ガチャ429回目:増強アイテムの真実

「お兄ちゃん、来たよー!」

『ゴゴー』

『~~♪』

「お。エンキ、セレン、おかえり。カスミ達もご苦労様」


 拠点でのんびりしていると、エンキ達を抱えたカスミ達がやって来た。全員で集まるのには少しうちの拠点は狭いので、カスミ達用のテントを建て、そちらへと移動する。

 そして移動した先で改めてカスミ達1人1人に労いの声をかけ、エンキから預けていた腰巾着を受け取った。


「エンキ、セレン。種は問題なかったか?」

『ゴ!』

『~~♪』


 予想通り、両方ともに収穫量及び収穫したアイテムの質が向上していたらしく、とんでもない量のアイテムが取れたらしい。早速確認してみるか。

 確か『黄金の種(大)』は元々130個で、『魚人の種』は45個だったな。どれどれ……。


 『腕力上昇+25』108個。

 『器用上昇+25』109個。

 『頑丈上昇+25』108個。

 『俊敏上昇+25』108個。

 『魔力上昇+25』109個。

 『知力上昇+25』108個。


 『水魔法Lv2』44個。

 『泡魔法Lv2』43個。

 『海魔法Lv1』20個。

 『水耐性Lv1』28個。


「……これはひどい」


 『黄金の種(大)』は元々、+15と+18と+20のどれかがランダムで、しかも種から実になる数は3~4だった。それが今回は全て+25だったうえに種は5つの実を付けていた計算になる。

 『魚人の種』は、『水魔法Lv1』と『泡魔法Lv1』の2つだけだった。前回は種が1個だけだったし、生った実も2つだけということで試行回数が少なすぎてアテにはならないが、明らかに今回の方が質は向上しているだろう。魔法が4種類に加え、全ての種が3つの実を付けている計算なのだ。


 まあこの結果は、俺の『運』ありきの成果だろうけども、今後はこの種シリーズは、ダンジョン内で栽培する事が大前提になりそうだな。


「やばいなんてもんじゃないわね」

「ショウタさん、これ……どうされるんですか?」

「まあ、俺を除いた全員に程よくばら撒く感じかな」

「それがよろしいかと。以前のように私とお嬢様だけに振り分けるとなると、上昇値が高すぎて扱いきれる自信がありません」

「ほっとしましたわ~」


 アイラでもそう思うか。

 まあ通常版でも1ステータスにつき数値としては+890分あるにも関わらず、大に至っては+2700分もあるわけだしな。それぞれ前衛用と後衛用に3つずつ分けたとしても1人辺り合計10000ほど上昇するわけだ。実質的なステータスの上昇が2倍以上になるなんて、そんなの『統率』で十分だろう。


「ジーザス……」


 俺達の会話を聞いていたエスがまたなんか天を仰いでるが、こっちは放っておいて。ミスティの方はとちらりと視線を投げかけてみるが、義妹達にもみくちゃにされていた。


「へぇー。ミスティちゃんって、マキさんやカスミちゃん達と同い年なんだね☆」

「そうみたい」

「それでSランクに至れるとは、凄まじい修練をされてきたんですね」

「ん。私の場合、スキルが良かったから」

「向こうではソロで潜られていたのですか?」

「場合によるかな。チームメイトはいるけど、彼らは私のサポートが主だったから。私と並んで戦える人は、滅多にいないし……」

「じゃあ、そんなミスティがお兄ちゃんとくっつきたいってことは、対等な存在に思えてのこと?」

「……そっか。カスミはショウタの実の妹なんだっけ。んん、その辺りはまだ、掴みきれてないかな」

「おー。お兄さんの実力はSランクでも掴みきれないんだねー」

「ん。謎」

「でしたら、お兄様が格上のモンスターと戦った時の映像をご覧になればよろしいですわ。わたくしのおすすめは、『初心者ダンジョン』の『ダンジョンボス』ですわね」

「面白そう。見たい」


 まあ仲良くやれそうかな。実力もしっかりとあって、良い子である以上、彼女達にしてみれば今更1人増えたところでといった感じだろうか。

 ミスティはそのままアキとマキの所に行って、動画のおねだりをし始めた。俺はその様子をぼーっと見ていると、ミスティと目が合った。


「なに、ショウタ。エスも何だか変」

「あぁー、えっとだな。仲良くやれてそうで安心してたところだ。あとエスは、大量の増強アイテムを前に現実逃避してるところだな」

「カスミ達が持ってきたこれ?」


 ミスティが興味深そうに腰巾着へと視線を向けた。

 エスもこうなるくらいだし、ミスティも気になるのかな。


「こんなにいっぱい、どうするの?」

「うん、皆に分けるつもりだよ」

「ショウタは使わないの?」

「んー、なんて言ったらいいかな。俺の場合は使ったらヤバイ気がして使わない感じかな」

「ん。その直感は大事。実際使い過ぎは良くないし」

「え、そうなの!?」


 初耳なんだけど!?

 マキ達に視線を投げかけるが、彼女達は首を横に振った。知ってたら絶対止めてくるもんな。その様子を見てミスティは何でも無い事のように言う。


「そっか、この情報はうちの国が秘匿してるんだった」

「それ、言っちゃっても大丈夫な奴?」

「……ショウタだし、良いと思う。ねえエス」

「え? ……ああ、兄さんなら問題ないかな。むしろ、こんなに大量の増強アイテムを手に入れられるなら知っていたほうが良い」

「それで、具体的にどう危険なんだ」

「ん。うちの国では罪人を使って実験して、判明したことだけど、良い?」

「ああ、構わない」


 この手の物に人体実験はつきものだ。どんな結果だろうと聞いておこう。

 よくわからないアイテムを研究する研究所でも、そういうはあるって聞くし。最近聞いたバラムツの件もそうだし、以前捕まったレッドカラーが送られる先もそういう場所だって聞く。実験の重さで刑期が減刑されるってことらしいから、彼らも納得の上で受けてるはずだ。


「まず簡潔に言おうか。増強アイテムを過剰に摂取すると、被験者は死亡したそうだよ」

『!?』

「わが国にはとある支配者が管理するダンジョンがあってね、そこでは他よりも比較的に増強アイテムを入手しやすいポイントがあるそうなんだ。そこに潜っていたとある冒険者の親族が、増強アイテムの使用直後に突然死してね。原因究明のために実験が行われたんだ」


 俺はそんなアイテムを気軽にアヤネとアイラに使わせていたのか。

 けど、待てよ。冒険者本人じゃなく、その親族だと……?


「今の話を聞いて疑問に思った者もいるだろう。そう、なぜ本人じゃなく親族が死んだんだってね。そこでポイントとなるのが、この『過剰』になるラインなんだ」

「……そこも、実験で記録してあるという事だな」

「ああ。レベル1時点の基礎能力値、レベル上昇における成長値、そしてレベル上昇で得られる『SP』。つまりは、現在の基礎ステータスの合計値よりも多く増強アイテムを使用すると、人間は耐え切れず死んでしまうそうだ」

『……』


 なるほどな。

 通りで以前彼女達に使おうとした時は嫌な予感がしなかった訳だ。そして俺が使ったらヤバイ気がしていたのはそこにありそうだな。

 『レベルガチャ』で得た増強アイテムが特殊なのは今に始まった事ではないけど、併せて使用すると別種であるため喧嘩すると以前は予想していた。だけど、真相はそれとは別に、俺の基礎値が低すぎてほんの少しの増強アイテムでも死にかねないから、危険だと感じたのだろう。

 あとエスは、『SP』の総量を例に挙げていたが、恐らくこれは、『現時点でのレベルに応じたSP』が加味されるのが正しいはずだ。俺が家にいる時は大抵一桁やそれに近いレベルだし、基礎値の合計なんて100にも満たないものだ。そんな俺が増強アイテムを使ってたら……。

 うん、数個で死んでたかもな。

 ふぅー、使わなくて良かった。

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