ガチャ440回目:レアモン連戦

 激痛によって蹲り続ける双子に『黄金鳳蝶』の説明をすると、エスを中心に突風が巻き起こった。心なしか空気がクリアになった気がする。


「お? 今のはエスか?」

「ああ。目に見えないレベルの粒子でも、実体があるなら吹き飛ばしてしまえばいいと思ってね」

「ん。ナイスエス」


 2人が立ち上がり、『黄金鳳蝶』を見上げる。

 奴は優雅に羽ばたき続けていた。


「……なるほど。兄さんの言う通り、今のでも攻撃扱いにならないのか。それにしても優雅に飛んでいるね。『魅了』なんて厄介なスキルがなくても、夢中になって見てしまいそうだ」

「私には芸術はわからない。あとアイツきらい」


 エスは絵画を鑑賞するかのように見上げ、ミスティは頭痛の原因となった事で『黄金鳳蝶』を恨めしげに睨みつけている。


「ああ。だから一応、この時間を使ってこの後に出てくるであろう奴らのおさらいをしようか。といっても、厄介な事をしてくる奴はこいつくらいのもので、他は正統派ばかりだけど」


 復習も兼ねて、俺は第一層から順番に出てくるレアモンスターの名前や強さ、行動パターンを教えて行く。


「んで、ここで多少厄介になりそうなのが、マザーとウパルパだな。前者はレアⅡも強化体に該当するモンスターがいなかったけど、このまま行けば確実に出現するだろう。放っておけば産卵で戦場は混乱しそうだし、後者は単純にこのフィールドと相性が良すぎる。特にホワイトまでは範囲魔法を使ってくるだろうから油断はできない」

「なるほど。経験値もスキルドロップも無いのなら、僕達も手伝った方がいいかい?」

「……出番?」


 ミスティがウキウキした様子で見上げてくる。


「んー……。スキルはなくてもアイテムドロップはそれなりに価値があるからな。でもボス前の前座で体力を使うわけにも行かないし……」


 マザーはともかくウパルパはな……。

 素早く倒してしまうのが理想ではあるが、接近して倒すのは危険だろう。できれば遠距離から……。


「……よし。ならミスティに任せちゃおうかな。銃貸して」

「ん」


 ミスティから二丁拳銃状態の『ケルベロス』を借りる。確かイメージするんだったよな。


「ミスティ、一度に作れる弾丸に限界はあるか?」

「たぶんない。昔は50発作成とかよくやってた」

「今は?」

「今はマガジンとセットで作れるから、弾丸だけの作成はしてない。けど、早撃ちする時は、装填してるマガジンの中に直接生成してる」

「結構横着してるんだな」


 さて、前回は1ダースをイメージして12発だったけど、前回の『魔力』の減少量から鑑みて消費は割と軽めっぽいんだよなぁ。初手からレアⅡを出して来るダンジョンなんだし、この後のことも考えての予備を作っておくか。


『ジャラジャラジャラ!』


「「!?」」

「……おっ」


 ごっそりと『魔力』が持っていかれる感覚と共に、目の前に大量の弾丸が出現した。

 気絶はしなかったし継続的な吐き気も来なかったが、33000と馬鹿みたいにあるのに、削られた感覚。だいぶ消費したようだな。


「ショウタ、どれだけ作ったの」

「ざっと1000発」

「……二丁拳銃状態の弾丸を作成する場合、推定消費魔力が10もある。それを1000発も作ってケロリとしてるなんて、本当に規格外だね、兄さんは」

「やっぱ消費は10だったのか。つーか知ってたなら教えてくれよ」

「すまない。今回は、兄さんも横着するってことを覚えておくよ……」


 エスが呆れるようにぼやいた。

 だって、いちいち銃を借りなきゃ作れないんだし、面倒じゃん? でもまあ、1000発は作り過ぎたかもな。


「……すまんミスティ。よく考えたら、こんなに弾があるとマガジンに込めるのも大変だな。手伝いは要るか?」

「ん。慣れてるから平気」


 銃を返すと、ミスティはマガジンを生成し目にも止まらぬ速さで弾丸を装填して行く。これは、受付嬢の作業を高速でこなすアキとマキに似ているな。経験とステータスからくる高速作業の神髄を見ている気分だ。


「しかし、こんなに暢気に会話していても、奴は相変わらず襲ってくる気配がないんだね」

「そういうモンスターだしな」


 ミスティが弾込めを頑張る間、『黄金鳳蝶』はエスの風の結界の外でふわふわと優雅に漂い続けていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ん。準備完了」


 ミスティは弾込めを終えたマガジンを身体のあちこちにくくりつけ、それでも余ったマガジンはアイラが預かる形となった。ちなみにこの弾は普段使いするには性能が尖り過ぎている為、この戦いが終わったら、危ないのでアイラが管理するとかなんとか。

 まあ、ドロップアイテムが全部出ると気持ちいいからな。本格的な共有は今後の関係構築までお預けとなるそうだ。


「じゃ、さっそくよろしく」

「ん」


『ダァン!』


 そこからはミスティのターンだった。

 『黄金鳳蝶』だけは『金剛外装Ⅲ』のため4発撃つ必要があったが、それ以降に出現する『甲殻騎士』『マーマン』は一撃。強敵の『レイクナーガ』も『頑丈』が1000しかない為か数発で轟沈。

 続いて出現した『ルフ』も同様に柔らかく瞬殺したが、『マザーアント』は『頑丈』が2000近くもある為俺も参戦。『魔導の御手』で『紫電の矢』を放ちつつ、先日手に入れた『魔導銃クイーン・デトネーター』で援護する事にした。

 この銃も『ケルベロス』同様、念じる際に数を指定すれば1度に複数の弾丸を生成できるのは実験済みだった。実戦投入は初めてだったが、試射会で散々撃ったしな。狙って撃てばちゃんと当たるし、散弾銃だから多段ヒットしてくれる。外すことはありえなかった。

 2発撃つごとにリロードが必要なのは多少面倒だけど、ミスティからの助言でリロードはひたすら繰り返して練習あるのみって事だったので、頑張って洗練させよう。

 また、『魔力』を10倍消費して生成できる特殊弾だが、これは散弾数が3倍になるという頭のオカシイ性能をしていたので、威力も3倍。消費が増えるのは重いが、瞬間火力は大事だよな。


「ショウタ、センスある」

「お、そうか?」


 7色のウパルパ戦において、相手の範囲魔法を避けつつ、術後の隙を狙う形で散弾をプレゼントしているとミスティに褒められた。ミスティは性格的に、例え好感度の為とはいえお世辞は言わないだろうし、本心だと思いたい。

 熟練のガンナーにそう褒めてもらえるのは嬉しい話だな。


「チェックメイト」


 そうして青水緑赤紫白黒と続いたウパルパ連戦も、銃弾の嵐によって見事突破した俺達の前に、巨大な煙が出現した。やっぱ、各種レアモンスターの連戦程度がボスな訳ないよな。

 さて、何が出てくるか。

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