ガチャ406回目:誓いの誓約書
2人と握手が終わったところで、改めて確認しておくか。
「あとは、そうだな。エスから見て、俺の人間性は合格か?」
「そうだね……。まだショウタの一側面しか視れていないけど、今のところは問題無さそうかなと思っているよ」
「そうか。……じゃ、俺達はこれで」
確認したいことも済んだし、もうさっさと第四層へ向かいたい俺は踵を返すが、肩をエスに掴まれた。
「ちょ、ちょっと待ってくれないか。話はまだ終わってないよ」
「えぇ……? 挨拶も終わったし、互いに最低限の繋ぎは出来た。これで終わりでよくない?」
「せっかちすぎないかい? 本命の話がまだだよ」
「本命ぃ?」
なんだよ勿体ぶりやがって。最初から言えばいいのに。
「はぁ。君の地雷は彼女達だけかと思ったけど、まさか『時間』もそこに含まれるとはね……」
「で?」
「僕達が君に会いに来た理由は、『極東の魔女』から聞いているだろう?」
「『極東の魔女』?」
誰だそれ。
「ご主人様。奥様のことです」
「ああ、サクヤお義母さんか」
只者ではないと思ってたけど、外国から二つ名で呼ばれるほどには恐れられているのか。そういえば俺も、初見の時は美魔女だとか思ってたっけ。
そんなサクヤお義母さんから言われたことといえば。
「……ああ、『ホルダー』としての力を借りたいって話なら、さっきの話で十分じゃないか?」
『Sランク冒険者』であるエスとミスティが持つ、力の象徴でもある『
外国のダンジョン攻略って、入るのにも色々と規制や制限がかかるって話らしいけど、現地の『Sランク冒険者』から直接入る許可がもらえたのなら話は別だろう。こんな面白い話、手を出さないわけがない。
現時点でも、俺の中での攻略優先度に、外国のそのダンジョンが割と上位に食い込んでるくらいには興味が惹かれている。なんなら、国内……。いや、第一エリアの近郊ダンジョンを平らげたら、そっちに出向くのもアリかもしれないな。
「いや、そんな不確実な口約束だけでは信用ならない。ミスティを君に妻として差し出す代わりに、僕達のダンジョンを攻略してほしい」
「え?」
「これがさっき伝えそびれていた、もう1つの報酬だよ。どうかな、受けてくれるかい?」
「私からもお願い。望むのであれば何でもする。私の身体も力も、好きに使って良い。だから、祖国のダンジョンを攻略して欲しい」
「えぇー?」
あまりに衝撃的な内容に驚き固まってしまったが、2人とも目がマジだった。確かにサクヤお義母さんからはそういう関係を求められると聞いてはいたが、俺が想像していたのはアヤネとの出会い頭の時のような情景であって、まさか人質みたいな感じで差し出して来るとは思わなかった。
つーか、ならなんでさっき「わかんない」って言ったんだ。
「ミスティは、結婚したくないんじゃなかったの?」
「それとこれとは別。けど、愛して欲しいなら愛すよ」
それほどまでに追い込まれてんのかよ。
「……はぁ。ちょっと彼女達と相談するから、そこで待っててくれ」
「ああ、いくらでも待とう」
「待ってる」
そうしてアイラにお願いして『封音の魔道具』を張ってもらい、俺達は膝を突き合わせた。
「まさかあんな切羽詰まった感じで言われるなんて思わなくて、つい相談って形になっちゃったけど、どうしようか」
「ショウタさん的には、そんなの無くても攻略する気持ちはあったんですよね?」
「そりゃね。だから余計にビックリしたというか」
「まあショウタ君が、今どれだけそのダンジョンに惹かれているかは、あたし達ならまだしも、ほんのちょっと顔を合わせたくらいで把握しきれるわけ無いわよね」
「旦那様の心を読むのは、わたくし達の専売特許ですわ!」
「ご主人様がこの場でいくら攻略すると伝えようとも、彼らは信じてくれないでしょう。あの様子からして、相当向こうは焦っているようですし」
ダンジョン攻略を焦る理由ねぇ。なんだろ?
そのダンジョンがとんでもなく迷惑な作りをしてるんだろうか?
「てことは、色々と吹っかけれるんじゃない?」
「え、ここで吹っかけるの??」
あんなに追い詰められている2人に?
そんな殺生な。
「ショウタさんがそのダンジョンを攻略するのはもう確定事項なわけですし、可能な限りこちらに有利な条件を詰め込んで誓約書にサインをさせましょう。派閥に所属していないとはいえ『Sランク冒険者』ですし、色々と各方面に融通が利くはずです」
「日本に直接やってこれるくらいですものね」
「こんな事もあろうかと」
そう言ってアイラが鞄から取り出したのは、不思議な雰囲気を発する1枚の紙だった。
「なにそれ?」
「ダンジョンから産出された『誓いの誓約書』です。これは普通の紙の誓約書などではなく、履行を破ろうとするだけで罰が下り、本当に破ると更に重い罰が下ります。魔道具のようなものですが、今のところ人類では再現ができていません」
「流石アイラさん!」
「抜かりないわねー。でもグッジョブよ!」
「アイラは最高ですわー!」
「……とりあえず『真鑑定』『真理の眼』っと」
名前:誓いの誓約書
品格:≪固有≫ユニーク
種別:魔道具
説明:特殊な魔印が施された魔法の誓約書。ここに書かれた誓約は必ず遵守しなければならないものであり、破った者にはアイテムの『品格』によって様々な懲罰が下される。懲罰には2つの段階があり、実行に移そうとすると発動する第一段階と、実行した際に起きる第二段階に分けられる。また、制約内容に盛り込む事で罰を増やすことも可能。
懲罰(思考/ユニーク):全身に激痛が走る。罰則者の精神状況に応じて威力が変わる
懲罰(実行/ユニーク):30日間全てのスキル、ダンジョンにまつわる全てのアイテムが使用不可
「うわぁ、エグい……」
一応見た内容は彼女達に共有してみる。
「なるほど。高品質の『誓いの誓約書』を持ってきたつもりでしたが、正解でしたね」
「聞くところによると、激痛に関しては一般の人でも冒険者でも、感じる
「罰を受ける人間のステータスで軽減されたりしないってことね」
「怖いですわ……」
なんか、このまま放っておいたら、とんでもなく恐ろしい物が出来上がっちゃいそうだな。2人からは本気で困ってるみたいな雰囲気も出てたし、話してたら少し情が湧いてきてしまった。
ちょっと釘を刺しておくか。
「あー……。あの2人もここまで来てあんな事言うくらいだし、あんまり酷い誓約はつくんないであげてね?」
そう言うと、彼女達は微笑んでくれる。
「ふふ、勿論です。ただ、ショウタさんのスキルやステータスは、絶対に第三者にバレてはいけませんから、そこを徹底させるだけですよ」
「そうそう。ショウタ君が嫌がるような事はしないから、安心して」
「向こうは人質として差し出すつもりの様ですが、彼女はご主人様の妾候補でもありますから。あまり無茶な制約をかけて拗らせるつもりはありませんよ」
「それなら良いんだけど」
「旦那様が優しくて嬉しいですわ」
「まあ、困ってたらお互い様って言うしね」
さて、俺から言う事はもうないし、あとは黙って完成まで見守るとするか。
「あ、ちなみに以前サクヤお義母さんから送られた契約書や、アイラのメイド契約の紙は……」
「ご安心ください。あれは普通の紙です」
俺は心からほっとした。
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