ガチャ448回目:デートウィーク②

【休暇四日目】

 今日はマキとのデートの日。前回の反省を活かして、最初からタクシーを利用しての移動だ。精一杯おめかしした彼女は、サングラスにマスクを付けていようと、その可憐なオーラは微塵も隠せていなかった。

 その為、目的地に到着しタクシーから降りてすぐ、彼女には様々な種類の視線が降り注いだ。俺にも何種類かの視線は送られてきたけど、多分羨望とかそういう類だろう。

 今日のデートプランの目的地は貸切にしてあるので、ほんの少しの我慢だ。


「ここが?」

「はい。ショウタさんと来たかった場所です」


 マキが希望した場所は、都心から少し離れた場所にあるフラワーガーデンだ。以前は活気ある場所だったが、『ハートダンジョン』が出現した煽りを受けて、若者のカップルはほとんど来ないらしい。それでも、家族連れで来るのなら安全に楽しめる場所であることに変わりはないので、閉園に追い込まれるほどピンチというわけではなさそうだが。


「子供の頃、何度かここにきたことがあるんです」

「そうなんだ? そう言えばミキ義母さんも花が好きなんだっけ」

「はい。私の趣味はお母さんから受け継いだものですね」


 花かぁ……。思えばミキ義母さんって、普段はスーツだけど、綺麗な黒髪だし和服も似合いそうだよな。凛々しくて美人だから、和室で生花していても違和感ない。アキは花より団子なイメージだけど、マキなら隣に座ってお茶を立てていそうだ。というか絵になるし、実際見てみたくもある。


「ショウタさん? お母さんのこと考えてます?」

「それもあるけど、マキの着物姿が見たくなった」

「着物ですか? 子供の頃のなら実家にあると思いますけど、最近は袖を通していないですね」

「昔のマキ……? それ絶対可愛い奴じゃん。今度その写真見せてよ」

「い、良いですけど……。ではそのお返しに、ショウタさんの子供の頃のも見たいですっ」

「あー……。ちょっと恥ずかしいけど、マキのを見せてくれるなら良いよ。来週辺りに実家に帰って、カスミのこととか含めて父さんに挨拶に行くから、その時になるかな?」

「はいっ! 楽しみです!」


 マキと並んで、一緒に花畑を歩く。彼女とこんな風に、平和でのんびりとした時間を過ごすのも悪くないな。戦いに身を投じずにこうしているだけで、こんなにも幸せな気持ちになれるとは。

 思わず顔がニヤけてしまう。


「ふふ、何か良いことありました?」

「ああ。隣にマキがいるだけで幸せの絶頂を感じてる」

「ショウタさん……。私も、幸せです」


 そうして俺達は手を繋ぎながらゆっくりと園内を周り、施設の1つに設けられた養蜂体験コーナーを見て驚愕した。


「ハチってこんな小さかったのか……!?」

「ふふ。あのサイズを経験してしまうと、この子達はとっても可愛いですよね」

「そうだなぁ……。てか、俺ら防護服いらなくない?」


 あいつらの針、刺さらないだろ。


「そもそも、ショウタさんのオーラが強すぎて近寄ってこないと思います」

「マジで? ……マジか」


 むしろ恐れられて攻撃してくるかと思ったけど、マジで避けられてる感じだった。

 レベル400。おそろしや。



◇◇◇◇◇◇◇◇



【休暇六日目】

 今日はアヤネとのデートの日。

 デートの舞台はなんとまあ夢の国だ。


「旦那様とここに来られるなんて、夢みたいですわ……」


 聞いてみれば、彼女もこういうところには昔から来てみたかったらしいのだが、ステータスが出る前から宝条院家は厳しい家庭だったらしく、家族で遊びに行く機会がそもそも無かったらしい。

 ステータスが出て以降も、アヤネは基礎値も成長値もほとんどが平均値以下というのもあって、肩身が狭い思いをしてきたようだ。自分の性格や志向的にも受付嬢には向いてないし、冒険者になるにも前衛は不可能。それでもダンジョン関係の仕事に就くことは諦めきれなかったため、唯一素養のある後衛としての才能を伸ばすべく、遊んでいる暇はなかったという。

 そんなことを聞いた以上、俺は今日と明日、全力でアヤネを甘やかすことに決めたのだった。


「アヤネ、どこから周りたい?」

「えっとえっと、ではあの乗り物から行きたいですわ!」


 夢の国は冒険者協会を通せば貸切が出来るそうだけど、俺達2人でデートする為であれば、わざわざ使う意味はないと思う。人がいない静かな遊園地が楽しめるとは思えないし、アヤネもその考えに賛同してくれた。

 だけど、アトラクション1つで何十分も何時間も待たされるわけにはいかないので、『Sランク冒険者』としての権利を最大限行使して、『全アトラクション最優先券』を使わせてもらったが。

 そこからはアヤネが興味を持ったアトラクションを手当たり次第回って行った。ただ、そこで一つ問題が起きそうになった。アトラクションや遊具は、基本的に参加してしまえば向こうから演出がやって来るスタイルが多いが、こちらが自発的に動かさないと何も始まらないタイプのものがいくつかある。だから、『弱体化Ⅱ』を駆使して全力で手加減しても、ちょっと夢中になってしまうとのだ。

 食器を頻繁に壊すから、バキッと嫌な音がしたら条件反射で魔鉄を練り込んで修繕するクセがついてしまっていたので、幸いバレたりはしなかったが……。これからは、ステータスのない人間は減って行く時代になるだろうし、いつまでも普通の金属を使った遊具じゃ駄目だよな。


「以前ニュースで、フィーバータイムの永続化に伴って、ゴブリンの短剣とかから得られる魔鉄が市場に多く出回る環境が出来上がったって、俺の事が褒められていたけど、最終的にはこういうところにもしっかり回していかないとだよな」

「流石わたくしの旦那様ですわっ」

「まあ、今回は俺が壊しちゃったから補修したし、事情を説明したら許してもらえたけど、こんなに脆いんじゃステータスを上げた人は誰も純粋に楽しめなくなっちゃうよ」


 いくら力加減を覚えても、人に対してセーフティが働こうと、モノにまで気を払い続けるのは難しいからな。


「そうですわね。未来はどうなるかわかりませんが、また来たいですわ」

「アヤネ、今日は楽しかったか?」

「はい。とーっても、楽しかったですわ!!」

「じゃあ、今度は皆で来ようか。……家族皆でな」

「……!! はいっ、旦那様!」


 未来か。

 アヤネの過去を思って、家族でとは言ったが……。次来るときは何人になっているんだろうか?

 例え婚約者がこれ以上増えなかったとしてもだ。絶対増えてるだろうし。

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