ガチャ417回目:溢れる素材
『ギチッ』
『ギチギチッ!』
「何体来るんだよ!」
もうかれこれ30体くらいは蹴散らしたはずだが、それでも奥から次々とアリの群れが襲って来ていた。しかも、ラッシュがずっと続くわけではなく、終わったかと気を抜いたら襲ってくるの繰り返しで、なかなか気が休まらないのも面倒なポイントだった。
ここでマップが全開放されていたら残りの数とかも分かって安心できるんだろうけど、洞窟タイプだとエンリルを使っての先行調査は使えないからな。『アトラスの縮図』を使ってのフルオープンは使いたくないし。
まあこれも、俺がそうなるようにしてしまっている縛りプレイのようなものだし、文句を言うのは違うか。
そうしてさらに追加の20体ばかりを煙に変えたところで、ようやく敵のラッシュが落ち着いた。
「あー。……あー!」
……。
ふむ、声を出しても新手が湧くこともないみたいだし、本当に打ち止めみたいだな。
「皆、終わったよー」
「お疲れ様ー」
「噂には聞いてましたが、無限に出てくるんじゃないかと心配になる雰囲気でしたね」
「天井を這って出てくるのは怖かったですわー」
「ソルジャーアントの外殻は貴重かつ高額ですから、扱いやすいドロップは助かりますね」
アヤネ達が俺のそばに近づいてくる頃には、アイラの手によって散乱していたアイテムは全て回収された。
「あー、そっか。スキルオーブは基本的にストック優先だもんね」
「アイラさん、いつも財源管理ありがとうございます」
「これも私の役目ですから」
そう言えば、アイラ達は必要に応じていろんなものを用意してくれてるけど、それも俺の冒険で得たアイテムの中から不用な物を売り払って得たお金で購入してるんだよな。その中でも一番価値のあるものはスキルオーブな訳だが、俺が『圧縮』用にストックしまくってるから、基本的に売れるものと言ったら魔石と素材。あとは宝箱から出てくる扱えない武器とかになるんだよな。
うーん、何かスキルを手放した方がいいだろうか。
「ご主人様。今回の冒険では例の槍がたくさん出て来ましたから、その心配は無用ですよ」
「ああ、そっか。そういえばアレがあったな」
「はい。それにご主人様が狩りをすれば、それなりに安価な素材でも山のように得られるわけですから、塵も積もればですよ」
「そうか……分かった。いつもありがとな」
「どういたしまして」
「ちなみに今回の冒険では、その塵はどれくらい積もってるんだ?」
「そうですね……。普段の日用品の類を除けば、私が初期から持っている『異次元の手提げ鞄』が満タンになるくらいには溜まっていますよ」
「おぉぅ……」
確かアイラの『異次元の手提げ鞄』は、容量としては協会の会議室と同じくらいの広さがあるんだっけか。魔石だけで3000個近くあって、『綿毛虫の玉糸』が1000個。『シザークラブの甲殻』が1300強。『人面魚の血石』が500ちょい。レイヴン素材が100ちょい。その他レアモンスター素材が数十にいくつかの肉も加味して……。
うん、そりゃ溢れるか。
「これだけのアイテムを売り捌くには、それなりの日数がかかりそうですね」
「まあ休養日というか、ここをクリアしたらちょっと長めのダンジョン休みを入れるからその時に頼む」
「あたし達10人分のデートも予定にあるもんねー?」
「ガンバリマス」
「兄さん、10人もいると大変だね」
「まあ、全員大事な彼女だしな」
「流石、甲斐性あるね」
そうしていると、暇そうにしていたミスティが隣にやって来て、俺の腕をツンツンした。
「ショウタ、デートいくの?」
「ああ。1人1日代わりばんこにな」
「……そう。なら私も、ショウタとデートがしたい」
「え? 前も言ったけど、ミスティは自分を大切にだな……」
「今回は違う。私は……ショウタがいい」
言葉足らずだが、彼女が言いたいことは伝わって来た。
しかし急だな。今の俺は、レベル的に100未満だから、エスやミスティにしてみれば、オーラ的には見慣れた存在でしかないはずなのに。何が決め手だったんだか。
ちらりとエスを見れば頷いて来るし、多分本気なんだろう。なら、俺から言えるのは1つだけだ。
「……わかった。ならまずはうちの彼女達から了承を貰ってきてくれ。4人全員からOKが出たら、今度は第二層にいる妹達からも許可を貰ってくるように。出来るか?」
「がんばる」
「そうか。……まあ、頑張れ」
ミスティは彼女達と一緒に後方へと下がっていく。昨日の感じを見るに、相性は悪くなさそうだからすんなりとOKが貰えそうではあるよな。
「しっかし、エス」
「なんだい兄さん」
「俺は別にソレは無しでもお前の所のダンジョンは攻略するつもりではあったんだぞ? 誓約書を抜きにしてもな」
彼女達には言わずとも伝わっていたことだが、それを出会ったばかりのエス達に求めるのは酷だ。だからその内、それとなーく俺の本気度を伝えるつもりだったんだが、まさかミスティがこんなにすぐ俺との距離を詰めてくるとは思わなかった。
「それは……。まあ、兄さんを見てると、なんとなくそんな気はしていたよ」
「だったらなんでそうなるよう仕向けたんだ? 昨日のミスティを見ている限り、俺に対しての関係構築はさほど乗り気じゃなかっただろ?」
「兄さん、もしかしてミスティの感情が読めるのかい?」
「いや、うちの彼女達みたいに読心術は使えないけど……。それでもまあ、ミスティは結構わかりやすい部類だと思うぞ」
まあ、イリスに比べれば誰でも読みやすい部類に入るかもしれないが。
なんだかんだで、エンキ達ゴーレムは完全に繋がっているから喋ってる内容は100%わかるが、イリスは未だに50%くらいしか分かんないんだよな。けど、イリスって結構真っ直ぐというか、欲望に忠実な所があるから、雰囲気だけでも何を言いたいのか察する事が出来るし、今のところ問題は無いんだが。
「凄いね。兄さんならミスティの想いも汲み取ってくれると思ってたけど、しっかり見えてたなんて」
「で、なんでけしかけたわけ?」
「けしかけたなんて人聞きの悪い。ちゃんとミスティが望むようにしてあげただけだよ」
……嘘は言ってないが、本音も言ってないな。
「エス」
「……わかったよ。本当の事を話すよ。故郷に、ミスティにアプローチを仕掛けて来てた奴がいるんだ。僕としてはそいつの事が嫌いだし、ミスティも嫌ってる。兄さんとくっつかなければ、そいつがずっと付きまとってくるって、それとなく後押ししただけさ」
「なるほど。そいつに比べれば俺の方が幾分かマシだと」
「マシなんてものじゃないさ。兄さんより条件のいい男は今後現れない可能性があるって、ミスティには改めて認識させただけだよ」
「……なるほどね。ところでその男って、そんなに嫌な奴なのか?」
そう聞くと、エスは少し思い悩んだ末にこう答えた。
「兄さんなら、たぶん出会い頭に殺しに行くんじゃないかな?」
俺が殺意を剥き出しにして我慢も出来ないとか、よっぽどだと思うんだが。
そんなに嫌な奴なのか……?
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