ガチャ416回目:アリの巣へ
「ショウタ」
「ん?」
皆で集まって朝食を摂っていると、ミスティが神妙な様子で話しかけてきた。
「あの布団最高だった。ありがと」
「ああ、そりゃ良かった。俺もあれにくるまった瞬間意識が飛んでさ、皆が言うには爆速で寝息を立ててたらしい」
「いつもみたいにショウタ君の隣を確保しに行ったアヤネも、秒で意識が飛んでたもんね」
「目覚めはバッチリでしたわ!」
「私も姉さんも、そんなアヤネちゃんの様子を見て恐る恐る入って行ったんですけど、そこから記憶がなくて……」
「ご主人様が『真鑑定』で詳細な効果を見ていなければ、悪さを働く道具なのではないかと疑うほどでした」
「ちなみにアイラは耐えれたの?」
「……数秒だけですが」
アイラですらあの気持ちよさには抗えなかったのか。
義母さん達は仕事で大変そうだし、このプレゼント喜んでくれるかなぁ。
「エスは布団使った?」
「ああ、使わせてもらったよ。けど、あれは危険だね。ダンジョンでは警戒し続けないといけないのに、うっかり熟睡してしまうところだったよ」
「警戒してくれてたのか?」
「つい習慣でね。こんな平和なダンジョンは初めてだから勝手がわからないのさ」
「あー……。すまん、言うの忘れてたわ。夜中はエンキ達4人が交互に監視をしてくれてるから、警戒は不要なんだ」
『ゴゴ!』
エンキがサムズアップした。
「……もしかして、ゴーレムは睡眠を取らないのかい?」
「ああ。だから次からは安心して眠って良いぞ」
まあホントは、眠りはしないけど省エネモードに移行するから外部の警戒以外は反応が薄くなるんだが。ちなみに今の警備体制は、エンキ&エンリルペアと、セレン&イリスペアだ。警備は2時間前後で交代しているらしいのだが、その時間は試聴した映画やアニメの長さによるため、交代時間にはバラつきがあるらしい。
ちなみに、昨日までは第二層ということもあって警備をする必要がなかった為、リビングに集まって4人で一緒にアニメを観ていたらしい。まあ、エンキ達が退屈せずに済んでいるのなら、良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、改めて第四層の攻略を始めるか」
俺達は、キャンプ地の洞窟から出る。今の時刻は朝の8時過ぎということもあってか、他の冒険者達も活動する時間らしい。洞窟から先は、裂け目によって左右に道が分かれているのだが、誰もが左のルートを通っているようだった。
「ショウタさん、どのルートで進みますか?」
「うーん。……そういえば昨日も、別の冒険者達は全員左側ルートで進んでいたような気がするな。となると、こっちルートが第五層に続いてる?」
「はい、その通りです。モンスターも少なくて安全な道のようですね」
「なるほどね。……とりあえず、マップは端から埋めていきたいし、第五層ルートを確認しておこうか」
そうして左のルートを進み始めた。
すると案の定、他の冒険者達も行き来する関係かモンスターは影も形もなく、何度かの分かれ道も全て左ルートを選択している内に下り階段をみつけてしまった。
この場所も、第三層への登り階段と同様に、階段前は安全な広場になっていて、その手前には大地の裂け目エリアがあった。そしてそこには陽の光が差し込んでいて、上を見上げてみれば微かな切れ目の先に空が広がっていた。
あれも、昨日戦ったレイヴンの住処の一つだな。立体地図にはしっかりと赤点と赤丸が表示されていた。
「兄さん、どうするんだい? このまま降りてみる?」
「冗談だろ。今度は手当たり次第に行ってない通路に入ろう。まずは目の前のこの道だ」
「了解。だが一応警告だ。この通路の先から微かだが複数の足音がする。人間のものとは思えないし、恐らくモンスターだろう」
「そうなのか、ありがとうエス」
「どういたしまして」
音……?
耳を澄ましてみるが、全く何も聞こえん。
強いて言うなら川の流れる音くらいだ。俺の『知覚』でも聞き取れない音を拾えるなんて、耳が良いだけじゃ説明出来ない。きっと俺の知らないスキルを持ってるんだろうな。気になるが……勝手に覗くのはマナー違反だろうし、今はモンスターに集中しよう。
そうして洞窟をゆっくりと進むと、ようやく俺の耳にも異質な音が聞こえてきた。
『ギチギチ』
何の音だ? 『初心者ダンジョン』の第一層よりも狭い感じの洞窟だからか、音が反響して聞こえてくる。ここだと少し喋るだけでも遠くまで木霊してしまいそうだ。
こう言う時、何も言わなくても皆静かにしてくれるからありがたいよな。再び耳を澄ませるも、この歯軋りに近い音は、やはり奥から聞こえて来ていた。アリっていうくらいだから、鋭い歯があるのかもしれんな。
そして通路の先、そーっと曲がり角から奥を覗いてみると、丸まった部屋へと繋がっていて、その中心部に4体のモンスターがいた。
「『真鑑定』」
*****
名前:ワーカーアント
レベル:32
腕力:308(+28)
器用:198(+18)
頑丈:495(+45)
俊敏:330(+30)
魔力:440(+40)
知力:220(+20)
運:なし
【
【
【
装備:なし
ドロップ:アントの外殻
魔石:小
*****
名前:ソルジャーアント
レベル:42
腕力:500
器用:280
頑丈:550
俊敏:400
魔力:500
知力:300
運:なし
【
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ソルジャーアントの外殻、アントのギ酸
魔石:中
*****
あれがアリのモンスターか。
複数種類いるってことは、ゴブリン同様100匹カウントは累計だろうか? 個別判定じゃないことを祈ろう。
「よし。じゃあ、ちょっと行ってく――」
そういつもの調子で自身に喝を入れようとしたところで、アリ達がこちらへと振り向き一斉に突撃してきた。
『ギチギチ!』
『ギチギチギチギチ!!』
「うおっ!?」
慌てて抜剣し、こちらからも接近。突進のため隙だらけとなった1匹目の脳天に剣を振り下ろした。
『ガィン!』
「硬ってぇな!」
豪快な音を鳴らすも相手の装甲はステータス以上に分厚く、怯むくらいで倒すことはできなかった。続けて甲殻の隙間に剣を差し込んでみると効果は抜群で、そこから首をねじ切ることに成功。
試しにやってみたが上手く行った!
【レベルアップ】
【レベルが16から18に上昇しました】
雑魚でもレベルはそれなりにあるし、やっぱ上がるよな。そして2匹目、3匹目と煙に変え、最後に遅れてやってきたソルジャーアントを斬り捨て、残心する。
「ふぅー、ビックリした。なあ、こいつらって音で――」
そう口にしたところで、再び奥から何かが迫ってくる気配を感じた。もしかしてここって、音を出すたび近くの奴らがエンドレスで襲ってくるのか!?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます