ガチャ419回目:幻想武器

「……殲滅完了」


 ミスティは銃を懐にしまうと、くるりと振り返った。


「ショウタ、どうだった?」

「……ああ、凄かったな」

「んふ」


 素直な気持ちを告げるとミスティは満足げに微笑んだ。……実際には口角が少し上がっただけだが、俺には笑っているように見えた。


「ミスティちゃん、すごいですわー!」

「これが『Sランク冒険者』の実力なんですね……!」

「『雷鳴の魔女』って名前だったから、雷系統の魔法を使いこなすのかと思ってたけど、そっちだったかー! 盲点だったわ!」

「メイド、私は合格?」

「文句なしですね。ですが、それと戦闘参加は別の話です」

「む。なんで?」

「ドロップがショボいからです」


 アイラはミスティの足元に、今回の戦いで得たドロップを全て並べた。といっても、魔石は10個ほどで、素材は数えるほどしかないし、スキルなんてもってのほかだった。


「むぅ」

「あと、確かに私はメイドですが、それはご主人様とお嬢様に仕える為のメイドです。ですので、ちゃんと名前で呼んでください」

「……わかった、アイラ」

「よろしい。ご主人様からも、何か言っておきたい事はございますか?」

「ん? んー……」


 気になると言えばあの武器だけど、聞いたところで教えてくれるのかな?


「その武器が、ミスティが例のダンジョンで得たっていう『幻想ファンタズマ』なのか?」

「そう。これを手にした瞬間、これを扱う為に必要なスキルが私の中に生まれた」

「なるほど」


 こんなレベルの武器だ。扱うのに求められる技量も並大抵の物じゃないだろう。それを補うために、必要なスキルがセットとなってついてくるのも理解はできる。ダンジョンならそれくらいやりかねないし、何より『幻想ファンタズマ』だからな。

 ……とすると、生えてきたスキルも武器と同じランクのスキルの可能性があるな。


「そのスキルって1つ?」

「そう。……ショウタ、スキルのこと知りたい?」

「まあな」


 そりゃ教えてもらえるなら知りたいが、それはダンジョン攻略の報酬だからな。前払いしてもらうわけにもいかないだろう。滅茶苦茶気になりはするが。


「……分かった。スキル名は『銃器マスタリーLvEX』。銃器・射撃にまつわる全てのスキルが最高位レベルで扱えるようになる」

「「「「「!?」」」」」


 LvEX……!?

 MAXよりも上があった事も驚きだが、たった1つのスキルに複数の効果が備わっているなんて。……となると、そこまでの性能のスキルとなると流石に『レベルガチャ』からの排出も厳しそうだな。それに、名前からしてもこの武器を扱うために目覚めたとなると、こっちも唯一無二っぽい感じがする。

 けど、LvEXが複数のスキルの融合した新たなスタイルなのだとしたら、もしかしたらいくつかのMAXレベルのスキルを『圧縮』していけば、その内辿り着けたりするんだろうか?


「……ショウタ? つんつん」

「あ、すまん。考え事してた。……けど良いのか? 今の、滅茶苦茶大事な情報なんだろ?」

「ん。けど平気。私はショウタに貰われるから」


 ちらりと彼女達の方を見れば、皆頷き返してくれる。

 なるほど、何を話し合ったのかは知らないが、ミスティは合格なわけだ。


「……わかった。けど、一応あと6人残ってるからな」

「ん。がんばる」


 ミスティのアホ毛ごとポンポンしてみると、頭を押しつけてくる。

 うーん、やっぱこの仕草はエンリルに似てるな。


「いやー、兄さんに貰ってもらえて良かった。これで安心だね!」

「まだ決まってないから」

「はは、そうだね。焦り過ぎたかな」


 全く。

 まあでも、エスに兄呼びされてるせいか、段々とこいつの事を弟のように感じ始めてるんだよな。最近も妹が大量に増えたし、俺って実は、こういうのに流されやすいのかも。

 ともかく、気になる事から解決していくか。


「ところでミスティ。そのケルベロスだけど」

「うん。触ってみる?」

「え、良いのか?」

「多分だいじょうぶだと思う」

「……?」


 

 自分の武器なのに、変な反応だな。でも俺はこの武器から嫌な予感はしないしな……。とりあえず2丁とも手に取ってみた。


「……おっ?」


 持った瞬間、ずしっとした重みとは別に、両手から強烈な異物感を感じた。しかし、それも数秒と経たずに消え去り、不思議な一体感を感じていた。

 なんだったんだ、さっきの感触。


「ショウタ、すごい。一瞬で黙らせた」

「え? 誰の話?」

「兄さん、『幻想ファンタズマ』武器っていうのは本当に曲者でね。僕はこの銃以外に2つほど知ってるんだけど、どれもプライドが高いんだ。持ち手に対して何らかの品格や強さを求めてくる。彼らのお眼鏡に適わないと、武器の方から拒絶されるんだ。軽い反撃なら武器から手が弾かれる程度で済むが、機嫌が悪いと見境なく暴れ回ったりもする。向こうでも、『幻想ファンタズマ』武器の解析実験で何人もの死傷者が出たくらいだ。こいつらは非常に強力な反面、面倒な性質も持ち合わせているんだ」

「つまりなにか? こいつら、『意思』があるのか!?」

「それはわからない。まだ誰も会話できた者はいないからね。けど、長年付き添ってきたパートナー達は直感的にわかるらしいけど」


 エスがミスティに視線を向けた。


「うん。ショウタの実力が相応しくなければ、驚かしてやろうってつもりだったみたい。けど、ショウタが持った瞬間、上下関係を叩き込まれたみたいな雰囲気を出してる。今はすっごく尻尾振ってる感じがするかな」

「……つまり?」

「専用スキルは与えられないけど、使っても良いって言ってる」

「おぉ」


 まさか、借り物とはいえ二丁拳銃を扱える日が来ようとは。弾丸も『魔力』がある限り使いたい放題だし、これはちょっと面白そうだな。

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