ガチャ424回目:産卵場
階段を降りた先は、先ほどの渓谷とは違ってしっかりと真っ直ぐに洞窟へと続いていて、今までどうしても埋まらなかったマップの空白地帯へと侵入することに成功した。
「ミスティ、どうだ」
「うん、いる。この先、すごく広い」
「それにどうやら、相当な数のモンスターがひしめき合っているようだ。あの数は、流石に兄さんでも手こずるんじゃないかな」
「まあ俺の手に余ったとしても、接近戦ならエンキ達がいるからな。洞窟だから広範囲魔法は使えないけど……。まあ、問題ないんじゃないか?」
『ゴ!』
「ん、わかった。お留守番してる」
「悪いな」
そうして一本道の通路を進んでいくと、急に視界がひらけた。そこは巨大な鍾乳洞のようになっていて、壁には一面びっしりとアリの卵が設置され、それを守るように無数のアリが忙しなく動き回っていた。
そしてその奥では、お腹が大きく膨れ上がった巨大アリが、何かの骨で出来た玉座に寝そべっていた。
あれがここの女王か。
風格としては『レイクサーペント』と同等と言ったところか。ここからでは『真鑑定』の射程距離外だから詳細は見れないが、あそこからレアⅡへと進化するとは考えづらい。もしかすると、アイツはそのままトロフィーをドロップしたりするんじゃないだろうか?
問題は女王と卵を守るように存在するアリ達の存在もあるが、あの卵だな。届く範囲にある卵の詳細を確認する。
名称:アントの卵
品格:不明
種別:モンスターエッグ
説明:マザーアントが産んだ卵。刺激を受けたり、マザーアントからの指令を受けると一斉に孵化する。誕生するモンスターは、アント種からランダムで出現し、稀に希少個体が誕生する。
まさかの卵ガチャか?
わざわざそう記載するということは、ワーカーアントとソルジャーアント以外にも出現する可能性がありそうだな。てか『マザーアント』というのは奥に見えるでかい個体のことを指すんだろうが、奴の号令で一斉孵化した場合、記載の通り稀に希少個体が出現するんだろうけど、俺が刺激を与えた場合どうなるんだ?
全部が最弱のワーカーアントになる可能性もあるし、全部が希少個体になる可能性もある。そもそもその個体がどういう意味で希少かにもよるんだよな。めちゃくちゃレアなスキルを高倍率で落とすラッキーモンスターの可能性もあれば、滅茶苦茶強いだけの個体が誕生する場合もある。
まあ、どちらが生まれても俺にとって当たりになりそうだが。
俺はエンリルを手招きし、卵を指差し全てを攻撃するよう指示を出した。そのままエンキにも指示を出し、すぐに巨大化出来るよう砂鉄ブロックと岩ブロックを交互に並べ出す。いつか全身鉄のフォームに進化すれば、大迫力になりそうだな。正直今のままでも頼もしすぎて、同様のモンスターが敵として出て来たら絶対手をこまねきそうだが。
セレンとイリスにはエンリルの援護を指示し、彼女達はもしもの時のために待機してもらう。
そしてエンリルの準備が出来たようだ。彼の周りに、圧縮された風のエネルギーが集まっている。
「よし行け!」
『ポポポー!』
『ゴゴ!』
エンリルが巨大な竜巻を複数発生させ、アリの群れを卵ごと刈り取っていく。気付いたアリ連中がエンリル目掛けて襲いかかって来るが、巨大化したエンキが迎え撃った。
『ギギィ!』
『ギチギチ!』
『ギチギチギチ!』
卵を攻撃された怒りか、全てのアリのヘイトがエンキとその後ろにいるエンリルへと向けられている。そして攻撃された卵は全て孵化に成功したのか、中から純白のアリが誕生していた。
「『真鑑定』」
*****
名前:ホーリーナイトアント
レベル:60
腕力:1000(+500)
器用:560(+280)
頑丈:1700(+850)
俊敏:1000(+500)
魔力:2000(+1000)
知力:800(+400)
運:なし
【
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ホーリーナイトアントの外殻、白亜鉱
魔石:大
*****
こいつら、6体ずつで『統率Ⅱ』の掛け回しもしているのか、ステータスが2倍になってやがるな!
エンリルの竜巻攻撃は、通常のアリ2種に対しては有効であり、数秒とたたずに切り刻めるのだが、この白アリは別格のようだ。どうやら数値的に高い『頑丈』だけでなく、『硬化Ⅱ』と共に奴の装甲自体が飛び抜けて分厚いらしい。
あれでは、エンリルの攻撃でも削り切るのには時間がかかりそうだ。一部こそ煙になったものの、まだほとんどの白アリが生存しており、嵐の中ジタバタともがいていた。
『ポポ、ポポー!』
「エンリル、そこに雷混ぜれるか?」
『ポ? ポポ! ポポ!!』
【レベルアップ】
【レベルが81から82に上昇しました】
竜巻の中を稲光が走ると、複数の白アリが煙へと変わり果てた。
どうやら効果は抜群だったらしい。昨日大量にアリを狩りまくって停滞していたレベルが上がったのも嬉しい。これなら、こっちは任せてしまっても問題はないだろう。
『ギギィ!』
「おっと」
白アリの1体がエンキの壁を通り抜けて来たため迎え撃つ。エンリルが取り逃したのかと思いきや、どうやらマザーが次々と新しく産卵しているようで、そこから発生したらしい。
『ギギッ!』
2秒に1個のペースで次々と産卵し、壁や地面に植え付けられた卵は10秒後にはその場で孵化。そうしている間にも次々と卵がそこら中に植え付けられていく。
流石にあんなハイペースで生み出していればその内ガス欠になるだろうし、無限には続かないだろう。卵から出現するモンスターも、白アリが出現するのは10個中1、2体といったところか。
「兄さん、早くしないと無尽蔵に湧いて来るんじゃないかい?」
「いや、あれは止める必要はないな」
一般のチームならまだしも、俺たちにとっては脅威ではない。ましてや、俺としては貴重なスキルの最大獲得数を増やしてくれるありがたい状況でもあった。
適当に間引きつつ、白アリが沢山湧いてくれることを願うか。
「というわけだ」
「流石兄さん、スキルに貪欲だね」
手伝いは不要と判断したのかエスが後ろへと下がって行く。援護したい気持ちはありがたいが、まだそこまで必要な相手でも無さそうなんだよな。
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