「でも良いのか？　ミスティのメイン武器なのに俺が使って」

「好感度上げたいから」

「面と向かって言うことか？　まあでも、ミスティが言うならちょっと使わせてもらうか」

「ん」

　さて、『真鑑定』で見た情報によると二丁拳銃以外にもタイプがあるみたいだけど、今はこの姿のままで良いか。これがデフォなのかはわからんし、俺に変えられるかも不明だけど。

　んで、問題なのはこれの銃弾の事だ。弾丸は『魔力』で作ると書いてあったが、一般的な銃と同じ機構なのだろうか？　装填方法がわからず、戦闘中に弾切れを起こしたらとんでもないピンチになる。けど、ミスティが撃ってる時、リロードを挟んでいる様子はなかったんだよな。恐らくそれも、何かのスキルだと思うんだが……。

「ミスティ、弾丸の補充はどうやってるんだ？　マガジンの交換とか必要だと思うんだが」

「あ、そっか。忘れてた」

　そう言ってミスティは、慣れた手つきでマガジンを取り外して、俺に扱い方を教えてくれる。どうやら、ミスティの場合は専用のスキルでリロードの工程を省いているらしい。

　そして予備のマガジンも渡してもらったが、マガジンにもケルベロスの名が刻印されていた。

「マガジンはどうやって用意してるんだ？　流石に市販のじゃ規格が合わないと思うけど」

「ん。スキルで生み出してる」

「弾丸だけじゃなくマガジンも自作か。マガジンについてはケルベロス本体の『真鑑定』の説明には無かったから、ＥＸの方に付随してきた能力になるよな？　なら、ミスティの場合だと弾丸生成時に自動的にマガジンが現れるのか？　それともマガジンと弾丸は、スキルで別々に作ってるのか？」

「どっちも可能。私は面倒だから一緒に作ってる」

「一緒に出るのか……。分けて作れるメリットってあるのか？」

「……特にない、と思う」

「あったとして、消費『魔力』の増加くらいか」

「ん」

　ミスティがこくりと頷く。

　ふむ。まあ銃の形態が変わればマガジンも別のものにする必要があるし、二丁拳銃の時と他の形態とでは、その都度弾丸の大きさも変える必要が出てくるだろう。となれば、同時に作った方が楽で管理もしやすいか。

　けど、わざわざスキルからして別枠になっている以上、何かしら理由はあってもおかしくはないんだよな。

「……あ、そうだ」

「お？」

「参考になればいいんだけど」

「ああ、何か思い当たるところがあったら何でも言ってくれ」

「『ケルベロス』を入手してすぐは、ＥＸスキルは貰えなかった。しばらく戦っているうちに認められて、ようやくスキルを貰った。それまでは最初から装填されてたマガジンに弾込めをしながら戦ってた」

「へえ。無条件で手に入れたわけじゃないのか」

「ん。この銃を使いこなす為の試練が用意されてて、それをクリアした時にスキルを覚えた」

「へぇ……。興味深いな」

　なおのこと、そのダンジョンに赴きたくなってきたぞ。

「とにかく、弾丸作成はこの武器に備わってるスキルだから、武器に認められた今なら弾丸だけは作れるって事だな」

「出来ると思う。『弾丸作成』って言ったり念じれば、今の形態に合った弾丸が自動的に作成される。イメージすれば個数の指定も可能」

「よし、やってみる。『弾丸作成』！」

　すると、目の前の空中に１２発の弾丸が出現した。

　弾丸作成にどれほどの『魔力』を消費するか記載は無かったが、今のじゃ減った気さえしないな。１発辺り１～１０とかその辺だろうか？

「『真鑑定』『真理の眼』」

　名称：魔導銃ケルベロス専用　徹甲９ミリ弾

　品格：≪幻想≫ファンタズマ

　種別：弾丸

　説明：魔導銃ケルベロスのスキルを用いて作成された専用の弾丸。作成者の力が反映されており、弾丸としての質は最高峰のものへと仕上がっている。

　作成者：アマチ　ショウタ

「……む？」

「どうしたの？」

　確かケルベロスの方にも、作成者のステータスによって威力が変動すると書いてあったな。あれって装備している者のことを指してた訳じゃないのか。

　そしてわざわざ俺の名前が作成者に記されたという事は……。

「ミスティ、俺以外にも武器を渡して弾丸作成できた奴はいたか？」

「うん」

「僕だよ兄さん」

　エスが手を挙げた。確かにエスくらいの人間なら問題なく出来るだろうし、双子ならミスティも気を許すか。

「その時に作った弾丸をミスティは試した？」

「ううん、試してない」

「そっか。じゃあちょっとケルベロスは返すから、今俺が作った弾丸で敵を倒してみてくれないか？　多分とんでも威力になってるはずだ」

「……？　わかった」

　といっても、ワーカーアントにはそもそも最初から一撃だったし、ソルジャーアントでも当たりどころが良ければ変わらず一撃だった。だから威力での確認は難しいかもだが、もう１つ。

　俺（・）の（・）手（・）で（・）作られた弾丸で倒されたらなら、アレも有効化するはず……。

「……いた」

　そうして再び洞窟を進み続けていると、ミスティが通路の先からモンスターの気配を感じ取った。俺もアリ達が奏でるリズムというか、微かな音には聞き慣れてきたから、なんとなくいるのは分かってきたが、まだまだミスティやエスには及ばないな。

「じゃ、やってくるね？」

「ああ、行ってこい！」

　俺たちの会話に反応し、アリ達が一斉に襲いかかってくる。だが、ミスティは一切の怯みも緊張もなく、最前線にいたアリへ銃弾を放った。

『ダァン！！』

　その瞬間、ミスティが構えていた銃身が今までの比じゃないレベルの反動を受け、大きく跳ね上がった。その威力は、ミスティが今まで経験したことのないものだったのか、珍しく彼女の顔に驚きが見えた。

　そして弾丸はというと、先頭にいたワーカーアントの頭を易々と撃ち抜き、そのまま体内を貫通。更には背後にいたソルジャーアントの胴体すら貫いた。そしてワーカーアントだけでなく、装甲が一番堅いはずの胴体を貫かれたソルジャーアントもまた煙へと変わり、２匹とも全（・）て（・）の（・）ア（・）イ（・）テ（・）ム（・）を（・）ド（・）ロ（・）ッ（・）プ（・）し（・）た（・）のだった。