無料ガチャ034回目:疾風迅雷チーム会議
「それにしても、イズミちゃんが『運』特化かぁ。考えもしなかったな」
スキル大放出祭と夕食は終わり、ショウタ達が拠点へと帰っていったあと。カスミ達は今日のことを語り合っていた。
最初は第三層の景色やフォーリングフルーツの事。
乱入してきた『スピードスター』の事。
自分達を『俺の物』発言したショウタの事。
そして今の話題の中心は、今後のことと、大量のスキルや『SP』の使い道だった。
「単純な強さだけを求めるなら不要でしょうけど、今後ももっと成長していくにはお兄様が分けてくれた以外にもスキルが必要になってくるわ。元々帰ってから集めるつもりではあったけど、お兄様が想像以上に太っ腹というか、甘やかしてくれたおかげで余裕が出来たのよね☆」
「あんなに大量のスキルをストックしてたなんて、お兄さんほんとにすごいよねー」
「今日私たちに分けてくれたスキルだけで、たぶん一生遊んで暮らせるくらいの価値はあると思うわ」
「そうなのですか?」
「……あ。イリーナの価値観で考えると、少し足りないかもしれないわね……」
「あら。これでもわたくし、金銭感覚は以前より庶民寄りになりましたわ」
「『B級冒険者』の稼ぎは庶民ではないと思うわ……」
話が脱線し始めたので、ハヅキが咳ばらいを入れる。
「ごほん。値段は何億になるかは分かりませんが、今回兄上が配って下さったスキルの数々。あれは本来、ご自身と奥方様のために取っておいたものでしょう。それをそれがし達に分けて下さったのです。それはとても光栄なことではありますが、この恩に報いるには生半可なモノでは釣り合いません。必ずや兄上に役立つための情報をお渡ししなければ」
「だよねー。だからこその『運』ってわけ。こっちのダンジョンで取れないスキルを送ったりとかさ。なんなら、地元であたしも『ホルダー』になってしまえば、色々と融通がきくと思うのよね☆」
「イズミちゃんが『ホルダー』になったら……」
全員がその様子を想像する。
「イズミ、女王様になる?」
「高笑いしてそう」
「想像に難くないわ」
「ふふ、様になってますわね」
「ちょっと! あんた達、あたしをなんだと思ってるのよ!」
「おや、されないのですか?」
「……あたし、これでも尽くす女なの。お兄様の信頼を裏切ったりはしないわ」
「おお、意外」
「イズミもお兄さんに堕ちてた」
「堕ちたとか言わないで。それにもしも独立を狙ったところで、同じ国にいる以上領土争いは必然的にお兄様との戦いになるのよ? あんなダンジョン攻略に適した人と争って、勝てるわけがないじゃない」
「それはそうかも」
「てか、お兄ちゃんの敵というか、ライバルになりえそうなのって『運』特化だったり、実力がとんでもなく高い人になるんだよね? そう考えると、国内にお兄ちゃんの敵、いなくない?」
「今日遭遇したSランクの『スピードスター』並の冒険者ですか。噂は所詮噂でしかありませんが、それほどの実力者となると、そうはいないかと」
「アヤネさんのお世話で前線から引退したとはいえ、アイラ先輩は最前線をいく冒険者のはずでした。あの方が引退せずに活躍していたら、今頃はお兄様のライバルとなりえたかもしれないわね」
「アイラ先輩ですか……。確かにあの方レベルの人材となると、数えるほどしかいらっしゃらないでしょうね……」
そのまま話題は『SP』へと移行していった。
「結局、ボクは『腕力』『器用』『俊敏』を4:2:2に割り振る感じになるかな」
「良いじゃない。私は『頑丈』系統のスキルを得たとはいえ、今後のことを考えて『腕力』『器用』『頑丈』『俊敏』を2:1:4:1で割り振ることにしたわ」
「ハル、頼りにしてるよ!」
「任せなさい」
「私はお兄ちゃんの戦い方を見て、改めて技術の必要性を省みることにしたかな。だから『腕力』『器用』『俊敏』を3:4:1で行こうと思うの」
「それがしは逆に技の威力を高めるため、『腕力』『器用』『俊敏』を4:3:1で行くつもりです」
「わたくしは今まで通り、『魔力』と『知力』を4:4でいく予定ですわ」
「あたしは『運』極振りー。……うんうん、皆良い感じじゃない? バランス整ってきた気がするわ☆」
イズミはメンバーの状況を『鑑定』で確認をするのと同時に『SP』が割り振られた場合のステータスを想像し、そこから想定される動きの練度と強さを予測する。そしてこのまま修行が順調に推移し、出来上がったチームの熟達っぷりを想定。そこで、全員が上級冒険者の力を身に付けたといっても過言ではない実力に至る事を確信した。
イズミは満足げに頷く。
「あ、でも割り振るのはこのダンジョンの攻略が終わってからね。お兄ちゃんが特大の経験値を用意してくれるみたいだし」
「うんうん、わかってるよ! ボスって何が出るのかなー。楽しみー!」
「気が早いわね。まだ第四層と第五層が残ってるじゃない」
「ふふ。ですがお兄様の場合ですと、あの地図がありますから、今日みたいに1日やそこらで攻略してしまいそうですわね」
「確かに。兄上ならやりかねません」
「お兄様、ここの事前情報とか何も聞いていなかったのよね?」
「うん、ネタバレが嫌だからって自主的に」
「そんな状態で、独自のスキルだけで第三層の全てをたった半日で網羅した挙句、いないとされていたモンスターの発見。それに討伐と制覇まで……。本当に規格外だわ」
「それを鼻にかけないところが兄上の魅力ですね」
皆が頷き合った。
そして第二エリアに戻った際の予定なども話し合う。
「あ、そうだ。戻ったら婚約者が出来た事家族に伝えないと」
「ッ!?」
「確かにそうですね。それがしが殿方に嫁ぐなど、一体誰が予想できたでしょうか。不思議な気分ですね」
「ボクとイリーナの関係は両親公認だからさ、その辺り諦められてたと思うんだよねー。けど、お兄さんなんていうとんでも存在に貰われるとなったら、ビックリするんじゃないかな」
「ふふ、そうですわね。ですがきっと、祝福してくださいますわ」
「私も、相手が相手だから家族の負担が軽減されそうだし、喜んでもらえそう。……でもカスミは、大変なんじゃない?」
「うぅ……。お父さんなら許してくれそうだけど、私から伝えるの恥ずかしいなぁ……」
「んー? でもさ、修行が終わってすぐに帰る訳じゃないでしょ? お兄さんとのデートもあるんだしさ! だから、その時にお兄さんに電話して貰えばいいんじゃないかなー?」
レンカの言葉にカスミはハッとなり、彼女の手をガッシリ掴んだ。
「レンカ、ナイスアイディア!」
「おー、よかったー」
故郷への帰還と一緒にデートの話で盛り上がる中、イズミは一人別の事を心配していた。
「このニュース、第一もそうだけど、第二の掲示板も大荒れ間違いなしだろうな☆」
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