ガチャ404回目:訪問者
宝箱とドロップの確認を終えた俺たちはテントを出て、各々が準備を始める。カスミ達は修行のための準備運動だが、俺達は第四層への出発準備と、拠点の回収。そして仮設置の畑空間の改修だ。
流石に第三層から第四層へ渡るには、あの山道をダッシュで移動してもそれなりに時間は掛かるだろうし、一般のデート客が往来する道だ。あまり飛ばしすぎるのは迷惑をかけるし、事故にも繋がりかねない。
というか単純に面倒なので、一旦拠点を第四層の入口近辺に移すつもりだ。けどカスミ達はここで修行させるのが一番良いことから、畑空間はそのままに光が周囲に溢れ出ないように壁を設置するのだ。なぜなら、明日には『黄金の実(大)』も実を付ける予定だからな。
この場所に他の冒険者が紛れ込んでくることはそうそうないとはいえ、あれは人目を引くものだし、何よりもテントの裏側で大量の光源が発生しては彼女達も修行に集中できないだろう。
それに、最悪テントを貫通するほどに眩しく発光するかもしれないし、そうなったら安眠の邪魔になるだろう。まあこの拠点移動は考えすぎで、次の第四層も第三層のように呆気なく終わってしまって、心配が杞憂で終わる可能性もあるが、それはそれだ。何にせよ、第四層が一度終われば戻って来て、実を回収した後に改めて、全員で第五層に移動してしまえば良い。
準備に関しては彼女達に全て任せ、その間に俺は『充電』を済ませる事にした。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:34
腕力:32918(+16422)(+16459)
器用:32926(+16426)(+16463)
頑丈:32714(+16320)(+16357)
俊敏:32014(+15970)(+16007)
魔力:33362(+16646)(+16681)
知力:33704(+16817)(+16852)
運:16544
*****
『13/50』
よし、これで準備は万端だ。
『ゴ!』
筐体をしまうと、そこに小人形態のエンキが走ってやってくる。どうやら壁の設置が滞りなく完了したらしい。
「おー、ご苦労様」
『ゴゴ』
エンキを腕に抱えて撫でてやると、嬉しそうな声をあげた。
そうこうしていると、準備を終えたアイラ達がやってくる。
「ご主人様、完了です」
「いつでもいけるわ」
「よし。カスミ、そっちは問題ないか?」
「うん、アイラさんから食料や飲み物を、ポータブル冷蔵庫ごと分けてもらったしね。1週間分くらいあるみたいだし、問題ないよ」
「お兄様達が攻略に何日掛るか分かりませんが、私達の事は心配無用です。頂いたスキルは、しっかりマスターしてみせます!」
「うん、期待してる」
カスミ達を1人1人ハグして、俺達はその場を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『ピコンッ』
第二層から第三層への階段を降りようとしたその時、俺とアヤネ以外の3人の端末から、何かのメッセージが届いた音がした。
「昨日の今日で届く辺り、流石だな」
外との通信を可能とし、範囲内の端末全てをオンラインとする黒柱。
これらは調査済みのダンジョンに協会が設置した魔道具であり、複数階存在するダンジョンには必ずと言っていいほど存在している。設置場所は基本的に各階層の入口であり、その周辺はダンジョン外と同じく、少しか細いが電波の入る場所となる。
その為、ダンジョン内で長時間生活していると、黒柱に近寄った際、それまでに溜まったメッセージを一斉受信してしまうというのはよくある話だ。
俺たちが拠点にしている場所は安全圏の隣とはいえ、黒柱からは距離もあるため電波の届かない場所。だからこうやって黒柱の近くに寄れば、溜まったメッセージが一気にやって来るのも当然というもの。
昨日なんかは、数日ぶりに近寄ったこともあって、俺以外の端末は結構なメロディーを奏でていた。連絡を取る相手のいない俺の端末は、静かなものだったが。
閑話休題。
昨日遭遇した『スピードスター』について、彼女達は帰り際、それぞれが
「大丈夫か?」
端末を見た彼女達の様子から、あまりよくない内容のものかもしれないな。そう思って聞いてみたんだが、突然背後から声をかけられた。
「やあショウタ、昨日ぶりだね」
振り返ると、階段を登ってくる1組の男女がいた。
片方の男は、昨日嫌な出会い方をしたばかりだ。
「……うわ、昨日の今日でもう来てたのかよ」
「その反応、傷つくね」
昨日絡んできた『Sランク冒険者』エルキネス・J・サンダース。正直もう出会いたくないと思っていたが、今日は1人ではないらしいな。もう片方は、厚手のコートを着た、どこか気怠げな様子の紫髪の女だった。軽く会釈をしてくれたが、彼女からも只者じゃない雰囲気を感じるな。
あ、目が合ったら逸らされてしまった。恥ずかしがり屋なのかもしれない。
彼女はこいつのチームメンバーだろうか?
「本当はもう少し間を置くつもりではあったんだけど、噂では君は中々休みを取らないことで有名だそうじゃないか。普通ならあんな強敵を相手にしたら休むはずだと勘違いして、別の事に時間を潰すところだったよ」
「そのまま別のことしてろよな」
「……エス、彼がそうなの?」
「ああ。気配は抑えられているが、その実力は本物さ」
「ふーん?」
少女は興味深そうにジロジロと見つめてくる。けど、目が合うとまた逸らされてしまう。なんなんだ。
でも、あの『スピードスター』がわざわざ俺の前に連れて来るくらいだ。彼女も俺に用があるのかもしれない。
「でも、エスの言った通りね。彼、トゲトゲはしてるけど、もう昨日の事は怒ってないみたいよ」
「ははっ、だろう? 彼のようなダンジョンに人生を捧げるタイプの人間は、余計な事に力を割きたくないのさ。怒る事も無駄だから、さっさと忘れるのがベストだと考えているのさ」
俺ってそんなにわかりやすいのか?
完全初見の人間にまで俺の考えが透けてるみたいなんだが。
「……俺の事がわかってるなら、今この時間も無駄に感じてることは理解出来るよな?」
「そう邪険にしないでくれ。君とは色々と話がしたいんだ」
「話、ねぇ……」
面倒だが、相手にしないわけにもいかないよな。実力行使されると面倒なことこの上ないし。
それに、いつまでも一般客の目に留まる場所で彼らと問答を繰り返すのもよくないだろう。『ウェンカムイ』戦直後のイリーナ達の件もあるし、高レベル冒険者の存在は一般人には毒になりかねない。
ひとまず移動するか。
「ここじゃなんだし、移動しようか」
「ああ、構わないよ。いこうかミスティ」
「うん」
先行して第三層に降りていくと、彼らが背後からついてくるのを感じる。
隣にやって来たアイラに目配せすると頷いてみせた。その反応からして、恐らく端末に届いたのは彼らの来訪を告げるものだったんだろう。ちょっと遅い報告ではあるが、電波の関係上仕方がないし、なにより『スピードスター』の移動速度を考えるとな……。
リアルタイムで情報が送られてきたとしても、コイツの場合メッセージを打ち込んでる間に現れかねない。
さて、昨日は俺の顔を見に来ただけなんだろうが、今日は一体何の用事かな。
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