ガチャ392回目:第三層の洗礼
「活動報告/近況ノート」にて報告させて頂きましたが
『レベルガチャ』初速売り上げが好評の為3巻の発売が確定しました!
なので本日もまた2話投稿します!(2/2)
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デートの約束を取り付け、そのまま俺たちは水着から冒険者の装備へと着替える。そして第二層から第三層への階段を潜った。
「いつもは見てるだけだったが、実際に降りるのは初めてだな」
「コンセプトは山登りデートだったっけ。どんな階層なんだろうね」
「つまりこれも、実質お兄さんとのデート?」
「この人数でデートは流石にないでしょ☆」
「それ、いつもと変わらなくないかしら?」
「ふふ、そうですわね」
賑やかなカスミ達の後をゆっくりと追う。視界が開けると、そこには『初心者ダンジョン』第三層と似たような景色が広がっていた。
「原生林か?」
「亜熱帯地域みたいなジャングル感あるわね。でも、足場はしっかり踏み固められてるし、道もきちんと整備されてるわ」
「協会が道を整えたとしたら、ダンジョン側からすれば破壊の判定を受け修復されるはずです。それがない以上、この道もダンジョンが用意したものかと」
「本当にデートコースとして最初から用意されたかのようなダンジョンなんだな……」
入り口はいつものように広場のようになっていて、そこでは第二層の入り口のように小屋が設置されていた。恐らくこの階層を利用するお客さんのための休憩所も兼ねてるんだろうな。
「なんだか、時代劇で見るような山の茶屋みたい」
「お団子売ってたりするのかなー?」
「海の家でもそれっぽいの売ってたし、雰囲気作りのために売っててもおかしくないわね」
キョロキョロと周囲を見てみると、動線は右手へと続いていて、あれがデートコースなんだろうか。正面は少し先にダンジョン壁が広がっていて、マップを開けばこの場所は第三層の南西、それも南端に位置していた。そして左手には鬱蒼とした森が広がっていて、柵が設けられていた。この先にモンスターが出現するから……とか、そんな物々しい雰囲気ではないな。単に道が用意されていなくて、危ないからだろう。
となればと、降りてきた階段へと振り返れば、そこには標高の高そうな山が鎮座していた。
「デートに登るにしては、この山はちょっと険しすぎないか?」
『初心者ダンジョン』の第三層や第五層よりも斜面がキツそうに見えるぞ。
「道なき道を最短で行こうとすれば、ピッケルやブレードなどが必要になるのでしょうが、登山道に沿っていけば問題ないかと」
「そんなもんか」
「それで、どうするー?」
「とりあえず、今日は軽い下見でもあるからな。普通のデートコース通りに進もうか」
今の所、そこしか進められそうにないしな。
「それじゃレッツゴー!」
「ですわ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
時刻が昼過ぎということもあって、行きのカップルはおらず、帰りのカップルと何組かすれ違った頃。先行していたカスミ達が立ち止まり、困っている様子だった。
「ん、どうした? ……分かれ道か」
左右に分かれる分岐を見つけたようだ。
「お兄ちゃん、どうしよっか」
「お兄様に従うよ☆」
「んー、これは……」
雰囲気的にも気配的にも、デートコースは右に続いている感じがする。となればこの左のルートは……。
「この先に第四層に続く階段があるそうですね」
「へー。……いやしかし、ほんとにモンスターと出くわさないな。綿毛虫みたいな無害なのが出てくるのかと思ってたんだが」
「こちらの山道では一度も……。いえ、もうネタばらししても良いですよね。この階層ではモンスターを見かけたことがないそうなんです」
「マジで?」
「そ。こっちの左手ルートも別の山に続いてて、デートコースに使えなくもないそうだけど、道程が険しすぎて没になったんだって。ただ、こっちの道でも協会がモンスターを探し続けたみたいだけど、一度も見つからなかったそうなの」
「へー……」
モンスターのいない階層。そんなこと、ありえるのか?
でも、今までのことを思えば、何らかのギミックがあれど、最後にはモンスターが鍵を入手するためのトリガーになっている。だからきっと探せばいるはずだ。もしかすると、無害な上で擬態の上手い『アサシンカメレオン』みたいなやつがいるかもしれないし。まあ『アトラスの縮図』を使えばその辺り1発でわかるんだろうけど、それじゃ面白くないしな。
あと、エンリルでの航空偵察も今は封印だ。なんたって、せっかく皆で景色を見ようって話の時に、先に俺だけ答えを見るのはダメだと思うしな。
「とりあえず、ルートは右で」
「「「はーい」」」
「それから、この第三層のデートはここからが本番です。楽しみにしていてください」
「ん? わかった」
「せっかくですから、ご主人様には先頭を歩いてもらいましょう」
「ショウタ君の『運』ならどっちを引くかしら?」
「楽しみですわね!」
モンスターはいないのに、本番……?
この階層の事を知っている彼女達はワクワクを隠せない様子だし、驚かし系のギミックでも隠れてるんだろうか? でも、自然のデートコースに古典的な落とし穴があるとは思えないしな。
「俺が先頭を行くのは良いとして、左右が空いてると寂しいんだけど?」
そういうと、アキ、マキ、アヤネの3人が見つめ合い、頷き合うとじゃんけんを始めた。どうやらアイラは参加しないらしい。何度かのあいこの後にマキが勝利すると、残りの2人は距離を置いてついてくるようだった。
「えへへ」
嬉しそうに腕にしがみ付くマキを撫でる。まさかじゃんけんを始めるとは。
「今日は3人一緒じゃないんだな」
「両手がふさがると危ないですから」
「ふーん? まあ良いか。行こう、マキ」
「はいっ」
カスミ達も空気を読んだのか、俺達と距離を取ってくれたらしく、しばらく2人っきりで歩き続けたところ、不意に頭上から気配を感じた。
「ん?」
丸い何かが自然落下とは思えないほどの速度をつけて落ちてきたため、思わず片手でキャッチしてしまった。
『おおー』
背後から感嘆した声と共に拍手が送られた。なんだなんだ?
改めてキャッチした物を見てみると、巨大なヤシの実のような何かがそこにはあった。
「『真鑑定』」
名前:フォーリングフルーツ
品格:≪通常≫ノーマル
種別:食品
説明:ダンジョン植物フォーリングツリーに生る木の実。坂道を登る者に反応し、実を落として来る。果肉は美味であり、果汁は肌に良いとされる。
「『フォーリングフルーツ』って、まんまかよ」
てか、これがダンジョンの驚かし要素か。登る者に攻撃し、降りる者は無視すると。……普通に危なくない?
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