ガチャ397回目:海割り発動
結果として、俺たちの行動は全て空振りに終わった。
湖のほとりで遊ぼうとも、足が付く場所でバシャバシャしようとも、水着に着替えて中心部近くで泳ごうとも、滝壺に向かって石どころか攻撃魔法を炸裂させようとも、バブルアーマーで中心部の底に潜り込もうともだ。
まあ、流石に滝壺の周辺には近付けなかったが。地上でも接近は困難だが、水中はもっと難しいだろう。なにせ、巨大な洗濯機のような様相だからな。バブルアーマーがあろうと、たとえセレンでもまともに泳ぐことはできないし、上下左右もわからない状態でシェイクされ、三半規管がグチャグチャになること間違いなしだ。
見た感じだと、あの滝には流木や岩なんかの余計なものは何一つとして混ざっていないが、それでもあの水量の爆撃だ。大瀑布に突撃してタダで済むとは思えない。直接行くのは絶対に避けるべきだろう。
「結局、ショウタ君に『海割り』してもらうしかないわけか」
「そうでもしないと出てこないモンスターとなれば、やっぱりここは安全な場所なんでしょうか?」
「あんなにはしゃいでも無視だもんねー」
「どうかな。こっちの人数が増えれば反応するとか、少人数なら反応するとか、条件が設定されてるだけかもしれないし、油断は出来ないよ」
「でしたら兄上、このダンジョンを攻略した暁に、『ダンジョンコア』に聞いてみるのは如何でしょう」
「お、それはアリだな。『ダンジョンコア』は自分のところのダンジョンなら、割と口が緩いみたいだし」
これはあとで聞いておくリストに入れておかなきゃな。
そう思っていると、イリーナが手を挙げた。
「お兄様、その『海割り』というのは、わたくし達ではお力になれませんか? 聞けばそれは、アヤネ様の武器で扱う武技スキルだとか。お兄様はモンスターと戦う一大戦力なのですから、手は空いている方が望ましいと愚行しますわ」
「あー、それなぁ。実はこのスキル、発動だけじゃなく維持にもとんでもない『魔力』を持ってくんだよ。俺は『魔力超回復Lv8』があるから1分間に384回復するんだけど、例のスタンピードが起きた外部ダンジョンではそれでも結構カツカツだったんだ。まあここは海に比べれば実行範囲が狭いけど、それでも1分置きに100くらい消費されるだろうからね。『魔力超回復Lv2』は最低でも欲しい所なんだ」
「そうでしたか……。申し訳ありませんわ、お力になれず」
「良いって。これに関しては直接的な強さよりもスキルの多さだからな。そのうち任せられるようになる」
「わたくし達も、全員『魔力超回復』はLv1ですの。だからイリーナが力になりたいと思う気持ちはよくわかりますわ。今はまだ無理でも、旦那様を支えられるよう頑張りましょう!」
「はい、アヤネ様!」
イリーナはいい子だな。
今の俺には、この先『魔力回復』持ちのモンスターと沢山出会えることを祈るしかできんな。
「それじゃ、そろそろ『海割り』を……あ、そうだ。これから強敵戦だし、エンキ達にも『金剛外装Ⅲ』渡しておくか」
『ゴゴー?』
『ポポ』
「ああ、悪いなこのタイミングで。よくよく考えれば、こんなとこに住むくらいだ。陸に打ち上げられても活動出来る可能性が大いに高いし、遠距離攻撃も持ってると想定すべきだろう。エンキには今回も真正面に立ってもらうし、念のためだ」
『ゴ!』
エンキとエンリルは『ウォークライⅡ』を、セレンには『破壊の叡智Ⅲ』を『金剛外装Ⅲ』と交換してもらう。
イリスにはスキル上限値はないのでそのまま取得だ。
エンキとエンリルが外した『ウォークライⅡ』は全くと言って使ってなかったが、セレンの場合どのスキルも余すことなく使えているから何を外させるか迷った。この前『ゴーレムコアⅤ』にしたばかりだけど、はやく上位のコアを手に入れて、グレードアップしてあげたいところだな。
「それじゃ、早速スキルを使ってみてくれ。どうなるか確認したい」
『ゴ!』
『ポポ!』
『~~♪』
『プル~ン』
彼ら全員の全身が、黄金の膜に覆われた。
以前に予想していたような、コアだけを包み込むような間抜けな形状ではなく、しっかりと形成された手足の先まで包み込んでくれているようだった。
「おお、成功だ。ちなみにセレンとイリス、その状態で身体を伸ばしたりしたら膜はどうなる?」
『~~♪』
『プルル』
セレンは四方に触手を伸ばし、イリスはまん丸ボディーからハリネズミのように形状を変化させた。それでも黄金の膜はしっかりと対応してきて、内部の形状変化でも壊れたりすることは無かった。また、イリスがいつものようにゴロゴロと転がっても効果が喪われるような事も無かった。
「思ってた以上にこのスキル、万能だったな」
「そうね、思えばショウタ君も戦いながら動き回ってても、『金剛外装』は攻撃以外で消費されることは無かったし、地面を移動したりする分には問題は起きないのかも」
「そうですね。躓いてこけたりしたら消費はされそうですが」
「……それはちょっと間抜けすぎるから、今後も足腰の修業は頑張るよ」
その場面は、想像するだけで情けなさすぎるな。
「よし、それじゃ改めて行こうか。カスミ達も『金剛外装』張っておけよ」
「うん!」
「それじゃ、『海割り』!!」
その瞬間、正面に広がる湖も、その先にあった滝も、滝の上流にあたる川も、なにもかもが俺を起点に2つに裂けた。そしてその赤丸の示す場所にいた何かは、煩わしそうに鎌首をもたげ、叫ぶ。
あの形状はやっぱり……。
『シャアアアアッ!!』
「また蛇かよ!」
この距離じゃ相手のステータスは見えないが、この距離でもその図体のデカさはよくわかる。あいつ、全長何メートルあるんだ!? 滅茶苦茶デカいぞ!
「アイラ、『邪眼』はあると思うか?」
「あれは……恐らくシーサーペント系ですね。あれらは『邪眼』を持つという話は聞いたことがありませんが、その牙には強力な毒があると聞きます。決して噛まれぬように」
「噛むっていうか、あのサイズじゃ人間なんて一飲みじゃないか? まあ気を付けるよ」
奴は一度叫んだあとは、ずるり、ずるりと巨体を這って接近してきた。
動きは緩慢でノロマだが、それは単に水中じゃないからだろう。巨体な分迫力はあるし、カスミ達も緊張は隠せない。
「あいつの強さ次第だが、まずは直接ぶつかる。準備はいいな?」
『はい!』
さて、隠れてたモンスターの強さはどんなものかな。
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