ガチャ450回目:異端のサプライズ

【休暇十日目】

 今日から俺達全員は、第二エリアへと移動する為駅で集合する事となった。

 昨日湯治から帰って来た時に、ミスティとのデートはいつになったのかをカスミ達やミスティに電話で確認してみたところ、俺に日取りを決めて欲しいようだったので、詳しく話を聞いてみる。するとどうやら、ミスティがデートでやりたいことがかなり特殊らしく、その詳細を聞いた俺はミスティとの予定を最後に回したのだった。

 まあ、俺からしてみれば特殊でもなんでもないんだが、一般的に見れば特殊らしい。


「きっとミスティちゃんは、ショウタさんと考え方が似ているんでしょうね」

「そうね。面倒ごとは横着しようとするし、考え方も普通からはズレてるところが多いし」

「相性が良いんですのね」

「エス様の苦労が手に取るようにわかりますね」

「……」


 とにかく、ミスティとのデートは第二エリアでのデートが全て終わってからとなったのだった。

 まあ、あっちでデートと挨拶を済ませたらすぐ戻ってくるかといわれると、ちょっとわかんないが。でもエスとミスティと約束した『幻想ファンタズマダンジョン』も控えてるしな。地元のダンジョンに顔を出すのはまた今度にするか。

 ……どんな構成なのかとか、京都にあるという『妖怪ダンジョン』で『霊体感知』がどう働くのかとか、めっちゃ気になるけど!!



◇◇◇◇◇◇◇◇



 特急の電車に乗って第二エリアに到着した俺達は、そのまま都内のホテルへ移動。カスミ達に案内されるままフロントを抜け、小さなパーティ会場へと到着した。

 部屋の入口には『疾風迅雷様 御一行』とあるし、チームで部屋を予約したのだろうか? そうして深く考えずに扉をくぐると、部屋の中央テーブルに何人かの男女が丸テーブルを囲む様に座っていた。男女といっても年若い世代ではなく、どちらかというと大人の部類で、ほとんどが40・50台といったところか。

 彼らは俺たちが部屋に来たことに気付き、各々が振り返る。


「え……?」


 その中の1人と目が合った。

 長年顔を合わせていなかったが、それが誰なのか、一目見て分かった。


「父さん?」

「ショウタ……?」


 研究職の仕事を再開した影響だろうか。昔のくたびれた様子からは一変し、今の父さんからは強く生き生きとした生命力が感じられた。

 でも、なんでここに父さんが……。いや、考えるまでもない。犯人はどう考えても……。


「カスミ、謀ったな」

「もう、人聞きの悪いこと言わないでよ。お兄ちゃんの時間は貴重なんだよ? だから、6回に分けて浪費するより1回に纏めてしまった方が良いでしょ。ちなみにこれ、全員の総意だから」

「浪費ってお前ら……。って待て、6回分? ってことはつまり……」


 カスミ達はそれぞれが関係のあると思われる大人のそばに立ち、にこりと微笑む。


 カスミの隣には未だ唖然とした様子の父さんが。

 ハルの隣にはちょっと幸薄そうな女性が。

 ハヅキの隣には強者の風格をバリバリに出している夫婦が。

 レンカの隣にはレンカを大人にしたような格闘家っぽい筋肉質な女性が。

 イリーナの隣にはおっとりした姉のように瓜二つの女性が。

 イズミの隣にはほんわかした夫婦が。


 今の時代、片親なのは珍しくないけど、それにしてもどの家庭も個性的だなぁ。


「そういうこと!」

「サプライズ成功ー!」

「ごめんねお兄様☆」

「お前ら……。はぁ」


 その話、全員のご両親から承諾はもらってるのか? ……いや、多分もらってないよなコレ。

 他のご両親に会うのは初めてだから表情の機微はわからないけど、父さんの反応を見るに、よく分かってなさそうだ。めっちゃ困惑してる。どうしたものかと思っていると、1人の強面の男性が動いた。

 恐らく、立ち位置的にも剣士としての風格的にも、ハヅキのお父さんで間違いないだろう。ていうかこの人、俺の記憶が確かなら何度か見た事がある気がするぞ? つい最近でも何度かあるし、大昔にも……。


「ふむ、君がアマチ殿の倅か。テレビで見た時は驚いたが……大きくなったな」

「え、俺をご存知なんですか?」

「ああ。昔、うちの道場に来ていたことがあっただろう。その時からアマチ殿とは面識があったからな」

「道場……? ってことは、あそこハヅキの実家だったのか!?」

「はい、兄上」

「はー……。昔見たような気がしてたのはそれか。でも最近見たような気もしていたが、それは気のせいだったか……?」


 そうか、あの道場か……。

 どういう理由で通い始めたかは覚えてないけど、ハヅキのお父さんはあそこの道場主だったのか。


「いえ。兄上は、幾度となく例の温泉街にある『魔闘流』の本山で修業をしていたとか。でしたら父上の顔写真を見ているのかもしれません」

「顔写真……。ああ、あれか!」


 確かにあった気がする。


「ご主人様。あの道場のルーツはお伝えしたと思いますが、白峰家はその合併した流派のうちの1つなのです」

「なるほどね。あの道場での教えがすんなり入って来てたのも、理由があったのか」

「ほぅ……。その話題に興味は尽きないが、まずは此度の件について話そうではないか。我らは皆、娘達から『チームの今後について重大な発表がある』と聞いてこの場に集まったのだが、詳細は聞いておらぬ。娘達のチームが全員、唐突に第一エリアへと移動をし、1ヵ月の月日をかけてようやく戻って来たかと思えば、君の登場だ。この騒動の中心は間違いなく君が原因だと睨んでいる。話してくれるね?」


 不意に、獰猛な野獣に睨みつけられるような感覚を覚えた。

 ミキ義母さんが凄んでる時と同じような圧力を感じるな。実は気付いてないだけで、とんでもなく強い大人が、この国にはそこら中にいるのかもしれないな。


「本当は個別に挨拶して行くのが筋だとは思っていたんですけど……」

「構わぬ。先ほど聞いていたが、この場を設けたは娘達だ。それを君のせいにして非難するつもりは毛頭ない」


 そう言ってもらえると助かるな。しっかし、この緊張が1回で済むのなら楽かもしれないし、時間短縮になるかもだけど、重圧は何倍もあるんだよなぁ。

 ……はぁ、覚悟を決めるか。


「……父さん、芝山さん、白峰さん、小山さん、ランドルフさん、三俣さん。単刀直入に言います。娘さんを俺にください!」


 俺は全身全霊で頭を下げた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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