ガチャ428回目:新たな観光資源
朝食を終えた俺たちは、カスミ達の到着を待たずに出発し、第五層を目指すことにした。
また、道中のアリは昨日暴れられなくてフラストレーションが溜まってそうなミスティに任せてみることにした。弾丸は俺のじゃなく自分で作ったものだったから、ドロップは悲惨でスキルオーブなんて出なかったが、銃をぶっ放している時の彼女はとても楽しそうだったのでよしとしよう。
「ここが、五層……?」
階段の前に広がるキャンプ地は、正直言って第四層と大差はなく、壁の中に作られた洞窟のような場所だった。
しかし不思議と、清涼な気配を感じた。第四層はどちらかというと乾いていた感じがしたのに。
「なんか、マイナスイオン的なものを感じる」
「流石ショウタ君、その通りよ」
「ここも当初は、デート場所として使えないか議論されたことがあるんですよ」
「そうなの?」
ってことは、第三層みたいに平和なのか?
それとも、第二層みたいに観光要素とモンスターの棲家がくっきりと区切られているのか?
「ご主人様、その通りです」
「……」
今のは、
いや、タイミング的に考えて……。
「つまり、第二層と同じってこと?」
「はい」
「むう。アイラとショウタの会話についていけない」
「はは。2人は通じ合っているという次元を超えてるね」
「ショウタさんの思考は大体予想はついていたんですが……」
「あたしも他の階層のことを考えてるんだろうなぁとは思ってたけど……。アイラには勝てないわ」
「むう。わたくしも負けていられませんわ!」
「とりあえず、先を見てみない事には予定は立てられないし、アイラ。拠点設置を頼む」
「承知しました。ではエス様達のテントはこちらに。反対側にはカスミ様達用に立て札を立てておきましょう」
マップを開いてみれば、カスミ達はもうまもなく第四層へ到着すると言った頃合いだった。あのペースなら、ここに到着するのにあと20分前後といったところかな。
それなら少し、この周辺を見て回るか。
「じゃ、この辺を散歩しようか」
そうしてキャンプ広場から外へと出ると、そこには神秘的な光景が広がっていた。
「おお……」
「わぁ……!」
「綺麗ね……」
「素敵ですわ……」
ここの階層テーマは地底湖だろうか? 陸地は俺たちのいるキャンプ広場入り口くらいのもので、あとはずっとどこまでも続く水源が奥へと広がっていた。洞窟の天井にはクリスタルが煌めき、その輝きを受けてか水源も青く輝いていて、見ていて飽きない。
こんな光景、一般解放されないのは非常に勿体無いな。この階層が解放されれば、今まで以上に集客が見込めることは間違いなかった。
こんな良い景色があるのにデートコースに使えない理由はなんだろうかと思ったが、やっぱりアリの存在か。ここは第二層と同様安全地帯とモンスター地帯が隔離されてるみたいだし、第四層の問題さえ片付けば活用はできるということか。
ふーむ。昨日俺が見つけた安全なルートだけではちょっと押しが弱いか? 凶暴なモンスターが、いつ観客の怯えを察知して襲ってこないとも限らんしな。最短ルートのモンスターを間引いて、その間に通過させるというのも少し難がある。あっちは出現間隔が異常に短いみたいだし。
それもあって、ヨウコさんはここの開発を諦めてるのかもしれない。もしも望んでいたら、俺がここに来る事に対して嫌な顔はしなかったはずだしな。まだあの人に第四層の安全ルートは伝えていないけど、完全に安全なルートという訳ではないし、恐らく教えても首は縦に振らなかっただろうな。
「ここが使われないのは勿体無いし、ここのホルダーになった際は第四層の問題をなんとかできないか試行錯誤してみるか」
「流石ご主人様です」
「んで、ここってコレで終わり? 景色としては最高だけど、見て帰るだけってなると観光要素としてはパンチが弱いというか」
「ご安心くださいご主人様。もちろんここの安全エリアは、これでは終わりません。あちらを利用します」
そうしてアイラが指さした先、陸地の端にある桟橋の陰に隠れて見えなかったが、スワンボートが置いてあった。
あれで漕いで奥からぐるりと回ってくる感じか。
「なるほど。これならまあ一般の人も楽しめるか。ボートは少ないし、収容キャパも低そうだけど、そこは多少増設するなり、予約制にすれば問題ないわけだ」
「そういうことです」
「俺達もボートに乗って行く?」
「それもいいですが、こんなこともあろうかと人数分のゴムボートを用意させて頂きました」
流石アイラ。抜け目ない。
まあ最悪『泡魔法』もあるしな。
「ちなみにここからボートを漕いで移動するとして、往復するのに大体どれくらいの時間がかかるんだ?」
「はい、協会の測定情報としては、一般の方が景色を楽しみながらのんびりと漕ぐことを前提とした場合、大体20分から30分ほどとなっています」
「なるほど。……じゃあ、そんなに掛かりはしないか」
俺たちなら一般人より早く移動できるだろうから、カスミ達が到着するまでに一往復するくらいは問題ないだろうけど……。俺は当初、ココが普通の攻略されるべきダンジョンって認識だったけど、デートコースになりえる類なのだと分かった以上、彼女達を置いて一足先に楽しむのは心情的に厳しくなってきたな。
「仕方ない、あいつらを待つか」
「おや、ご主人様がその選択をされるとは」
「ちょっと意外ね」
「でも、良いと思います」
「フフ、そうですわね!」
そうして俺達は道を引き返し、拠点の前でカスミ達の到着を待つのだった。
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