ガチャ390回目:アイラの思惑
洞窟から帰還した俺は、食事を摂ってすぐに爆睡した。狭い空間で『黄金香』を使われた事で相乗効果がとんでもない事になったのに加え、6人相手はやり過ぎた。
いくらスキルで欲を増幅されようとも、体力が無限に続くわけじゃないんだよな。次からは気を付けよう。
そして今更だけど、あんな空間でも一応ダンジョンなんだよな。本来あんな人数で長時間
多分あの小部屋は、ここの北側エリアと同じようにセーフエリアなのかもしれないな。
「ご主人様」
「ん、アイラか。どうした」
朝食後、俺は昨日の疲れを癒すために部屋でのんびりしているとアイラがやって来た。他の皆は外に出て何かしている気配はするから、今家の中にいるのは俺達だけのようだ。
久々の2人っきりということもあってか、アイラは甘えるようにくっついてくる。
「今日はどうされますか?」
「精力的に気怠さが尾を引いてるだけで、活動には影響ないかな。ただ、『黄金香』は欲望の前借りをしてる感じがするから、もう使わない方が良いかも」
「畏まりました。アレはご主人様を乗り気にさせる為のアイテムですし、普段は封印しましょう」
「……そう言うってことは、また使うかもしれないって事か?」
「どうでしょう? ご主人様次第かと思いますが」
「それはそうだが……」
俺が最初から乗り気ならそもそも必要ないって事だもんな。
でもそうは言ってもな……。
「……なあ、アイラは現状に満足してるか?」
「おや、まさかご主人様がそこに気を揉んでくださるとは」
「アイラ、茶化さないでくれ」
「……そうですね。満足はしていませんが、幸せですよ」
「……そっか」
ここ最近の『黄金香』でのはっちゃけ時には、アイラだけ交ざれていなかったからな。これがアイラの思惑であることに間違いは無いのだが、それでもアイラは大事な俺の婚約者であることに変わりはない。
メンバーの中で一番俺への好意の源泉が謎ではあるが、そこもまた魅力の一つだ。彼女もしっかり満足させなければ。
「近々、
「……え、教えてくれるの?」
カスミ達の事は直前まで内緒にされてたから、事前に知らせてくれるのは意外だった。
「カスミ様のチームは、私達の都合はあれどサプライズの要因も兼ねてましたから。ご主人様にはすぐにバレてしまったようですが」
「あんな思わせぶりな態度や行動をされたらな」
特にカスミはわかりやすかった。実妹ではあれど、あの制度は俺も耳にはしてたからな。その先の展開も予想が出来た。まあ、『黄金香』を持ち出して俺に使うのではなく、自分達に吹きかけるのは想定しなかったが。
「ご主人様はもう、誰かの下で使われるような存在ではありません。取り込むのではなく取り込まれることを前提に来る者は、私達が全力で見極めさせて頂きます。ですから、ご主人様はいつも通りお過ごしください」
「ああ、わかった。任せるよ」
「ではご主人様。話は戻りまして、次は第三層になるわけですが」
「ああ、そうだ。メンバーはどうするの?」
カスミ達の修業は始まったばかりだ。まあ、修行が一番必要なのは俺自身でもあるんだが、普段の修業に加えて『弱体化Ⅱ』のスキルがあるので、俺は日常生活に支障はそこまで出ていない。たまにスキルを使い忘れて食器を破壊するくらいだが、その食器も俺特製の魔鉄素材をふんだんに使った一品なので、修繕もお手の物。
ただ裏を返せば、スキルが無ければ魔鉄素材の品すら軽く破壊してしまうくらい、自分のステータスを御しきれていないということでもあるんだが。うちの婚約者達も、新しい妹達も、皆『頑丈』ステータスが高くて良かった。
「ご主人様。今回の攻略ですが、私も行った事はありませんがデートコースとして使える以上、ちゃんと第三層も安全圏扱いです」
「らしいな。山登りと景色がメインだっけ」
正直山に登って雄大な景色を楽しむというのが、いまいちデートコースとして使えるのかパッとイメージが浮かばない。そもそも今まで一度も、山に登って景色を楽しむなんて真似を、体験したことが無いからだろうけど。
けれど、俺個人としては景色を楽しむ事はあまりなくても、それを見て喜ぶ彼女達の顔が見たいという思惑はある。だから行きたいと言われれば、ダンジョンの外でも喜んでついて行くかもしれないな。まあ、オフの日の話だけど。
ああ、それを考えれば、ダンジョンの新しいところに行くのなら主要メンバーは外したくないな。
「……ご主人様の結論を待っていました。では全員で行きましょう」
「……アイラさあ、本当に読心スキルとか持ってないんだよな?」
「もちろんです。これはご主人様専用ですのでご安心ください」
「なにも安心できんのだが。……でも、全員か。ということは今日の修行はお休み?」
「はい。詰め込み過ぎもあまりよくありませんから」
それもそうか。リゾート地での俺の修業も、たまに遊んだりのんびり過ごしたりもあったもんな。
「まあその辺の調整はアイラに任せるよ。いつもご苦労様」
「では、ご褒美を頂けますか」
「……えーと、軽めの物でお願いします」
「ふふ、大丈夫ですよ。しばらくこのままでお願いします」
「そういうことなら」
アイラの肩を抱くと、彼女は頭を肩に乗せてくる。
今後また人が増えたとしても、たまにはこんな風にまったり過ごすのもアリだな。
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