ガチャ443回目:インファイト

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 イリスの状態異常攻撃を受け、ボスがふらついている。外装も展開されていないし、攻撃するなら今がチャンスだ!


「『疾風迅雷』攻撃開始!」

「「「「「「『激流槍』!!」」」」」」


 毒と麻痺毒でフラフラしているボスに計18本もの水の槍が押し寄せた。

 だが腐ってもボス、ヒットしたのはたったの8本だけだった。だが、初撃にしては上々だ。精度と威力から考えて、恐らくアタッカーの3人だろうか。


『######!』


 ボスがピンク色の光を発しながら弓を構える。矛先は、明らかにカスミ達を狙っていたが、その動きは最初に比べ精細さに欠けていた。


「撃ち落とす」

「兄さんからのオーダーだ。僕より先は通さないよ」


 放たれた必殺の矢に対し、ミスティが俺特製の弾丸を連射して勢いを削ぎ、エスは風の防壁で矢を斜め上へと逸らした。Sランク冒険者2人による合作の防御陣形だ。

 アレを貫ける攻撃はそうはないだろう。必殺技の合間にボスが外装を貼り直すが、そしたら俺たちの番だ。


「『紫電の矢』!」

『ポポポ!』


 再び外装を全てひっぺがし、丸裸にしたら当てられなかった子達に再び遠距離手段で攻撃してもらう。目まぐるしく動く戦場でも、自分が放った攻撃が当たったかどうかくらいは彼女達も把握できているだろう。

 あとはこの工程を繰り返し、全員の経験値判定を有効化するだけだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「お兄様、お待たせしましたわ!」

「全員当てたよー!☆」


 よし。じゃあ次は……。


「エス、ミスティ。お前達も当てておけ」

「ありがとう兄さん」

「ありがと」


 そう言うが早いか、彼らから強力な圧が放たれた。


「『ワールドカッター』」


 エスが片手を振り下ろすと、ボスの背中から血飛沫が上がった。

 どうやら、不可視の攻撃で奴の背から生える片翼を根本から切断したらしい。


「『ブレイクショット』」


 ミスティは、3発の弾丸を発射。1発はボスの胸部へと吸い込まれて行き、轟音と共に鎧は四散した。更に、他の2発は厄介な『天罰の剣』を全て砕いてくれていた。今までのダメージが積み重なっていたにせよ、あの硬い武具を破壊できるなんてな……。流石だ。


『###!?』


 ボスが双子に憎悪に近い敵意を向けるが、彼らは涼しい顔をして流す。

 2人にも折角だからと声をかけたんだが、本当にとてつもない威力の技だった。何らかの武技スキルか特殊な必殺技なんだろうけど、ミスティの火力も凄いが、一番驚いたのはエスだ。

 あいつが何をしたのか、まるで視えなかったぞ。


 これがこの2人の、加減なしの、本気の一撃か。

 俺も経験値やら動画やら、そういったしがらみを全て放り捨てたとして、同じことができるだろうか?

 瞬間最大火力の『雷鳴の矢』でも、あれほどの高火力を叩き出せる自信はないな。だが、6倍マジックミサイルはどうだろうか? 当ててみなきゃわからないが、下手に3000近くも『魔力』を消耗して外装に阻まれたら目も当てられないしな……。


『ゴゴ!』

「ああ、すまん!」


 考え事をしている間に、エンキが再び外装を剥がしたと報告を入れてくれた。

 そうだな、今は力の差を嘆いている場合じゃない。俺にはあんな攻撃力はなくても、それを補う多様なスキルと、かけがえのない仲間がいる。

 皆がここまで削ってくれたのなら、あとは俺が、このまま押しきるだけだ!!


 毒を与える前は撃ち落とされるリスクのあった『魔導の御手』を召喚し、吶喊する。

 『天の騎士・クピド』は巨大なモンスターではなく、人型サイズのモンスターだ。複数人でタコ殴りをするには向かない上、相手が得意なのは遠距離戦。

 ならば接近戦で肉薄し、手数で弓を使う暇を与えず、直接攻撃をするのが一番効果的だろう。出現直後なら奴の機動力を前に、接近してもすぐさま逃げられただろうが、片翼となり痺れが抜けない今の奴に、そこまでの機動力はない。

 俺の剣戟で弓を防御に回させ、中空からは『紫電の矢』の雨が降り注ぎ、時折ホーミングするマジックミサイルⅡが襲い掛かる。

 幾度となく奴には外装が張られるが、再展開されるまでのタイムラグのおかげか、戦闘が長引けば長引くほど、奴に生傷は増して行く。そして最後には、俺の剣が奴の胸を深く穿ったのだった。


『……ッ!』


 言葉にならない声をあげ、『天の騎士・クピド』は煙となって消えていった。


【管理者の鍵(810)を獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが12から422に上昇しました】


 無数のアイテムが散らばるが、俺はそれに目もくれずに振り返る。


「アキ!!」


 彼女達のもとへと駆け付けると、丁度アイラの手によって拘束が外されるところだった。


「アキ、大丈夫か!?」

「……ぁ。ショウタ、君。ごめん、心配、かけちゃったわね」

「アキが無事ならなんだっていいさ。後遺症はなさそうか?」

「うん……平気。それより、ショウタ君。お腹は平気……?」


 どうやら操られている時の記憶はあるみたいで、アキはすごく申し訳なさそうにしている。あれは仕方ないし、避けられなくても無理はない。自分を追い詰めて欲しくはないが、下手な慰めは逆効果かもしれない。

 ここは……そうだな。ちょっと茶化してみるか。


「……いやあ。夫婦喧嘩になる度に、アレを食らうのかと思うとゾッとするね」

「……ふふっ、あはは! なにそれ、もう。ショウタ君ったら……。馬鹿ね……」


 涙を拭って笑うアキを、俺は優しく抱きしめる。甘えてくる彼女を慰め、今後の事を思案した。

 ……これは、ちょっと時間かかるかもな。とりあえず、アキとのデートは最優先にしてあげるか。


「ところでアキ。以前の俺みたいに状態異常のまま戦闘終了したけど、レベルは上がった?」

「もう、今度はそこの心配? バッチリ上がったわよ。『ダンジョンボス』だからか、『魔煌石』持ちのモンスターだからか、レベルはあたしの方が高いのに沢山上がったわ」


 言われて見てみれば、アキ達は300とちょっとだったはずが330まで上昇しているし、カスミ・ハル・ハヅキ・レンカの4人組は208から365に急上昇。イリーナは214から364に。イズミは228から360になっていた。

 うん、レベルは『グランドクラーケン』と大差ないにも関わらず、『天の騎士・クピド』は経験値効率が高いみたいだな。理由は恐らく、前者は巨大かつ複数の足に強さが分散していたが、後者は強さが1つに集約していたからだろう。

 今回はエスとミスティの2人がいたから楽に倒せたけど、俺ももう1ランク上の攻撃能力が欲しくなってきたな。……ああ、はやくガチャを回したい。

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