無料ガチャ036回目:はじめてのおつかい
カスミ達『疾風迅雷』は、今日も今日とて貸し切りビーチにて修行に明け暮れていた。
各メンバーがそれぞれ、アイラに指示された内容に忠実に従い、時には個別に、時には複数人でチームを組み行動している。中でも、『疾風迅雷』で刀を使うカスミとハヅキは、お互いがお互いを刺激し高め合う関係上、この数日は常にセットで修業を行っていた。
「『激流槍』!」
「せいっ!」
『カカカンッ!』
ハヅキが放った武技スキルを、カスミは黄金の膜を纏ったまま全て刀で撃ち落とす。そんな彼女の周りからいくつもの鋏が伸びてくる。
それもすんでのところで回避し、カスミはカウンター気味に相手の甲羅を叩き割った。
「ふぅー……」
「お疲れ様です、カスミ殿。数日前と比べて、見違えるほど動きが良くなりましたね」
「扱えるステータスがちゃんと増えてきたおかげだね。ここに来る前の私なら、シザークラブの群れの中で被弾しないなんて荒業はできなかっただろうし、そもそも武技スキルを打ち落とすなんて真似、まず無理だったもん」
「そうですね。某も、激しい戦いの中でも繊細な動きができるほどに成長しました。やはり先を往く方に指導してもらえると、こちらの成長速度も違うというものですね」
「だねー」
カスミとハヅキは、アイラに許可を取り毎日20レベル分の『SP』を割り振り、自身で扱えるステータスの上限値を高めていた。
それにより彼女達の修業は日に日に激しさを増し、その分得られるリターンも高まって行った。結果、彼女達は順調に練度を高める事に成功していた。
「次、ハヅキがやる?」
「そうですね……。修行も良いですが、そろそろ休憩としましょう。根を詰め過ぎるのもよくありませんし」
「はーい! 全員集合ー!!☆」
などと話し合っているところに、イズミの声が砂浜に響き渡った。
そしてその隣には、見慣れた2体のゴーレムの姿があり……。
「あ、エンキちゃんだ!」
「セレンちゃんもいるー!」
『ゴゴ』
『~~♪』
彼らの存在にいち早く気付いたカスミとレンカが真っ先に飛びつき、全力で抱き締めた。
「あれ、エンキちゃんイメチェンした?」
『ゴゴ! ゴゴ!』
「ふふ、何て言ってるかわからないけど、嬉しそうなのはわかるよ。お兄ちゃんがしてくれたの?」
『ゴゴー』
「ふふ、そっかそっか。よしよしー」
『ゴ~』
遅れてやってきたハヅキ、ハル、イリーナもエンキ達に挨拶をしたところで、彼女達は周囲の様子を伺った。
「イズミ殿、ここに来たのは彼らだけなのですか?」
「お兄様やお姉様達の姿はありませんわね」
「はーい静かに! エンキ達から手紙を預かってるわ」
そうして全員でテントの中に集まると、イズミは手紙の内容を読み上げ始めた。
「あのSランクの人、もう来たんだ……」
「それより、双子でSランクとかどれだけ優秀なのよ」
「なら、ボク達もSランクなっちゃうー?」
「あはは。まだ私達Bランクだよ?」
「今のわたくし達ならA……いえ。A+くらいにはなれるはずですわ」
「そうね、だから気持ちで負けちゃだめよカスミ。何か特別大きなことを成さないとSランクには届かないけど、その土台は十分お兄様達に作ってもらったはずよ」
「……うん、そうだね。頑張ろう皆!」
「「「「おおー!」」」」
「意気込んでるところ悪いんだけど、続きを話して良い?」
イズミが読んだのは、まだ手紙の序盤も序盤だった。
「あ、ごめん」
「良いけどね。私達が頑張る事で、お兄様の役に立てるんだから」
「にひ。イズミちゃんってば、お兄さんにデレデレなんだから~」
「おほん。じゃ、ここからは第四層の事ね。えーっとなになに」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「つまり、第四層の攻略は終わったから、お兄ちゃんは私達と第五層で合流するって事ね」
「そういうことみたいね☆」
「それにしてもお兄様がこれだけ苦戦するなんて、第四層はそれだけ大変だったみたいね」
「お話に聞く限り、第四層のアリエリアは立体的な迷路になっているのですわよね? お兄様のスキルがなければ、もっと時間がかかっていたかもしれませんわ」
「ボク達もだいぶ麻痺してるけど、それを3日でクリアしちゃうお兄さんがすごいと思うよ」
「確かに。第三層は特殊過ぎたと言いますか、兄上との相性があったのでしょう」
「お兄様、セルフ縛りプレイしてるもんねー☆」
『ゴゴ、ゴゴ』
「うん? どうしたのエンキちゃん」
『ゴ!』
『~~♪』
エンキ達が腰巾着を広げ、中のアイテムを彼女達に見せた。
「あ、『黄金の実』? そっか、回収しなきゃいけないんだっけ」
『ゴ』
「もう終わらせたのね。エンキちゃんは働き者だねー」
「偉い偉いですわ」
「セレンちゃんもお疲れ様ー!」
『ゴー』
『~~♪』
「じゃあ後は片付けて向こうと合流するだけかー。今から行くの?」
全員がテントの外を見る。
修行中はさんさんと太陽の光が降り注いでいたが、今では海の彼方に沈むところだった。西のエリアだから陽が沈むタイミングもばっちり見えるし、そういう意味でもここが修行の場に選ばれたのだろうかと、カスミはふんわりと考えていた。
「流石にもう日は傾いてるし、今日は早めに寝て明日は朝食後すぐに動きましょ。第四層では合流できないかもだけど、手紙には第五層の入口に拠点を建てるって書いてるから」
「じゃあ今日はエンキちゃん達と一緒に寝れるんだね」
『ゴ!』
「んー? ねえイズミちゃん、手紙の隅っこにお土産があるって書いてるよー!」
「え? ……ほんとだ! ……布団??」
『ゴゴ!』
「これを使えばぐっすり眠れるって!」
「回復速度向上……!?」
「すごいですわ!」
「あとお兄様、これ私達にくれるって」
「うわぁ。ありがたいけど、私達じゃ持ち運びできないよ……」
「テントやもろもろの装備も、ね。色々と貰っちゃってるけど、よくよく考えると全部持って移動するのは難しいかも……」
「そうですわね。わたくしの実家の力を使っても、魔法の鞄の確保は難しいかもしれませんわ」
「その辺りも、また今度相談しよっか。とにかく今は、この布団に潜り込みたい!」
「「「「「賛成!」」」」」
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