!」
「流石お兄様ですわ。では今度、わたくしとお母様とで――」
「はーいストップストップ」
俺たちの間にアキが入り込んできて、凄みの増した彼女達に背後から引っ張られる。
「もう! お兄ちゃん、何いってるのよ! 確かにイリーナのお母さんは若くて綺麗で美人だけどっ!」
「ご主人様は本当に度し難いですね?」
「ショウタさん? 後でお話があります」
「旦那様は色魔ですわー」
「あ、はい。ごめんなさい」
普通にイリーナのお母さんが美人すぎて、つい二つ返事をしてしまった。
サクヤお義母さんもそうだけど、俺って色気たっぷりの大人の女性に弱いのかな……? まあでも、見た感じイリーナのお母さんからは未だに熱っぽい視線を感じるし、あのお誘いはガチっぽいよな? そっちの気がある未亡人すら刺激するとか、レベル400パワー舐めてたかも。
そうして挨拶回りは続いて行き、イズミの両親からも軽い雰囲気のまま祝福してもらった。
「イズミちゃん、良かったわね~。昔からの夢が叶って」
「そうだねぇ、絵に描いたような玉の輿じゃないか。おめでとうイズミ」
「ほ、本人の前で言わないでよっ! ちゃんと、心で……通じ合ってるんだからっ!」
いつものキャラ設定はどこへやら。素でテンパるイズミが微笑ましい。
続いて、ハルの母親からは泣いて喜ばれた。そういやハルは借金があって、それの返済のために冒険者として頑張ってるって話だったな。なんでもダンジョンが出現した時に色々と不幸が重なって、お父さんが亡くなったり会社も倒産して苦労したとかなんとか。
彼女達の拠点はこっちだから、下手に向こうで現金を渡すのは躊躇われたが……。ここなら問題ないだろ。
「アイラ、『統率』はあるか?」
「はい。無印でしたら2個御座います」
「んじゃ、それちょうだい」
「こちらに」
「ハルー」
ハルを手招きして、彼女の手にスキルオーブを乗せる。
「お兄様、これは……」
「こいつをオークションに出して借金の足しにしろ。足りなかったらまた言え。でも渡しておいたⅢは機を見て自分に使うんだぞ。それからイズミ、これの販売は任せたぞ」
「かしこまっ!☆」
「お兄様……! ありがとうございますっ!!」
イズミの『SP』を全て『運』に割り振れば、俺に次いで世界で2番目に高くなるといっても過言ではないはずだ。だから今、ハルの事を手助けせずに放っておいても、『疾風迅雷』の稼ぎは今後異次元レベルに成長して、すぐにでもハルは借金を返済してしまうかもしれない。
けど、ハルは俺が貰ったんだ。だから、最初くらいは俺が協力してあげても構わないだろ。
それに、スキルの中で『統率』は単価が高い割に扱いきれないという意味で一番余っているから、手放すのも惜しくない。在庫処分もできて一石二鳥だ。
「さて……」
そんじゃ最後に、今までの流れで自分は関係ないみたいな面して拍手を送り続けてる観客に顔を向けた。
「今日はなんてめでたい日なんだ……! ショウタが沢山の彼女を連れて来た上に、友人の娘達も幸せにできるほど甲斐性のある男に育っていたなんて……!」
「お父さん、何馬鹿なこと言ってるの?」
「うん? どうしたんだいカスミ。もしかしてショウタが離れて行って寂しいのかい? カスミもそろそろ、兄離れしないといけないよ」
「父さん、やっぱ気付いてなかったか……」
「うん??」
父さん、相変わらず鈍いんだよな。
「あのね父さん、さっきの娘さんをくださいってのは、父さんにも言ったんだよ」
「うん???」
「だーかーら! 私はお兄ちゃんと付き合ってるし、結婚するの!! わかった!?」
「……えっ?」
あぁ、父さんの理解を超えて固まっちゃった。
こうなったらしばらく戻ってこないし、ほっといてうちの彼女達を他のご両親に紹介しておくか。
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